君の責任の話
「……知弦のお母さんが言うには……ここだって」
佐田は少し不安そうな顔でそう言った。病院の個室……俺は少し戸惑ったが、扉を開くことにした。
そして、そのまま、一気に扉を開く。
大きな部屋の中の中央に、大きなベッドが存在している。
宮野はその上で、上体だけ起こして窓の外を見ていた。
俺たちが入ってくるのを認めると、笑顔で俺と佐田を見る。
「雅哉君に、汐美ちゃん。来てくれたの?」
笑顔……それは完璧な笑顔だった。まるで敵意を感じさせない、完璧な笑顔だ。
「知弦……だ、大丈夫なの?」
不安そうにそういう佐田。宮野は恥ずかしそうに頷く。
「あはは……洗濯物を取り込もうとしたら、ベランダから落ちちゃって……馬鹿だよね」
ベランダから落ちた? ……馬鹿言え。
コイツはそんな間抜けじゃない。
落ちちゃったんじゃない。自分で落ちたんだ。
「そ、そうなんだ……心配したんだよ。知弦のお母さんから私の携帯に電話があって……それで……」
そういう佐田を見てから、宮野は俺の方を見る。
「それで……雅哉君のことも呼んでくれたんだ」
目を細めて嬉しそうにそういう宮野。俺は……コイツが何をしたいのか理解できた。
「うん……その……知弦。たぶん、まだ怪我が痛むと思うし……」
「そうだね……その……汐美ちゃん、悪いんだけど……」
申し訳なさそうに佐田を見る宮野。それを見て佐田は何かを理解したようだった。
「あ……ごめん。その……私、外で待っているから」
佐田は俺の方を悲しげな顔で見てから、そのまま病室から出ていった。
残された俺と宮野は暫く黙っていたが……
「……分かっているんだよね? 自分がしたこと」
先に喋ったのは……宮野だった。
俺はゆっくりと視線を動かす。
「……何が、だ?」
すると宮野は、信じられない程に悪い目つきと人相で、俺のことを見る。
「はぁ? あのさぁ……私が怪我しているの、雅哉君のせいだからね」
邪悪な笑みを浮かべたままで、宮野は俺にそう言ったのだった。




