呼び出しの話
それから、俺は家に帰った。
結局、なぜ宮野と佐田が一緒にいたのかはわからなかった。
まぁ……なんとなく嫌な予感がしたのは確かである。
佐田は宮野に何か言いたそうだったし……ロクなことでないのはなんとなくわかる。
俺はなるべく気にしないようにしながら一人で夕食を済ませ、椅子に座ったままで、ぼんやりとテレビのニュースを見ていた。
それにしても……佐田の奴は変わっていなかった。
相変わらず俺のことをゴミを見るような目で見ていたし……むしろ、変わっていなくて助かった。
それこそ、佐田にも宮野みたいに毎日俺のもとにやってこられても、むしろ気味が悪いし……
俺がそんなことを思っていた矢先、家の電話が鳴り響いた。
……こんな時間に電話がかかってくるなんて珍しい。
ほとんど両親がいない俺の家にかかってくるのはセールスか間違い電話だけだ。
かといって出ないのもなんだか駄目な気がするし……俺は仕方なく電話に出ることにした。
「はい? もしもし」
受話器を持ってそう言う。
「あ。出た」
瞬時に俺はその声が誰かわかった。
「……え。佐田?」
信じられない思いで俺は聞き返す。
「うん。そう」
電話の先の相手は頷いた。俺はあまりにも予想外の電話相手に思わず言葉を失ってしまう。
「あ……何?」
「アンタ、今暇?」
俺が聞くと間髪入れずに佐田は聞いてくる。
俺は少し考えてしまう。
「……いや、今は暇じゃな――」
「暇なのね。じゃあ、これから十分後、今日会った場所……あの交差点に来なさい。わかった?」
そう言うと佐田は電話をいきなり切ってしまった。
「……えぇ」
俺はどうすればいいかわからず、ただ途方にくれることしかできないのだった。




