予想外の話
俺は、教室の出口で立ち止まってしまった。
あの女ってのは……宮野のことなんだろうか。
今振り返ると、間違いなく金髪の彼に絡まれる気がする。
それだけは……避けたい。
どう考えたって、彼は俺が一番苦手なタイプだ。
昨日宮野をたすけなかったのだって、彼が俺の苦手なタイプだったからだ。
だとするならば、ここはさっさと教室から出ていくべきである。
俺はそう思い、足を進めようとする。
「おい」
と、背後から声が聞こえてきた。
わかる。誰の声か。
先程の金髪の彼だ。間違いなく、彼は俺に声をかけてきた。
俺は足をすすめるのをやめる。
ゆっくりと背後を振り返る。
見ると、やはり金髪の彼が、グループの中で立ち上がり、俺の事を見ていた。
そして、そのまま彼はこちらに近づいてくる。
俺は覚悟した。終わったのだ、と。
俺が勝ち得た孤独という安息の日々……それは脆くも崩れた。
奇しくも、それはかつて俺を裏切った宮野のせいで。
そして、金髪の彼は俺の前で立ち止まった。俺はただ、彼の目を見る。
「……あれって、お前の彼女なん?」
金髪の彼はそう聞いてきた。俺はゴクリと生唾を飲み込むと、ゆっくりと首を横に振る。
すると、金髪の彼はなぜか急に笑顔になった。予想外の行動に、俺は戸惑う。
「だよなぁ! あんな性格悪い女と付き合わない方がいいぜ! な?」
そういって、金髪の彼はポンポンと俺の肩を叩くと、そのままグループの方に戻り、談笑を再開する。
残された俺は、ただ呆然とその様を見ていることしかできないのだった。




