気になる話
「……不味い?」
俺はオウムのように聞き返す。彼はさらに気まずそうな顔で俺を見る。
「あー……いや、その……なんか悩みとか……そういうのがあるんじゃないかなぁ、って……」
「悩み? なんでそう思うの?」
俺がそう言うと、すごく言いにくそう顔で彼は俺を見た後で、コホンと咳払いをする。
「その……あの後、憲一と俺と岸谷の知り合いでその……ファミレスにでも行こうって話になったんだけど……行ってみたはいいんだけどね」
そして、少し間を置いてから、眼鏡の彼は先を続ける。
「……最初は憲一の話を聞いていたんだけど……段々彼女、何かこう……イライラした感じになってきちゃって……」
「……イライラした感じ?」
俺が訊ね返すと、眼鏡の彼はコクリと頷いた。
「うん。それで……いきなりバァンと机を叩いたんだよ」
「え……机を……」
俺が驚いていると、眼鏡の彼も頷く。
「最初は俺も憲一も驚いたよ……それで憲一がどうしたの? って聞いたら……『もう、限界』……って。それだけ言って立ち上がって、そのまま出て行っちゃったんだよ」
その話を聞いて、俺は驚いていた。
……俺の知っている宮野はそんなことをするタイプではない。
なんというか……良くも悪くも周囲に合わせるタイプだし……だからこそ、俺が辛い時に俺のことを裏切ったのだ。
それなのに……宮野はなんでそんなことを……
「あー……まぁ、そんな感じ。俺と憲一は唖然としちゃってさぁ……彼女、可愛い顔しているのに……意外と怖いのかな?」
曖昧に微笑みながらそういう眼鏡の彼。
……もし、彼の言うことが本当なら、宮野に確認をとる必要がある。
なぜ、そんなことをしたのか、と。
俺はチラリと眼鏡の彼を見る。
「えっと……今日、時間ある?」
俺がそう言うと、眼鏡の彼は意外そうな顔で俺を見る。
「え……お、おお! 何? 岸谷の方から誘ってくれるなんて、嬉しいね」
顔を輝かせてそう言う眼鏡の彼だが……別に誘っているわけではない。
俺は確認する必要がある。
宮野知弦という人物が、俺の知らない一面を持っているのかもしれないということを。