最悪な話
俺は先を行く宮野の後をただ付いて行った。
宮野は……一体どういうつもりなのか。
俺に対して一体何を話そうというのか。そもそも、俺に今更何か用事なんてあるのだろうか。
俺は……未だに宮野のことを憎んでいる。
俺を裏切った張本人……そんなやつが今更俺に一体何を話そうというのか。
ただ……一つ思い当たることはあった。
しかし、そんなことを今更宮野には言ってほしくなかった。
そんなくだらないこと……今の俺に言ってくれたところで、俺はどうしようもないからである。
「えっと……学校はどう?」
宮野はいきなり立ち止まって俺の方に振り返る。
「え……どう、って?」
「その……楽しい?」
楽しい……何だその質問は。
俺は……小学校四年から今の今まで楽しいという感情をまともに感じたことがなかったのだ。
そんな俺に、俺を裏切った張本人が今の状態が楽しいかどうか訊ねるっていうのか?
……いくらなんでも馬鹿げている。俺はほとほと呆れてしまった。
「……別に。普通だよ」
「あ……そ、そうなんだ」
宮野は安心したように微笑む。まるで「普通」という言葉を宮野は俺が楽しいという意味で使ったとでも思っているようだ。
……正直、あまりに宮野とは長く話していたくなかった。こいつは俺のことを裏切った……これ以上話したくもないのである。
「えっと……ベンチに座って話すのでいいかな?」
気づくと既に公園まで来ていた。宮野の提案に、俺は小さく頷く。
そうして、俺と宮野はベンチに腰掛けた。
隣を見ると、やさそうな表情の女の子が座っている。それが、宮野知弦だ。
だが、俺はコイツのことが嫌いだ。
コイツは……見た目ほどキレイな心の人間じゃない。
なにせ、俺のことを裏切ったのだから。
「えっと……単刀直入に、言っていいかな?」
「え?」
すると、宮野は思い詰めたような表情を俺に向け、そのまま一気に頭を下げた。
「……ごめんなさい!」
……そして、宮野は俺に、俺が宮野に最も言ってほしくなかった言葉を言ってきたのだった。