似ている話
既に夏は終わってしまっているというのに、未だに暑い日が続いていた。
俺は相変わらず教室の窓の外を見ていた。
宮野も相変わらず、俺のもとにやってくる。
結局宮野が何を悩んでいるのかはわからずじまいである。
もちろん、宮野が悩んでいることに対して、俺は特に興味はない。
話さないのならば、それ以上はどうしようもない。俺にはどうすることもできないのだ。
だから、俺は宮野から何も聞いていないのである。
それに対してなにか悪いと思う気持ちもないし、後ろめたい気持ちにもならない。
まぁ……気にならないといえば、嘘になるのだが。
その日も結局一日何もなかった。俺はいつも通り、授業が全て終わると急いで席を立つ。
「あ、岸谷」
と、背後から聞こえてくる声……それが誰か俺はわかっている。
俺はゆっくりと振り返る。
「……瀬名」
瀬名だった。宮野の一件以来、ちょくちょく瀬名は俺に話しかけてくる。
「えっと……もう帰るの?」
「ああ、見ての通りね」
俺がそう言うと瀬名は少し迷ったような顔をした後で、しばらくすると俺の方に再び顔を向ける。
「あー……その、さ。もし、良かったなら何だけど……俺も一緒に帰ってもいい?」
意外な申し出だった。今までは話しかけてくることはあっても、こんな提案を瀬名はしてこなかったからである。
「……いいけど。いいの?」
そういって、俺はチャラいグループを見る。見ると、俺と瀬名が話していることなど気にせずに、皆会話している。
「あはは……まぁ、もう、いいかな、って」
そういって、困ったように笑う瀬名。
その笑い方……どこかで見たことがあった。
それはまぎれもなく、宮野の笑い方にそっくりだったのである。