明かされる話
「え……そ……それは……」
宮野は戸惑ったように視線を泳がせる。
佐田も困り顔で宮野を見ていた。
「なぁ、答えろよ」
俺は語気を強めてそう言う。宮野はビクッとして俺を見る。
「あ……え、えっと……そ……そう……です……」
まるで叱られている子供のように、宮野は情けなくそう答えた。俺は何も言わずに宮野を見ていた。
此の瞬間、俺は理解した。
宮野がなぜ俺のもとに表れたのか、なぜ、俺に付きまとっていたのか。
「つまり、お前は何? 今、自分がイジメられていたから、昔イジメられていた情けない男を見て、自分を慰めようって思ってたわけか」
「そ……そんなこと……」
「ちょ、ちょっと岸谷。そんなこと――」
「お前は黙ってろ!」
俺は佐田に向かって本気で怒鳴った。いつもは俺のことをバカにした目で見ていた佐田が怯えた様子で俺を見る。
俺は今一度宮野の方に向き直る。
「……なぁ。そうなんだろ? はっきり言えよ」
俺が今一度そう言うと、宮野は申し訳なさそうに俺のことを見て、それから、小さく頷いた。
俺は思わず大きくため息をついてしまった。
「そうか。分かった」
俺はそれを聞いてから、宮野に背を向ける。
「え……ちょ、ちょっと。岸谷、アンタ……」
呼び止める佐田に向かって俺は背中越しに応える。
「俺、帰るから」
「そ……そんな……知弦は……」
「……死にたいなら勝手に死ねよ」
自分でもとんでもなく残酷だと思ったが、俺はそう言った。佐田も宮野も、何も答えなかった。
「ま……雅哉君……」
宮野の消え入りそうな声が聞こえる。
「……何度もあったんだぞ」
「え……」
そう言ってから、俺は振り返る。
「……俺はお前たちのせいで……何度も……死のうとしたんだって話だよ」