罪悪感の話
結局、俺は佐田と別れ、自分の家へ戻っていった。
……なんだか未だに話が理解できていない感じだ。佐田は……一体何をしたいのだろう。
一つわかったのは、アイツの俺に対する感情が、とても歪んでいるということだ。
まぁ……アイツ自身の性格も、相当歪んでいるんだろうけど。
それにしても問題は、宮野のことだ。
宮野は……きっと俺のことを恨んでいる。またしても佐田は宮野にメールを送ったはずだ。
そうなればまた、宮野から連絡があるはずである……その時、俺はどうすればいいのだろうか。
そんなことを考えながら、俺は家の近くまでやってきた。
「……ん?」
見ると、家の前の電灯に照らされて……誰かが立っているのがわかる。
既に冬の足音が近づいてきているこの時期、あんなふうに突っ立っているのはかなり危ない人間に思えるが……俺はその人物の容姿に見覚えがあった。
「……宮野」
俺はそう呟いて宮野の方に近づいていく。宮野も俺のことを見ていることがわかった。
宮野の表情は笑顔なのだが……まるで俺を責めるかのようなそんな恐ろしい目つきだった。
「雅哉くん。お帰り」
ニコニコしたままで、宮野は俺にそう言った。
「……お前、知ってたんだな」
俺がそう言うと宮野は目を丸くして俺を見る。
「知っていた……ああ! 汐美ちゃんからのメールのこと?」
俺は何も言わずに小さく頷く。宮野はニコニコしたままで俺のことを見ている。
「うん。知ってたよ。それに……汐美ちゃんがどうして私にメールを送ってくるのかも」
「え……じゃあ、お前……」
宮野の笑顔が……変わった。ニコニコしているというよりも、どこか不気味な……恐ろしいものに。
「だって、あの子のことを一番よく知っているのは私だもの。あの子がどういう心境で私にメールを送ってくるのかも、理解できるよ」
「お、お前……わかっていて、なんで……」
「私もね、同じなの」
まるで告白するかのような調子で宮野は俺にそう言った。
「……同じ?」
「うん……汐美ちゃん、言ってたでしょ? 雅哉君の困った顔を見るのが好きだって」
俺は何も言わず小さく頷く。宮野は嬉しそうな顔でその先を話す。
「私も同じなんだけど……私はもっと幅広いかな? 私はね……人を困らせるのが好きなんだ……ううん。そうじゃないな。正確には……人に迷惑をかけて、罪悪感を感じることが好きなんだよね」
嬉しそうに……とても最低な事を言う宮野。おおよそ、俺が今まで知っていた宮野知弦からは出てこなさそうなセリフだった。
「お前……何言っているかわかってんのか?」
「わかっているよ。実際、今雅哉君、困っているでしょ? こんな話をされて」
……当たり前だった。その話に俺はなんて答えればいいのか……
「……つまり、お前は……」
俺がその先を言う前に宮野は話を再開する。
「そう。だから、今私はとてもうれしいの。雅哉くんに悪い子としているなぁ、ってね」
無邪気な子どものような笑顔で、宮野は俺にそう言ったのだった。




