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猫みたいな少女、名探偵の僕  作者: 冬野 氷空
探偵と幽霊少女と夕焼けの記憶
29/62

エピローグ

 しかし僕には、それが一体どういうことなのか、理解するのに数秒の時間を要した。

 私、やっぱり文芸部に入部します!

 葉住姉妹を何とか退けたあの日から三日後のことである。部室を訪ねてきた渡嘉敷さんが、突然そんなことを言ったものだから、僕は思わず鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまった。


「楠木さんとアヤちゃんの過去を知りたいから決めたわけじゃありませんよ? もちろん、気になることは気になりますけど……それとは別に、単純に楠木さんの推理劇を、活躍を、リアルタイムで見ていきたいと思ったんです」

「はあ」


 推理だとか活躍だとか、そんなに大層なものでもないような気がするけれど。


「いいえ」


 首を振る。


「本当に素晴らしい才能だと思いますよ。少なくとも、大抵の人間にできることではありません」


 そして続ける。


「あと、私にも一つ夢ができました」

「夢?」

「楠木さんの活躍を本にするんです。そしてそれをアヤちゃんのお墓に持っていきます。彼女はこういった不思議な話が好きでしたし、それに楠木さんのことも……好きだったんでしょう?」

「それは……」


 そうかもしれないけれど。

 しかし、それは全くの無駄なことなのだ。

 なぜなら、猫屋敷綾は常に僕のすぐ傍にいて、僕の行動の一部始終を、事の顛末を、全て見ているのだから。聞いているのだから。

 だから、渡嘉敷さんのしようとしていることは、正直二度手間だと思う。

 が、僕はそれを彼女に説明する術を持たない。

 ――いや、僕はなぜ逃げているんだ?

 猫屋敷が幽霊になったことを渡嘉敷さんに説明するということから、僕は逃げている。

 別に面倒だというわけではない。

 僕は猫屋敷綾という女の子について語る時、決して面倒だと思ったことなどないのだから。

 問題は、その話を信じてもらえるかどうか、だ。

 クルミさんや野々宮さんは信じてくれたけれど、それは彼女たちがその当時の出来事を共有しているからだと思う。

 果たして、同じ時間を生きてこなかった渡嘉敷さんが、僕の言うことを信じてくれるかどうか。

 僕は考える。

 思考する。

 起こり得ることをシミュレートする。

 駄目だ。数カ月前ならいざ知らず、渡嘉敷さんが信じてくれる未来以外には見えない。

 ならば――

 話すしかないだろう。

 話さない理由がないのだから。

 僕は一度大きくため息をついた。

 携帯電話を取り出し、クルミさんと野々宮さんにメッセージを飛ばす。

 ――渡嘉敷さんに過去の出来事を話そうと思います。協力してください。

 そして僕は彼女に椅子を薦めた。

 呼び出した二人が到着する前に、前提条件というか、事の始まりくらいは説明できるだろう。

 僕は、昔話を始めた。

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