理由の話
そして、俺と宮野、そして、瀬名は公園のベンチに座った。
無論、俺と瀬名は近い位置に座ったが、宮野はベンチの端に座っている。
「……で、なんであんなところで待っていたんだ?」
俺がそう訊ねると、宮野は少し困った顔で俺を見てから、目を逸した。
宮野が喋らないので、しばらくの沈黙が流れる。
「あー……えっと……昨日は、大丈夫だった?」
そう言ったのは瀬名だった。宮野は瀬名を見て気まずそうな表情を浮かべる。
「え……ええ。その……ごめんなさい」
申し訳なさそうに、宮野はそう言った。
瀬名も狐につままれたような顔で俺のことを見る。
この発言を聞くと……瀬名が言っていたことは本当のようである。
「なんで、そんなことしたんだ?」
少し迷ったが、俺は宮野にそう訊ねた。
宮野は最初何のことかわからない様子だったが、瀬名のことを見て、瀬名が苦笑いを浮かべると、俺が何を言っているのか理解したようだった。
「……嫌だったから」
そして、ボソッと吐き捨てるようにそういった。
意外だった。そんな風な物言いをする宮野を、俺は知らなかったからである。
「嫌って……あの金髪と一緒にいることが?」
俺がそう聞くと宮野は暫く黙ったままだったが、しばらくすると横に首を振った。
「……私自身が嫌だった」
まるで遠くをみるかのように、宮野はそう言った。
意味がよくわからなかったが……宮野はとにかくそう言ったのだ。
俺も瀬名も黙ってしまった。そして、沈黙だけが無意味に流れていく。
「……なんてね。深い意味は……ないんだけどね」
そう言うと宮野は立ち上がった。そして、そのまま歩いていってしまう。
「おい。どこへ行く?」
俺が呼んでも宮野は振り返らなかった。
「な、なぁ……岸谷」
と、そう言ってきたのは、瀬名だった。
「……何?」
「その……彼女、悩んでいることとか、あるんじゃないかなぁ?」
気の毒そうにそう言う瀬名。悩んでいること? ……知ったことではない。
俺がそれを聞かなければいけないのか。俺のことを一度は裏切った相手に対して?
「……今日は、俺も帰るわ」
そういって、俺も立ち上がった。
瀬名の方はまだ何か言いたそうだったが……そのまま気にせず放置して家に帰ることにした。