ふざけた話
その時……俺は宮野が何を言ったのか理解できなかった。
……いや、理解は出来た。
正確には、なんでそんなことを言ったのかが理解できなかったのだ。
「……え?」
俺の心の中の疑問は、そのまま声になって出てきてしまった。
宮野はキョトンとした顔で俺のことを見る。
「えっと……ごめん……なさい」
今度は消え入りそうな小さな声で宮野は俺にそう言った。
……やはり、謝っているのだ。宮野は俺に謝っている。
正直、何を謝っているのか……想像はつくが、意味がわからない。
そして、その行為にそもそも意味があるのかもわからない。
「……なんで、謝ってんの?」
俺がそう言うと宮野は驚いた顔で俺のことを見る。
「え……だって、私……雅哉君のこと……守れなかったから……」
……守る? なんだそりゃ。
意味がわからない言葉がさらに出てきた。俺は思わず混乱してしまう。
「守るって……何から?」
「その……雅哉君、ずっと辛い目に合ってて……それなのに、私、何も出来なくて……」
と、宮野はいきなり泣き出してしまった。益々俺は完全に混乱する。
「だから……謝っているわけ?」
「……ひっぐ……うん……ぐすっ……私……自分が情けなくて……」
宮野は目からポロポロ涙を流しながらそう言う。
俺はあまりのことに呆然としてしまった。そして、目の前で宮野をただ見ている。
「ふざけんなよ」
と、自然とその言葉は口から出てしまった。
その瞬間、宮野は目を丸くして俺のことを見る。
「……え? 雅哉君……今、なんて――」
「ふざけんな、って言ったんだ」
俺はそう言って、ベンチから立ち上がった。そして、呆然とする宮野を見る。
「俺が言いたいのはそれだけ。だから……帰るわ」
そういって、俺はそのまま宮野に背を向けた。
宮野はあまりのことに対応できなかったんか声もかけてこなかった。
俺はただ、何も考えずに早足でその場を離れたのだった。