変わらない話
それからしばらく、俺と瀬名は歩き続けた。
瀬名と歩く必要性はなかったが……なんとなく一緒に歩いてしまった。
そして、そろそろ例の交差点である。
もしかすると宮野がいるのではないか……俺はなぜか直感的にそう思った。
……いないでほしい、というのが俺の本音だった。
瀬名からあんな話を聞いた今、俺は今宮野とは会いたくない。
会えばきっと、一体どういうことかと聞きたくなってしまうからだ。
聞いてしまうのは……宮野の思う壺である。
俺は宮野と関わりたくないのだ。それなのに、これ以上宮野に深入りしてしまっては……
俺と瀬名はそのまま交差点へと進む。目の前を車が行き交っている。
「あ」
瀬長が不意に声を上げる。なぜか彼は右を向いていた。
俺もその方向を見る。そして、思っていたとおりの人物がそこにいた。
「……宮野」
苦笑いを浮かべて、宮野知弦はそこに立っていた。
いつも通り、黒い綺麗な黒髪は短く切りそろえられており、小さく風にたなびいている。
そして、宮野は俺の姿を認めると、少しずつこちらに近づいてくる。
「あ……え、えっと……今日は……ここで待っていようって思ったの」
その言葉に、俺は思わず聞き返してしまう。
「待っていよう、って……お前、ここで待ってたのか?」
俺が聞き返すと、宮野は小さく頷いた。
……つまり、場所が変わっただけで宮野は結局俺を待ち構えていたということなのだ。
暫くの沈黙の後、俺は宮野を見る。
「……聞きたいことがある。ちょっと付き合え」
俺がそう言うと宮野は小さく頷いた。そして、今度は瀬名の方を見る。
「瀬名にも来てもらうけど……いい?」
「え? あ、ああ。別にいいけど」
そうして、俺たち三人は、俺と宮野がこの前立ち寄った公園に向かっていくことになったのだった。