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期待はずれの話

「……じゃあ、ありがとうね」


 宮野は家の玄関までやってくると俺にそう言った。


「ああ。まぁ……とりあえず、外には出ろよ」


「……うん。そうするよ」


 ニッコリと笑顔を浮かべる宮野。俺はなんとなく安心する。


 一番嫌っていたはずの宮野の笑顔……それを見て、安心するなんて、想像もしなかった。


 でも、事実俺は安心している。宮野の笑顔を見て。


「じゃあ……またな」


「あ……雅哉君」


「ん? なんだ?」


「その……もしよかったら……また、家に来てくれないかな?」


 少し不安げな顔でそう言う。俺は予想外の言葉に思わず戸惑ってしまう。


 しかし、少し間を置いてから、宮野のことを見る。


「あー……ああ、うん。まぁ、佐田にもそう言われているし……来るよ」


「本当に? そっか……よかったぁ」


 安心しきった顔でそう言う宮野。


 なんだかこれ以上ここにいると調子が狂ってしまいそうだったので、俺は帰ることにした。


「じゃあな、宮野」


「うん。バイバイ、雅哉君」


 俺はそう言って、今度こそ宮野と別れることにした。


 暫く歩いていてから、俺は思い返す。


 ……何となく宮野のことを許した感じになってしまった。いや、まぁ、あれは……許してしまったのだろう。


 でも、俺にはそれ以外に選択肢はなかったし……そこまで非道にはなれなかった。


 人間の感情というのは不思議なものだ。宮野が自殺するシーンに直面しても、非道だったというのに……憔悴しきった宮野を見ると、自然とあんな言葉が出てきてしまったのだ。


「……ハハッ。思ったよりも酷い人間じゃないのかな、俺は」


「そうね。ホント、期待はずれだわ」


 俺は思わずビクッと小さく飛び上がってしまった。


 そして、声の聞こえてきた方向に恐る恐る顔を向ける。


「え……お、お前……なんで……」


 俺が顔を向けた先には……酷く不機嫌そうな顔で俺のことを睨む、佐田の姿があったのだった。

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