孤独の話
高校に入ってから約半年。
俺、岸谷雅哉は孤独であった。
いつもと変わらず、自分の席で、孤独にしている。
誰も話しかけてこないし、誰とも話さない。
平穏だ……これは俺が勝ち取った平穏であるとも言える。
高校生なると、皆俺へのイジメなどしなくなった。
無論、俺以外にイジメられているヤツはいるだろうが、俺というつまらない人間に対しては、誰もイジメなどしないのである。
だから、これは俺が勝ち取った孤独なのだ。誰にも邪魔されることのない孤独。
無論、嬉しくも悲しくもない。ただそこに孤独が存在する……それだけの話なのだから。
俺はふと、窓を見る。
青い空が広がっている……だからなんだというわけでもないが。
隣からはチャラいグループの下品な笑い声が聞こえてきた。やかましかったが……注意するような度胸もなければ、関係性もない。
孤独であるということは、誰共関わることを許されていないのだ。
だから、俺はあくまで傍観者……クラスをただ監視する存在なのである。
といっても、クラスでもそう頻繁に何か物事が起きるわけがない。
その日も、何事もなく授業が進み、終わり、放課後になった。
放課後になれば、俺は家に帰るだけだ。
パートに出ている母さん、働きに出ている父さん……一人っ子の俺は、夕食はレンジでチンが毎日のことである。
何もない、平穏な生活……孤独故に許される日々。
ふと、思い出すのは、アイツのことである。
最近、なぜかよく、アイツのことを思い出す。
アイツは、高校は違う高校になった。
そこでどうしているかは、正直、どうでもいい。
だけど、嫌な話だが、幸せにはなってほしくなかった。
無論、俺自身が裏切られたからというみみっちい話ではあるのだが。
ただ、俺は直感的に思っていた。
俺の初恋の、あの優しい裏切り者は、実は俺と同じくらい、不器用な人間だったんじゃないか、と。
そんなことを思いながら、俺は家に帰ったのだった。