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六十八回目
「なぁ、真面目な話をしていいか?」
「珍しいわね。真面目な話ならいいわよ」
「俺、手紙貰ったんだ」
「あら、何のお手紙かしら?」
「恋文だ。ラブレターだ。今朝、下駄箱に入っていた」
「何かの間違いじゃ?」
「良く見てくれ。このシール、ハートだろ? 鳩じゃない、ピンクのハートだ」
「ハートね。それで?」
「中を読んだんだ。見てもらってもいいか?」
「私が見てもいいの?」
「お前に一度見てほしい」
「あら、一言しかないわよ」
「あぁ、たった一言『好き』としか書かれていない」
「だから、それでなんで私に読ませたの?」
「この手紙、差出人の名前も連絡先も無いんだよ」
「残念な子ね」
「だから、俺はこの手紙の奴に返事ができない」
「返事するの?」
「俺には好きな人がいるから、付き合えないと」
「そう。きっとまた手紙来るわよ」
「そう思うか?」
「今度は名前くらい書いてもらえるといいわね」
「そうだな。でも、きっとまた名前も書かずに届く気がするんだよな」





