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不安な話

 夜。


 俺は暗いリビングでずっと考えていた。


 宮野の声は……どう考えても異常だった。そして、明らかにあれは怒りとも悲しみとも取れる……そんな声だった。


 俺は確かに宮野に嘘をついた……そして、アイツが言うとおり、二回も。


 そして、宮野はその2回の嘘を、嘘だと認識していた。しかも、宮野が知り得ないはずの事実まで知っていた上で。


 宮野は……見ていたのか? 佐田が橋の欄干から飛び降りようとしていたこと、そして、その後の俺との一連の出来事……全く俺は気付いていなかったし、周囲に宮野がいるということ自体認識できていなかった。


 しかし……あの事実を知っているということは、確実にいたということになる。まぁ、もう一つ可能性はあるが……


「……佐田が、宮野に言うだろうか」


 ……それもおかしな話である。


 まず、佐田の性格からして絶対にそれはあり得ない。自分が自殺しようとしていることを宮野に言うはずがない。


 だとすると、佐田は言っていないことになり……あの場に宮野がいたことになる。


 だとすればどこから俺と佐田を見ていたのだ? まったく想像もつかない。


 俺は……いても立ってもいられなくなった。もし、宮野が俺の知らない場所から俺のことを観察しているとするならば……確かめてみる必要がある。


 俺は立ち上がり、今一度電話の方に向かった。そして、ダイヤルを押し、電話をかける。


「はいはーい? 佐田ですけど?」


「ああ、佐田か。俺だ」


「え……あ、ああ! 岸谷か!」


 佐田はどこか嬉しそうだった。俺も先程の少し怖い調子の宮野の声を聞いた後だと、少し安心する。


「なになに~? どうしたの~? 汐美ちゃんの声が聞きたくなっちゃったわけ~?」


 そういって茶化す佐田に、俺は少し辟易しながらもとりあえず用意していた答えを返す。


「……ああ。そうだ」


「え……ちょ……な、なにそれ……キモいんですけど……」


 佐田は少し困っているようだった。俺も……少し恥ずかしかった。


「えっと……いつものファミレスに来てくれるか?」


「え……う、うん! すぐ行くから!」


 そういって、佐田はすぐに電話を切ってしまった。なんだかやっぱり、恥ずかしかった。


 俺は受話器を置いてから、大きくため息をつく。


「……これで確認はできるな」


 佐田には悪かったが……正直、俺は相当ビビっていた。しかも、その相手が……俺の初恋の相手なのである。


 無論、宮野が俺に対してストーカーまがいのことをしていると決まったわけじゃないが……それでもやっぱり不安だった。


 俺はそんな不安を抱きながら……佐田と待ち合わせたファミレスへと向かったのだった。

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