連れ立って行く話
そして、放課後。
「よし! さっそく宮野さんの家に行こう!」
何故か俺よりも乗り気な瀬名……逆に俺はあまり乗り気になれなかった。
そもそも、宮野は昨日カッターで自殺まで図ったわけだし……人に会えるような精神状態なんだろうか。
……まぁ、俺には関係ない。行ってから確認すればいいことなのだ。
俺と瀬名はそのまま教室を出て、校門まで向かう。
「……あ」
と、瀬名が前方の何かに気付いたようだった。
「なんだ。何かあったのか?」
「いや……あれ」
そういって瀬名が指差す先……そちらは校門の方向だった。
そして、校門の近くに誰かがいる……それは女子生徒のようである。
「あれって……佐田か?」
制服がそもそも俺たちの学校のものではない。そして、遠くからでも目立つ茶髪……佐田らしかった。
「みたいだけど……約束とかしてたの?」
「いや。してない」
「ふぅん……あ! ごめん、岸谷。僕、用事を思い出した!」
と、いきなり瀬名がそんなことを言い出した。
「は? なんだよ。宮野の家、行かなくて良いのか?」
「いや、行きたいけどさ……ごめん! また今度!」
そういって瀬名はあっという間に俺の前から姿を消してしまった。
先程まであんなにも行きたがっていたと言うのに……不思議なヤツである。
俺は仕方なく校門の方に向かっていく。やはり、校門で待っているのは佐田で、ニヤニヤしながら俺のことを見ていた。
「どーも。昨日ぶり」
「……何しにきたんだよ」
「何って、アンタが知弦の家に行くか確認しに来たの」
「はぁ? お前なぁ……俺が行かないと思ってたのか?」
「うん。だって、私がいなかったら、行ったかどうかなんてわからないじゃん」
確かにそうだが……昨日のことを考えると、俺は多少、宮野の様子を見に行こうとは思っていた。
それは佐田が学校に来ようが来なかろうが関係なく。
「……お前も付いてくるわけ?」
「まぁね。迷惑?」
はっきりそうだと言いたかったが……どうせそう言っても関係なくついてくるのだろうと思った。
「……好きにしろよ」
「うん。好きにする」
結局、俺と佐田は二人で宮野の家に行くことになったのだった。




