死
想像もできなかった。ゴミで埋もれた軽自動車の窓を閉め切り、季節外れの七輪に煌々と炊かれた炭。その空間で、死の空間で感じれたのは怒りでも恨みでも悲しみでも喜びでも…どこにも入らない涙が声を上げて流れ落ちる。情けなく喉をならし、5才児のように母親を求めてあげる声。目の前に刻一刻と迫る臨んだ死に思い浮かべる両親の笑顔。
ごめんなさい、今まで1度も思ったことのないその感情が沸々と湧き上がり心からそう思えた。精一杯、育て指し示してくれた道を俺は何度も何度も裏切り自分を突っぱねて転がり落ちるところまで落ちた。もう二度と這い上がれないほどの谷底、ここには死しかない。
声をあげて泣いた。意識遠のくこれまでにない恐怖の前に感じることのできた最期の感謝。