勘違いの話
その日も、宮野は校門で俺のことを待っていた。
今日こそは聞いてみる……俺は決意していた。無論、アイツにしてみればそんなこと聞いてほしくないのかもしれない。
だが、そんなことは関係ない。なぜ、アイツは校門の前でずっと待っているのか。待っていられるはずのない時間帯から、ずっと。
俺はそう思いながら放課後になるのを待った。そして、総ての授業が終了し、チャイムが鳴る。
俺はすぐに立ち上がった。
「あ、ちょっと」
と、不意に誰かが声をかけてきた。俺は振り返る。
そこにいたのは、眼鏡の彼だった。
なんでこんな時に声をかけてくるのか……俺には理解できなかった。
「え……何?」
「ふふっ……いやぁ、驚いたなぁ。スミにおけないじゃないか。岸谷も」
と、眼鏡の彼はニヤニヤしながらそう言う。
何のことを言っているのか……俺には理解できなかった。
「……え? 意味がわからないんだけど……」
「またまた~。知ってるんだぜ? 校門で待っている人のこと……岸谷の彼女のことだよ。俺見ちゃったんだぜ? 一緒に帰るところも」
眼鏡の彼は思いっきり得意そうにそういった。
……なるほど。そういうことか。いや、こういう可能性を想定していなかったわけではない。
俺は小さくため息をつく。
「……残念だけど、あれ、彼女じゃないから」
「あはは。いいんだって。恥ずかしがらなくて。いつも校門で健気に待っているじゃん。彼女じゃなければなんなのさ」
眼鏡の彼にそう言われて俺はふと思う。
……今の俺にとって宮野ってなんなんだ。初恋の相手ではあるが……俺は宮野のことが嫌いだ。
だからといって、何の意味もない人間ではない。現に俺は宮野に振り回されているし……その場ではすぐに答えは出なかった。
「……さぁ? なんだろうね」
俺はそれだけ言って、呆然とする眼鏡の彼を放って教室を出ていった。