関わりたくない話
「なぁ。いいじゃねぇか。ね?」
校門の近くまで俺はその光景を改めて認識することができた。
「す、すいません……待っている人がいるので……」
やはり、宮野は絡まれているようだった。
見ると絡んでいるのは……金髪の男子だった。
あれは……ウチのクラスのチャラいグループにいた男子だ。
「な、なぁ。ケンちゃん……そろそろ行こうよ」
「あ」
思わず俺は声を上げてしまった。
金髪の男子の近くには眼鏡の彼がいた。
眼鏡の彼は困った様子で金髪の男子に話しかけている。
「あ? 貴雄は黙ってろよ。今俺がこの子と喋ってんだからさ」
そういって、金髪の男子は眼鏡の彼のことは相手にするつもりはないようである。
「なぁ? いいだろ? 待っているったって……誰も来ないじゃん」
「そ、それは……」
宮野は困ったように周囲をキョロキョロと見回して……俺のことを見つけた。
そして、少し安心したように笑顔を浮かべる。
「あ」
と、その表情の変化に気づいたのか、眼鏡の彼も宮野と同じ方向を見た。
「何? 貴雄」
「あ……ケンちゃん。その子が待っている奴……アイツだよ」
なんとも不味いことに、眼鏡の彼はそう言って俺のことを指差した。
俺はものすごく嫌な気分になりながらも、そのまま歩みを進める。
そして、校門のすぐ近くまでやってきた。
「ふぅーん……なぁ。岸谷? だっけ?」
すると、金髪が俺に話しかけてくる。俺は目だけ動かして金髪のことを見る。
「……何?」
「この子。お前の彼女なん?」
金髪が信じられないという表情でそう聞いてくる。
眼鏡の彼はなぜか安心した様子で俺の事を見ていた。
そして、宮野は……少し恥ずかしそうにしていた。
……マジか。コイツはマジでそんなことを言われてそんな表情をするのか。
散々俺をひどい目に合わせてきたと言うのに……そんな表情をするっていうのか?
まさか、こう思っているのだろうか。
俺がこの場で「はい。そうです」と言うとでも。
「……違う」
「は?」
俺は小さい声だが、その場にいる全員に聞こえるように言った。
そして、宮野を睨みつけ、さらに先を続ける。
「……俺はそんな女知らないし、知りたくもない」
それだけ言って、俺はそのまま背中を向ける。
宮野がどんな表情をしたのかは……分からなかった。
だが、これで宮野自身もわかったはずなのだ。
俺は、もう宮野とは関わりたくないということを。