急展開の話
結局……よくわからないままに佐田は去っていってしまった。
俺は瀬名と別れ、家への道を戻る。
というか、今日は……宮野がいなかった。
アイツ……なんでいなかったんだろうか。佐田と一緒にいるのが道理ではないのか。
そもそも、アイツが何をしたいのか、未だによくわからない状態であって……
「まったく……何がしたいんだか……」
そして、程なくして俺は家に戻ってきた。
……なんだか無駄に疲れている。最近こんな状態ばかりである。
元の何の変化も、退屈な日常が羨ましい……俺の生活にとっては宮野も佐田も、瀬名だって必要のない存在なのだ。
「……そう。必要ない」
それでも、やはり宮野のことが気になる気持ちはここ最近大きくなっていた。
佐田の言ったあの言葉……「いい加減、めんどくさい」……
そして、何より、今日、宮野はいなかった……なぜ、宮野はいなかったんだろうか。
「……いや、俺には関係ない。どうでもいいことだ」
そう思って、俺はそのまま宮野のことは考えないようにしようとした。
その矢先だった。
プルルル、とけたたましく電話の音が響く。
「え……電話……」
脳裏には、嫌な予感が過る。佐田……の可能性はある。かといって、そうでない可能性だって十分にある。
俺は待った。用事があるなら、留守電にメッセージを残すはずである。だから、俺は電話に出ることをしなかったのである。
と、程なくして呼び出し音が切れ、留守番電話に切り替わった。
「……ぐすっ……あ、え、えっと……雅哉君ですか?」
声は……宮野だった。
俺はすかさず電話を取る。
「……なんだ?」
「え……あ、ああ……ひっぐ……い、いたんだ……」
宮野の声は……どことなく涙声である。なぜかは知らないが、とにかく涙声だった。
「なんだ。何か用か?」
「え……あ、う、ううん。なんでもない……その……ごめんね」
「……は? なんだそれ……用があるから電話してきたんだろ?」
「ううん……ないの。ただ、謝りたくて……ホント、ごめんね。じゃあ……」
そういって、宮野はいきなり電話を切ってしまった。俺だけが、嫌な気分で取り残される。
どう考えても普通じゃない……宮野はそもそも涙声だったし……
無論、俺が関わらなければいけない理由はない……ただ、俺は気になった。一体どういうことなのか、が。
即座に電話を折り返す。しかし……いくら呼び出しても宮野は電話に出ない。
「……くそっ。アイツ……覚えてろよ」
俺はそう言いながら、電話を切り、今一度別の場所に電話をかける。
「はーい? 佐田ですけど?」
すぐさま向こうから気だるそうな声が聞こえてきた。
「佐田か? お前……今どこだ?」
「はぁ? 岸谷? どこって、家だけど?」
「宮野は? 一緒じゃないのか?」
「え……知弦? どうかしたの?」
急に佐田の声が焦りを感じさせるものにものになる。
「……お前、心当たりあるんだな?」
「……後で話すから。それより、何? 知弦、アンタになんて言ってきたの?」
「いや、ただ……ごめん、って……様子がおかしかった……」
「……わかった。アンタ、あそこの交差点で待ってて。私もすぐに行くから」
「あ、ああ。わかった」
そうして、電話は切れた。どうやら……俺はまたしても面倒なことに巻き込まれようとしているようだった。




