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恐怖する話

 宮野の家に着くまで……俺はずっと心配だった。


 あの様子だとマジで宮野は佐田のことを壊そうとしている……しかも、それは自分が快感を感じるためだけに。


 佐田がどうなろうとか関係ない……マジで宮野はそれをやろうとしているのだ。


 それだけは阻止しなければならない……俺は強くそう思いながら宮野の家へと急いだ。


 そして、宮野の家へは、約10分程で着いた。俺は肩を上下させながらも、宮野の家のインターフォンを押す。


 ピンポーンという間の抜けた音が聞こえてくる。すると、程なくして家の扉が開いた。


「あ。雅哉くん」


 まるで来ることを予想していたようで、嬉しそうな顔で宮野は俺を迎えた。


「お前……どういうつもりで――」


「あー。そういうのいいからさ。さぁ、早く家の中に入ってよ」


 宮野はまるで罪悪感を感じていないようで軽い感じで俺にそう言う。


 俺は意味がわからなかったが……家に入らなければ宮野の止めることは出来ないと考えた。


 宮野に言われるままに俺は、玄関から家の中……リビングへと入っていく。


 リビングは閑散としていて、どうやら、またしても宮野しかいないようだった。


「フフッ。まさか、来るとはね。いや、分かっていたけど」


 嬉しそうにそういう宮野。


「……お前、もしかしてもう……」


 俺がそう言うと宮野はさらに嬉しそうに微笑んだ。


「ん? 何? 私は汐美ちゃんが傷つくような事は、汐美ちゃんに言ってないよ?」


「お前……本当か?」


 俺がそう言うと宮野は下卑た笑みを浮かべて俺を見る。


「雅哉くんさぁ、汐美ちゃんのこと心配しているの?」


「あ……当たり前だろ……お前が佐田に何か変なことしそうで……」


「でも、汐美ちゃんは雅哉君にあれだけ酷いことしたのに?」


 俺はそう言われて言葉が詰まった。しかし、俺は今日のことを思い出す。


「……佐田は、もう昔の佐田じゃない。お前のそういう話も、もう俺に取っては無駄だ」


「……はぁ? 何言っているの?」


 馬鹿にした調子で宮野は俺の事を見る。


「汐美ちゃんは汐美ちゃんのままでしょ? 変わってなんていないよ」


「……お前にはそう思えるだけだろ」


「違うよ。もしかして優しくされたから、汐美ちゃんが変わったって勘違いしていない? あははっ……そうだよね。雅哉くんは汐美ちゃんの本当に悪い所、知らないもんね」


 宮野は悪魔的な笑みを浮かべて俺を見る。俺は少し恐怖を感じてしまった。


「……本当に、悪いところ?」


「そうだよ。あの子、自分勝手でしょ? 自分が調子が良い時は自分より弱い人間には強く出る、自分が調子悪い時は自分より弱い人間にさえ助けを求める……典型的な性悪タイプでしょ」


「……違う。佐田は……そんな奴じゃ……」


「違わないよ。小学校、中学校と、私がどれだけ汐美ちゃんが弱い立場にいかないように気をつけていたか、知らないでしょ?」


「……え?」


 俺は宮野の言葉に驚いてしまった。宮野は相変わらずのニヤニヤした顔で俺を見ている。


「……どういうことだ?」


「言ったでしょ? 汐美ちゃん、そういうタイプだから、女の子の中には結構、汐美ちゃんのこと嫌いな子も多かったの。そういう子たちとの間を取り持っていたのが私。だから、私がいなくなったから汐美ちゃんはああなった……結果としては雅哉くんにとっては好都合だったみたいだけどね」


 嬉しそうな顔でそういう宮野。俺は……なんだかむき出しの真実をそのまま突きつけられて気分が悪くなってきた。


「……それじゃあ、何か? 佐田は……ともすると俺と同じような……」


「同じような人間だから、今、互いに依存しあっているんでしょ?」


 まるで容赦ない言葉を宮野は俺に突き刺してきた。


 俺は何も言えず、ただ、宮野の事を見ていた。


「……でも、そんな汐美ちゃんも、雅哉くんも私の大切な友達。だから、二人が壊れたら、私は最高の罪悪感を感じることが出来る、っていうわけ」


「やっぱりお前は……狂っている……」


 俺がなんとかそう言っても宮野はまるで動じる様子はないようだった。


「私が? そうかなぁ……どっちかっていうと、元いじめっ子といじめられっ子で依存しあっている汐美ちゃんと雅哉くんの関係性の方が狂っているって私は思うけどなぁ」


 ……限界だった。宮野は……一体どうしてここまで俺と佐田に残酷なんだ?


 いや……理由なんて殆ど無いんだ。自分が気持ち良いから……それだけ。


「……帰る。お前が佐田に変なことを言っていないか確認したいだけだったから」


「へぇ。でも、今帰るのはやめておいた方が良いと思うけどなぁ」


 俺はそれを無視して、玄関の方に歩いていく。宮野もなぜだか知らないがその後をついてくる。

扉に手をかけ、そのまま扉を開く。


「え」


 その直後だった。俺は思わず声を漏らす。


「な、なんで……お前……」


 扉の先には……佐田が信じられないというように目を丸くして俺のことを見ていた。


「ね? 今はやめておいたほうがいいって言ったでしょ?」


 俺はゆっくりと振り返る。背後からうれしそうにそういう宮野は、この上なく嬉しそうな顔をしていたのだった。

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