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大丈夫じゃない話

 それから家に帰った。母さんは帰ってきていなかったので、俺が勝手に学校辛いなくなったことに関する先生の留守電は……勝手に消しておいた。


 ふと思ったのだが……佐田は何か伝えたかったのではないだろうか。


 俺に何かを言いたかった……でも、俺には悟らせたくなかった。


 結果として俺は何も感じ取ることはできなかった。佐田は……そのまま去ってしまった。


 俺があの時引き止めておけば……でも……


「俺に……アイツのことを考えてやる必要なんて……ないんだよな」


 自分に言い聞かせるようにそう言って、俺は自室のベッドに横になる。


 俺は……なんだかとんでもないことをしてしまったかのような気分になった。


 引き返すことができない……そんな気分だ。


「……もし、そうだとするならば……」


 俺はベッドから身体を起こす。携帯を取り出し……佐田に電話をかけた。


 呼び出し音……そこから、留守電だった。


「あ……佐田。その……お前……大丈夫だよな?」


 俺はそれだけ言って……それ以上は何も言えなかった。


 大丈夫……何が大丈夫なのだろう。


 俺はそう思いながら電話を切る。


 その夜、佐田から返事はなかった。


 俺はなんだか嫌な予感を抱きながらも、その日は結局寝ることにした。


 しかし、気になって眠れなかった。


 佐田は……大丈夫なのだろうか。あの表情……何処かで見たことある表情。


 追い詰められているのに、それを悟らせないようにしている、あの顔……


「あ」


 俺は起き上がって、電気をつける。


 そして、鏡を見る。


「……俺だ」


 思い出した。あの佐田の表情は……それこそ、佐田にイジメられていて限界に達していた時の俺の表情……そのものだった。


「……じゃあ、アイツは……」


 その時だった。携帯のメールの着信音が部屋に響く。


 俺は慌てて携帯を手に取る。


「……なんだよ」


 携帯には一言「大丈夫」とだけ言葉が書かれていた。その一言だけ書かれたメールで俺は理解した。


 佐田は……大丈夫じゃないのだ、と。

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