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被害者の話

「……俺のせい?」


 思わず俺はそう言ってしまった。宮野は表情を変えることもなく、俺のことを見ている。


「うん。心当たりないの?」


 そう言われて俺は何も言わなかった。宮野を叩いたこと……あれで宮野がベランダから飛び降りるだって? あり得ない話だ。


「……ないね」


 俺がそう言うのをわかっていたかのように満足そうに宮野は微笑んだ。


「まぁ、そうだろうね」


 そう言ってから宮野は窓の外を見る。


「どうするの? これから」


 答えなど当てにしていないように、宮野はそんな適当な事を俺に聞いてきた。


「……どうするって?」


「汐美ちゃんのこと。私の事……私が本当はどういう人間なのか、話した?」


「……話してない」


「じゃあ、汐美ちゃんのこと、心から許せた?」


 そう言われて俺は黙ってしまった。


 宮野は俺が言ったどう感じているか分かっているかのように嬉しそうな顔をしている。


「……お前には、言いたくないよ」


「ああ、言わなくてもいいよ。だって、許せていたらこうなっていないでしょ? あの日、雅哉くんは私の家に来なかっただろうし。あの時、雅哉くんがもし、汐美ちゃんのことを許せていたら、私の家に来るはずがないんだから」


 嬉しそうにそう言いながら、宮野は俺のことを見ている。俺は何も言わずに宮野を睨んでいた。


「……お前は、佐田を壊したいんじゃないのか?」


「うん。まぁね。でも、結果的にこの前は、雅哉君の方が汐美ちゃんを追い詰めてたと思うけど……どう思う?」


 確かに……俺があの時、宮野の家に行かなければ……佐田もあんなことをしなかっただろう。


 そうなると、悪いのは俺で……


「……俺は悪くない。悪いのは……お前だ」


「へぇ。いつまでそう言っているわけ? 自分は被害者だ、って。悪いことは何もしていないって。本当に……そう言えるわけ?」


 人間の温かみさを一片も感じさせないような調子で宮野はそう言った。俺は何も返せず宮野に背中を向ける。


「全治一ヶ月だって。また、御見舞、来てよね」


 悪びれる様子も少しも見せないで、宮野はそう言った。


 絶対に来たくないが……たぶん来ることになるのだろう。俺はそう思いながら宮野の病室を出たのだった。

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