変わってしまった話
……嘘だろ?
信じられない……いやいや。信じられなかった。
俺は今一度目の前にいる人物をよく見る……どう見ても、宮野だ。
「宮野……お前……何してんの?」
思わず思ったことがそのまま口から出てきてしまった。宮野は少し恥ずかしそうに顔を背ける。
「え、えっと……ごめんなさい。また、来ちゃって……」
宮野は済まなそうにそう言う。謝られた所で……俺にどうしろというのだろうか。
そもそも、俺の気持ちは昨日伝えたはずである。それなのに、一体どういうつもりなのか。
……いや、落ち着け。別にコイツの相手をする必要は全くないのだ。
さっさとこのまま帰ればいい……俺は今更ながら当たり前のことを思い出した。
そのまま何も言わずに俺は宮野に背を向ける。
「あ……」
宮野が何か言いかけたが、俺は無視した。そのままスタスタと歩いて行く。
……振り返っては駄目だ。足を止める原因になる。
俺はそう思って、一切振り返らなかった。宮野が俺に付いてきているかも無視してひたすら歩く。
そうこうしている間に、いつの間にか昨日宮野と会ったところまでやってきていた。
目の前を過ぎていく多くの車……さすがにここまでは付いてきていないだろう。
そう思い、俺は背後を見る。
「……いる」
いた。宮野は俺より少し離れた所で、怒られた子どものようにシュンとして立っていた。
……さすがにここまでやられると、どうしようもなかった。
「……何?」
少し大きめの声で俺は宮野に声をかける。宮野は慌てた様子で俺の方に近寄ってきた。
「あ……ごめん……なさい」
「は? だからさぁ……何を謝っているわけ? お前は」
つい、俺は強い調子で宮野に訊いてしまった。宮野はすまなそうにまたしても顔を逸らす。
「それは……やっぱり……」
「俺をイジメてたこと?」
そう言われて宮野はジッと俺の事を見る。何も言わずとも、その通りだといいたいのは分かった。
俺は思わずため息を付いてしまった。その行動が宮野には意外だったらしく、キョトンとした顔で俺を見る。
「……謝って、どうするわけ?」
「え……」
俺がそう言うと、宮野は信じられない顔をした。どうやら、俺がそんなことを言うとは思っていなかったらしい。
「あ、謝って……それで……」
「許してもらおうと思った?」
宮野の視線が泳ぐ。その通りだったらしい。
「ふっ……あははっ……」
と、思わず俺は笑ってしまった。宮野は驚いて俺の事を見る。
「え……なんで、笑って……」
「ああ。ごめん……いやさぁ、だって、一体どういうつもりなのか……さっぱりで。逆に笑えてきちゃって」
俺はそう言うと宮野の方を見る。なんだか、ひどく宮野は不安そうだった。
俺が知っている宮野は……もっと、自信がある感じだった。それなのに、今目の前にいる宮野はそうではない。
宮野は変わってしまったようだった。
それは、俺の方も多分そうなのだろうけど。