腑に落ちない話
俺は、そのまま宮野を無視して歩き続けた。
金髪の男に絡まれていた宮野……俺は明確に宮野に対し「お前のことは知らない」と言った。
……実際、俺は宮野のことを知らない。
一体どうして俺に会いに来ているのか、アイツが何を考えているのか……そういったことは一切俺はわからない。
知らないというか……アイツのことがわからないといった方が正しいかもしれない。
だけど……それももうどうでもいいことだ。
俺はアイツに対して、アイツの目の前で知らないと言ってやった。
さすがの宮野も、もう俺に関わろうなんて思わないだろう。
しかも、アイツが困っていた矢先に俺は明確に助けようともしなかった。
だったら、もう俺に会いに来る必要だってないじゃないか。
俺はアイツに何もしてやらない……要はこれは、宮野に対する俺からの明確な宣言のようなものだったのだ。
肩の荷が降りたような感覚だった。俺はいつも通り交差点まで歩いて行く。
しかし……どこか腑に落ちない。
自分でも何が気になっているのかわからないが……どうしても気になった。
無論、宮野に対する行動は正しかった。俺が取るべき行動だったのだ。
それが正しかったとは思うのだけれど……
「あ」
そんなことを考えているうちに、いつの間にか交差点の信号は赤になっていた。
待たなければいけない……俺は仕方なく足を止めた。
「おーい!」
そこへ、背後から呼びかける声が聞こえてきた。
俺は振り返る。
「あれは……」
見ると、誰かが俺を追いかけてくる。そして、その姿はどんどん近づいていき……
「はぁ……や、やっと……追いついた……」
俺を追いかけてきたのは……あの眼鏡の彼なのであった。