私がいる話
その後我ながら……本当の意味で罪悪感を感じることになってしまった。
別に瀬名は変な事は言っていない……それなのに、俺は怒ってしまった。
実際瀬名には関係無いことだと思うが、だからといってあんな言い方をしなくても良かったと思う。
放課後になって、俺は瀬名に謝ろうと思った。
しかし、瀬名は……以前のように、チャラい感じのグループと話していた。
俺は少し悲しい気持ちになった。いや、随分と勝手な話ではあるのだけれど。
そういえば、別に瀬名は俺に話しかけてくる時以外は、前と同じようにチャラい感じのグループにも話していたよな……
勝手に俺は瀬名が俺にだけ構ってくれる……そんな風に考えていたのかもしれない。
なんとも自分勝手な話だ。自分勝手すぎて笑えてきてしまうくらいに。
俺は早々に教室を出ることにした。瀬名が一瞬だけ俺の方を見たような気がしたが……たぶん気のせいだろう。
そして、昇降口に出て、校門の方へ……そこには、俺が予想していたとおりの人物が待っていた。
そいつは、俺の姿を認めると、嬉しそうに手を振る。
「よっ。何? 元気ないけど」
佐田は元気そうだった。昼休みから今までどこで何をしていたのか知らないが……制服姿のままだった。
「……別に」
「へぇ。あれ? そういえば、今日は一人で学校出てきたね。いつものヤツは?」
そう言われて俺は言葉に詰まる。佐田はその様子を見てすぐさま俺の状況を理解したようだった。
「へぇ……喧嘩しちゃったんだ?」
なぜか嬉しそうにそう言う佐田。俺は無言で肯定する。
それにしても、佐田はこの上なく嬉しそうに話を続ける。
「そっかぁ……まぁ、仕方ないよ。知り合ってからまだ数ヶ月でしょ? 喧嘩することもあるって」
「お前……なんだそりゃ」
俺がそう言うと佐田は元気そうにポンポンと肩を叩く。
「大丈夫だって。アンタには私がいるじゃない。ね?」
「は? お前……それ、本気で言っているわけ?」
信じられない気持ちでそう言うが……佐田は真面目な顔で俺のことを見ていた。
「うん。なんで? 言ったでしょ? アンタが困るようにずっと付きまとう、って」
「……お前とだって、喧嘩することはあるかもしれないじゃないか」
「う~ん……まぁ、そうかもしれないけど。私はアンタだけが困っているのを見たいだけだし…アンタと喧嘩しちゃったら私も嫌な気分になるから、アンタとは喧嘩したくないなかなぁ」
滅茶苦茶な理論だったが……要は佐田は「自分はお前とは喧嘩しない」と言いたいらしい。
「……勝手に言ってろよ」
俺がそう言っても佐田は怒る素振りも見せない。そして、俺が歩きだすと同時に佐田も有るき出したのだった。




