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五十九回目
「これやるよ」
「今度は何を持ってきたの?」
「ふふん。開けてみてくれ」
「……茶碗?」
「そ、可愛いだろ?」
「いらないわ」
「そんなこと言うなって。ほら、プレゼントだよ」
「どうしてこれを?」
「可愛いなって。お前に買ってやりたかったんだ」
「そう。まぁ、折角だからもらっておくわ」
「絶対に使ってくれよな」
「何か怪しいわね」
「そんな事無い!」
「ん? あなたのバッグに入っている紙包って何が入っているの?」
「な、何でもねーよ!」
「怪しいわね、見せなさい」
「あ、こら勝手に開けるな!」
「何この茶碗」
「えっと、夫婦茶碗かな?」
「私のとセットなの?」
「まー、そんな感じ?」
「はぁ……。呆れた。そんなことして楽しいの?」
「お前と夫婦茶碗使いたかったんだよ!」
「いいわ、貰ってあげる」
「いいのか!」
「一緒の食卓に並ぶことはないもの。夫婦にはならないわ」
「ないのか……」





