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六十六回目
「消しゴム貸してくれ」
「無くしたの?」
「いや、無くしてない」
「だったら何で?」
「いいから貸してくれよ」
「別にいいけど」
「さんきゅー」
「……。何してるの?」
「消しゴムに好きな人の名前を書くと両想いになるんだって」
「そんなの迷信に決まっているじゃない」
「やってみなければわからないだろ?」
「で、なんで私の消しゴム裸にしてるの?」
「中に俺の名前を……」
「今すぐ返して」
「なんだよ。少しくらい、いいじゃないか」
「そんな迷信を信じる位なら、お守りでも買ってきたら?」
「もう持っている。中にはお前の名前も入れてるぞ。ほら」
「それ、恋愛成就じゃなくて、無病息災のお守りよ」
「へ? そ、そうだよ。お前の健康を願っているんだ」
「そう、ありがとう。そのお守りに自分の名前も書いて入れておいたら?」
「そうします!」





