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元通りの話

 俺は暫く黙っていた。


 なぜなら、佐田が何を言っているのか、俺には理解できなかったからである。


 しばらく黙った後で俺は歩きだす。


「ちょっと。無視?」


 佐田の不満そうな声が聞こえる。俺は振り返って佐田を見る。


「……まだ、犯罪者になる気はないんでね」


「……あはは。何? マジで殺すって思ったの? 私が知弦のことをナイフで刺すとか? そういうことじゃないって」


「……じゃあ、どういうことだよ」


 すると、佐田は嬉しそうな顔で俺の事を見る。


「だから、精神的に殺すってこと。まぁ、結果としてそれで自殺しちゃったら、間接的には、殺人かもだけど」


 佐田は冗談でそう言っているようには……やはり見えない。


「……悪いが、俺にはそういう趣味はない。お前のお遊びには付き合えない」


「ふぅん。これ見ても?」


 そういって、佐田は俺に携帯を見せてくる。


 それは……俺だった。しかも、中学生時代の。


 哀れにも俺は教室の中で水泳用の水着で授業を受けている。その写真がなぜか佐田の携帯の画面に映されているのである。


「……なんだこれ」


「写真。アンタの中学のときの。覚えてないの? 面白かったよねー。アンタ、水泳の時、着替え隠されちゃってさー。そのまま授業受けてんの! あはは! 思い出しただけでも笑いが……あ。これ、思いついたの私だから」


 まるで自分の手柄を自慢するかのように佐田はそう言う。俺はなんとなく佐田が言いたいことが理解できた。


「……まさか、この写真をばら撒く、なんて言い出すんじゃないだろうな?」


「え~? 私、そんなに性格悪くないよ~。ただ、私がこういう写真、たくさん持っているって言いたいだけなんですけど」


 佐田はニヤニヤシながらそう言う。


 無論、ばら撒かれたくないなら……そう言いたいのだろう。


 俺には失うものは今は何もない。しかし、過去の古傷に塩を塗られた上に、ナイフで抉られるような真似は……俺としても相当キツイ。


 事実、この写真を見るだけでも相当キツいのだ。


 俺はなんとか怒りを押し殺しながら、佐田を見る。


「……わかった。これで俺はお前に逆らえなくなった。俺とお前の関係は中学時代に戻ったわけだ。」


「へ~。なんだ。昔より物分り良くなったじゃん。じゃ、アンタには、これから私の言うとおりに動いてもらうから。そうだな~。とりあえず、私、お腹減ったから……ファミレスで奢ってくれない?」


 こうして、俺はまたしてもサタンに取り憑かれることになってしまったのだった。

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