自分勝手な話
そして、実際にファミレスでまたしても佐田はパフェを味わっていた。
昨日食ったのに飽きないものだな、と俺は適当に頼んだコーヒーを啜りながら思った。
ひとしきりファミレスでは佐田のとりとめのない話があった。学校の話とか、昔の話とか……なんでコイツは俺にこんな話をしてくるんだ、って思っていたが聞いておいた。
佐田は気が済んだのか、一通り話し終わるともう帰ろうと言い出し、俺もそれに従った。
帰り道は既にオレンジ色の夕焼けに染まっている。俺と佐田は来た時と同じように並んで歩く。
「……ねぇ、岸谷」
と、ふと佐田が話しかけてくる。
「ああ、なんだ」
「アンタさぁ、私と一緒にいて……楽しい?」
佐田はいきなりそんなことを聞いていたので、俺も思わず佐田の方を見てしまう。
相変わらずのニヤニヤ顔ではなく……割りと真面目な顔で俺のことを見ていた。
「……え? 楽しい……?」
「そう。楽しくないでしょ?」
佐田はわかっているんだと言わんばかりの顔でそう言う。
実際……居心地は良くない。実際、佐田は俺にとって恨みの対象だし、そもそも、幼馴染であっても、コイツとの間には楽しい思い出とかそういうのないし……
「まぁ……楽しいかと聞かれると……難しいかな」
俺がそう言うと佐田はむしろ安心したように俺のことを見る。それこそ、楽しくないとはっきり言ってほしかったような表情だった。
「だよね。私も、アンタといてもそんなに楽しくないから」
「……悪かったな。つまらない男で」
「あはは。アンタ、ホントからかい甲斐があるね……まぁ、いいや。次は一週間後ね」
「は? え……宮野はいいのかよ?」
俺がそう訊ねると、佐田は少し考え込んでから先を続ける。
「いや、アンタは毎日行きなさいよ。一人で。知弦もアンタが一人で来ても迷惑とは思わないだろうし」
「はぁ? なんだそりゃ……お前は来ないのかよ」
「あのね。私だって忙しいわけ。アンタは毎日行くって約束したでしょ? 一週間後は行くから。知弦にもアンタが毎日来ているか確認するから」
それだけ言うと佐田は俺に背中を向ける。
「じゃあ、一週間後に」
そう勝手なことだけ言って、本当に佐田は行ってしまった。
正直、俺自身も面倒だと思ったが……宮野のことは気にかかった。
「……とりあえず、明日だけでも行ってみるか」
そう思って俺も家に帰ることにしたのだった。




