嫌な予感の話
そして、その日もあっという間に昼休みになってしまった。
授業も真面目に聞いていないわけでもないのだが、右から左へ、先生の話す内容は流れていってしまう。
気がつけば俺は自動販売機の前にいた。
食堂に買いに来たのは菓子パンと、飲料水だった。
昼飯は少なめだ。別に誰かと食べるわけでもない。
俺はただ、自分の席で黙々と菓子パンを頬張るだけである。
そう思いながら、自販機からジュースを買って教室に戻ろうとした。
「あーっ!」
と、なぜか前方から素っ頓狂な声が聞こえてきた。
見ると、なぜか俺の前からジュースの缶がこちらに向かって転がってくるのである。
目の前で静止したそれを、俺は思わず手に取ってしまう。
「あー! すんません!」
と、前方からやってきたのは……先程の眼鏡の彼だった。
その両手にはたくさんのジュースや紙パックの飲み物が抱えられてる。
「はぁ……それ……俺のなんです」
そういって、息を切らせながら、眼鏡の彼はそう言った。
「あ……はい」
俺は彼にジュースの缶を差し出す。
「あはは……あれ。君、岸谷じゃないか」
と、眼鏡の彼は嬉しそうにそう言った。
俺は彼のことをわからないが、彼は僕の名前を知っているらしい。
「あ……うん」
「あはは。いやぁ、悪いね、なんか……あ! 俺、もう教室戻らないといけないから! じゃあ!」
そういって、眼鏡の彼は大急ぎで走っていった。両手にジュースや紙パックを抱えて。
「……あれって」
俺はなんとなくだが、彼があんなにも大量のジュースや紙パックを持っている理由を察してしまった。
そして、少し嫌な気分になりながら教室に戻ったのだった。