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今更な話

「あ! おーい!」


 いつもの交差点につくと、佐田が手を振っている。この前と同じ、ヤンキーっぽいジャージ姿だった。


「お、おお……悪いな」


 俺は思わずそう言ってしまった。佐田も目を丸くして俺を見る。


「……別にアンタの為にここに来たわけじゃないから」


「あ……ああ、そうだな」


「とにかく、さっさと行きましょう。早足で」


 そういって、さっそく佐田は歩き出した。俺も慌ててそれに続く。


「おい、佐田、お前……」


「……私のせいだ」


 すぐに佐田はそう言った。俺は何も言わず佐田の背中を見る。


「え……どういうことだ?」


「知弦……悩んでた……というより、苦しんでた」


「苦しむ……俺のせいか?」


「違う。アンタのこともあるけど……はっきり言うけど……あの子、あんまり学校で上手くいってないんだと思う」


「上手くいってないって……それって……」


「単純に考えてみなさいよ。放課後、どうして知弦は一人でアンタの所に来るわけ? しかも……どう考えても学校に行ってたら、たどり着けないはずの時間に」


 そこまで言われて俺はようやく理解した。佐田が何を言いたいのか……宮野が一体何をしていたのかを。


「アイツ……学校行ってないのか?」


 俺がそう言うと佐田は一瞬だけ俺の方を見た。そして、何も言わずに再び歩き出す。


「……確かな事は言えないけど……そうかもしれない」


「で、でも! だったら、なんで……」


 すると、佐田は立ち止まって俺の方をしっかりと見る。


「……私が学校は楽しいか、って聞いたら、知弦、首を横に振ってこう言ったわ。私は、楽しい思いなんて二度としちゃいけないんだ、って」


「なっ……なんだよそれ……アイツ……そこまでして俺へのあてつけをしたいってのかよ……」


「……違う!」


 すると、佐田は大きな声でいきなり叫んだ。


 車道には車が行き交っていたが、佐田の声は間違いなく俺の耳にも聞こえてきた。


「え……何?」


「……私のせい、って言ったでしょ」


「は……な、何が?」


 すると、佐田はつらそうな表情で俺のことを見る。


「……知弦は……アンタに対するイジメをやめようって言ってた。小学校の頃からずっと……その意思を面倒くさいからって押しつぶしてきたのは……私だから……」


 佐田の表情は真剣だった。いつもニヤニヤしている佐田からは想像できない……本当の言葉を言っている表情だった。


「な……なんだそれ……今更そんな……そんなこと言って、俺が許すとでも……」


 俺がそう言うと佐田もわかっていたと言わんばかりに小さく頷いた。


「わかっている。前に言ったように、私はアンタに許しもらおうなんて思っていない。でも知弦は……とにかく、知弦の家、行くわよ」


 そういって、佐田は歩きだす。


 俺はただただ、頭の中にモヤモヤとしたものを抱えながら佐田の後をついていくのだった。

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