提案の話
結局、佐田は俺の家まで付いてきた。
何処かに行ってしまえ、とも言うことも出来ず、結局、俺と佐田は家の前まで来てしまったのである。
「ねぇ」
俺の家の前まで来ると、佐田はまた俺に話しかけてきた。
「……なんだ?」
「今日昼休みに言ったこと、覚えてる?」
「え……何?」
俺がそう言うと、佐田は少し不機嫌そうな表情で俺のことを見る。
「言ったじゃん。授業、サボんないのか、って」
そう言われて俺は思い出したが……あまりにも馬鹿げた話で俺は呆れてしまった。
「サボらねぇよ……そんなことしたら困る……」
俺はそこまで言ってからしまった、と思った。しかし、既に佐田は嬉しそうに微笑んでいた。
「フフッ……そっか。困るんだぁ」
蠱惑的な表情をして佐田はそう言う。俺は既に言ってしまったことだったので、観念することにした。
いや……言われてみればまぁ……一日くらい授業をサボったところで問題はないのだろうが……
「……お前はそれでどうしたいんだよ?」
俺がそう言うと佐田はキョトンとした顔で俺を見る。
「どう、って……アンタを困らせたいだけだけど?」
得意げな顔でそう言う佐田。俺は大きくため息をつくことしかできなかった。
「……まぁ、なんでもいいけどさぁ。お前がそれでいいなら」
俺がそう言うと佐田は少し恥ずかしそうな顔で俺を見る。
「私は……むしろ、それがいい、っていうか……」
なんだか小さな声でそう言ったような気がするが……俺は放っておいた。
「……じゃあ、明日は俺が学校をサボればいいんだな」
俺がそう言うと、佐田は顔をぱぁっと輝かせて俺のことを見る。あまりにも嬉しそうなので俺は逆にちょっと困惑してしまった。
「じゃあ……OKってことだよね?」
俺は何も言わずに佐田に背を向けて玄関の方に向かう。
「明日! 9時にはここにいるから!」
嬉しそうな声でそう言う佐田の声を聞きながら、俺は家の中に入ったのだった。




