まさかの話
「……はぁ」
俺は起きてすぐ大きなため息を付いてしまった。
昨日のこと……無論、佐田のことである。
アイツは俺に学校をサボれと言ってきた……そして、俺はそれに対して半ば強制的であるとはいえ……了承してしまった。
それにしても……アレはマジだったんだろうか。マジで俺に学校をサボらせようっていうのだろうか。
まぁ……佐田のことだ。適当なことを言う可能性だってあるし……あまり本気にしない方がいいだろう。
それにしても、昨日は宮野からは何の連絡もなかった……もしかして、飽きてしまったのだろうか。
飽きる……いやいや。あの狂気じみた雰囲気で、それはないような気がする。
むしろ、機会を窺っているような……それはそれで怖いのだが……
「あ」
俺はそんなことを考えていてようやく気付いた。
普通に……制服を着てしまっていた。これじゃあ、完全に学校に行く感じじゃないか。
「……まぁ、いいか」
俺はそんなことを考えながら、玄関の扉を開けた。
「あ」
そして……俺は玄関を開けた瞬間、後悔した。
「……ちょっと、サボるのに制服なわけ?」
不満そうな顔でそう言うのは……佐田だった。確かに佐田は黒い小奇麗なコートに、すらっとした足のラインがわかるようなジーンズを履いている。
前のようなジャージ姿ではなく、結構おしゃれな格好だった。
「え、あ……まさか……ほ、本当に来るとは……」
俺が思わずそう言うと佐田は更に鋭い瞳で俺を見る。
「なにそれ。私が来ないと思ったの?」
「そ……そういう意味じゃないんだけど……」
俺は思わず返答に困ってしまった。佐田は大きくため息をつく。それから、小さく笑った。
「……大体、今から学校行っても遅刻じゃん。アンタ」
「え……あ、ああ。そうだな」
すると、急に笑顔になって俺を見る。
「……それって、アンタも少なからず、私に付き合おうって、思ってくれていたわけだよね?」
そう言う佐田は……可愛らしかった。
正直、認めたくはなかったけど……可愛かった。
「……うるさいな」
「まぁまぁ。照れるなって。で、どうすんの? その格好のままでも私は構わないけど?」
佐田にそう言われ、俺は少し迷ったが……着替えないことにした。
どうせ、悪いことをしようとしているんだ。今更制服から普段着に着替える必要もあるまい。
「……いいよ。このままで」
「そっか。じゃあ、行こう」
佐田にそう言って、歩き出した。
しかし、俺には一つ大きな疑問があった。
「行くって……どこへ?」




