無力な話
そして、俺は家に帰ってきた。結局……俺は佐田に何も言わずに帰ってきた。
未だに宮野のことも未だに気にかかっている。といっても……俺には何もできないのだが。
家に帰ってきてみると……誰もいなかった。
なんとなく、母さんが帰ってきているかな、なんて思ったが……まぁ、そんなこともなかった。
そもそも母さんが帰ってきていたら、なんと相談するのだ。前みたいに俺にとって有要なアドバイスをくれるとも限らないわけだし……
俺はそのまま自分の部屋に戻った。そして、ベッドに倒れ込む。
……俺、何やっているんだろう。
宮野にしろ、佐田にしろ……なんで俺は、アイツらに振り回されているんだろう。
アイツらは俺にとって憎むべき対象だった。アイツらに復讐してやりたいと思うのは道理だ。
それに、佐田は……自白した。自分が今、昔の俺と同じ立場にいるのだ、と。
俺にとってそれは、腹を抱えて笑えるようなことだ。なにせ、俺のことを散々苦しめた奴が、因果応報というか……そんな感じになっているのだから。
なのに、俺は一体何をしている?
もやもやとした気分のまま……ふと、携帯を取り出す。
そして、そのまま番号を入力する。
呼び出し音が鳴る……相手は……出ない。そして、留守電になった。
俺は少し迷ったが……やっぱり言っておくことにした。
「……ごめん」
俺はそれだけ言って電話を切った。
ごめん。一体何を謝っているのか、何に謝っているのか。
俺はそのまま目を瞑る。明日は来る。
でも、俺にとって明日は……一体どうすればいいのだろう。
そんなことを考えながらも、俺はそのまま「ごめん」という言葉を反芻しながら、起き上がる。
そのままシャワーを浴びて、着替えを済ましてから、部屋に戻ってきた。
俺は……携帯を確認する。着信は……あった。留守電も入っている。
確認は……しなかった。俺は携帯を放置したままで、ベッドに横になる。
明日は……どうするか。
「……瀬名に、聞いてみるか」
自分でもなんと都合が良すぎる気がしたが……やっぱり今の自分にとっては誰かに相談したかった。
ふと、少し前の自分を思い出す。
孤独を選んでいた自分……やはり、あの時の方が穏やかだった。
もしかすると、今の俺にとって、これは報いなのかもしれない。今までずっと孤独を選んでいたことの。
そうなると人間は……どう考えても孤独になんてなれないし、周りがしてくれないのかもしれない……なんてことを思いながら、俺は眠りについた。




