理由と関係の話
「それで、宮野さんは放っておいたっての? 酷くない?」
翌日。俺は机で話をしていた。
していたというか、一方的に俺が話しかけられていて、それに対応していただけ……といった方が正しいように思えるが……
「……別に酷いとは思わないが」
「酷いだろ……宮野さんに恨みでもあるの?」
話の相手は……無論、瀬名である。
コイツはあの日以来どうしてか、俺に絡むようになってしまった。
クラスの上位グループともあまり会話していないように見えるし……一体何をしたいのかはよくわからない。
「恨み、ねぇ……なくはないかな」
「え? あんな優しそうな子に? 何があったの?」
瀬名は……いっそ清々しい程に俺の孤独を邪魔してきてくれた。
よって、俺もコイツに嫌悪感を持つ余裕すらなかった。どうでもいい……言ってしまえばそんな感情を俺は瀬名に持っていた。
「……瀬名に関係ないだろ」
「え……まぁ、そうだけど……気になるじゃん」
「じゃあ、宮野本人に聞けよ。今日もあの交差点にいるらしいから」
俺がそう言うと瀬名は少し迷った挙句、俺の方に顔を向ける。
「あのさぁ……そうは言っても、なんで岸谷は……あの交差点に行くの?」
「……はぁ?」
瀬名にそう言われてた俺は、思わずそう返してしまった。
「え……だって、もし、宮野さんに会いたくないなら、行かなきゃいいじゃん。あそこ通らなくても帰れるだろ?」
瀬名にそう言われて俺はようやく気付いた。その通りなのだ、と。
しかし……そうはしたくなかった。
理由はどうしてとかは言えないが……とにかく、したくなかったのだ。
「……その理由も関係ないだろ。瀬名には」
「あはは……確かに」
そう瀬名が苦笑いすると同時に、チャイムが鳴った。
「まぁ……俺には関係ないからさ。宮野さんにも聞かないでおくよ」
そういって、瀬名は席に戻っていった。
……言われてみれば確かにそうだ。宮野に会う必要なんてないのだ。
でも、俺はずっとあの交差点を通って帰宅している。
それは一体どうして……
「……そりゃあ、宮野に会いたくないからって、帰宅の道を変えるなんて方が……どうかしているに決まっているからだろ」
俺はそう一人結論づけてそれ以上のことは考えないようにしたのだった。