表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/116

明かされる話

「え……そ……それは……」


 宮野は戸惑ったように視線を泳がせる。


 佐田も困り顔で宮野を見ていた。


「なぁ、答えろよ」


 俺は語気を強めてそう言う。宮野はビクッとして俺を見る。


「あ……え、えっと……そ……そう……です……」


 まるで叱られている子供のように、宮野は情けなくそう答えた。俺は何も言わずに宮野を見ていた。


 此の瞬間、俺は理解した。


 宮野がなぜ俺のもとに表れたのか、なぜ、俺に付きまとっていたのか。


「つまり、お前は何? 今、自分がイジメられていたから、昔イジメられていた情けない男を見て、自分を慰めようって思ってたわけか」


「そ……そんなこと……」


「ちょ、ちょっと岸谷。そんなこと――」


「お前は黙ってろ!」


 俺は佐田に向かって本気で怒鳴った。いつもは俺のことをバカにした目で見ていた佐田が怯えた様子で俺を見る。


 俺は今一度宮野の方に向き直る。


「……なぁ。そうなんだろ? はっきり言えよ」


 俺が今一度そう言うと、宮野は申し訳なさそうに俺のことを見て、それから、小さく頷いた。


 俺は思わず大きくため息をついてしまった。


「そうか。分かった」


 俺はそれを聞いてから、宮野に背を向ける。


「え……ちょ、ちょっと。岸谷、アンタ……」


 呼び止める佐田に向かって俺は背中越しに応える。


「俺、帰るから」


「そ……そんな……知弦は……」


「……死にたいなら勝手に死ねよ」


 自分でもとんでもなく残酷だと思ったが、俺はそう言った。佐田も宮野も、何も答えなかった。


「ま……雅哉君……」


 宮野の消え入りそうな声が聞こえる。


「……何度もあったんだぞ」


「え……」


 そう言ってから、俺は振り返る。


「……俺はお前たちのせいで……何度も……死のうとしたんだって話だよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ