三日目。
洋介に会いたい。
無性に洋介に会いたい。
でもそばにいない。
会えない。
会いたい。
だから。
……だから私は。
まず走り出した。
宛も無く。
連絡を取ればいいのに。
それすらもどかしく。
何がしたいのか自分でもわかっていない。
だからこそ。
思いつくままに走った。
辿り着いた先は、洋介とよく来た公園だった。
待ち合わせたわけでもなく。
そこにいると確信していたわけでもなかった。
……そこに、洋介がいた。
ブランコに乗って呆けたように座っている洋介が。
諦めた様に、疲れのにじんだ顔の洋介。
「よぉ、めぐ。どした? こんなとこで」
普段通りを装う声が、いたい。
「どうしたも、こうしたもっ。特に理由なんかない、わよっ」
少し荒い呼吸で言う。
「ふぅん。なんで俺がここにいるってわかったんだ? 誰かに聞いたのか? 」
聞かれて、少し。
答えに、詰まる。
どう答えたらいいのだろう?
考えて、余程変な顔をして固まっていたのだろうか。
洋介が慌てだす。
「ちょ、おい? ほんとに何があったよ? 顔色が悪いぞ? 」
少し、深呼吸。
「べっつにぃ? 少し嫌な想像しただけなのよ? 」
と、おどけてみる。
「ほぉ? 今にも死にそうなくらいに見えたってのに、想像しただけ、だと」
「うん、まぁ……、そう」
口に出してみて、少しだけ、
少しだけ、照れる。
……けれど、洋介を目の前にして、
躊躇する。
……何も、言えなくなりそうで、
でも、言わないと消えてしまいそうで。
振り返りながら、
「うぅん、やっぱりなんでもない」
強がる。
そのまま、放っておいて欲しくて、
でも、放っておいて欲しくなくて、
歩き出す。
「何でも無いんなら、良いけどさ…」
洋介が、そういう。
「……なんて言う訳、無ぇだろうがよっ」
一転、洋介が駆け出し、私の手を取る。
…………なんて幻想、私にある訳もなくて。
「何でもないって顔でもないだろ、今まで経験した事もない感情に
戸惑ってるみたいな感じだぞ、お前」
……そうやって抱きしめられた。
一瞬の妄想を越えられて、パニックになりながら、
身じろぎもできずに、止まる。
「お前が何に戸惑ってんのかは知らない。
ただ、俺がこうしたいから、こうしてるだけ。
セクハラだっつーなら、突き飛ばしてもらって構わない。
何も言わなくていいから、しばらくこうさせてくれ」
「ぅ……うん」
しばらくしてから、洋介が
「よし、落ち着いたか? 今日は混乱してるだろうから、聞かない」
「え? 」
「ただ、もう一回言いたくなるまで、俺は待つから」
「ちょ、それって……もうわかってるってこと? 」
「さて……な? まぁ、こんなもんだろ、俺らなら。
今までもこれからも、『よろしくな』、ってことでいいじゃん」
……私は真っ赤になって、頷いた。
私にとっては重大で、
洋介にとっては当たり前な位の、
これからも続く、そんな『取り止めの無い日の事』だった。
ほぼ一年近く停滞してました。一応、完結、で。