不思議な場所の話
……で、どこに行くんだろうか。俺と佐田は。
今俺と佐田は……なぜか最寄り駅から電車に乗っていた。
なぜか電車に揺られて、俺と佐田はどこかに向かっている。
佐田に聞いても「秘密」としか返答が返ってこない。
一体どこへ連れて行かれるんだろうか……
そして、何回か電車を乗り換え、俺と佐田は大体総計1時間程、電車の旅をしていた。
「ふぅ。着いた」
佐田は満足そうにそう言って駅から出た。
駅から出るとそこは……知らない町だった。いや、1時間程度だから、そこまで俺の住んでいる町から離れてはないんだろうけど。
「……ここに何があるんだ?」
俺がそう訊ねても佐田はニヤニヤするだけである。まぁ、おそらく教える気はないんだろう。
結局、俺と佐田はそのまま駅から歩きだしてしまった。それから20分くらい歩いていく。
「……あ、ここだ」
そう言って佐田が立ち止まったのは……なんだか、大きな公園の入り口だった。
公園というか、植物園というか……とにかく、そんな施設のような場所の前で佐田は立ち止まる。
「え……ここ?」
俺がそう訊ねると、佐田は大きく頷いた。
「うん。何? 問題ある?」
「え……いや、ないけど……」
俺がそう言うと、佐田は満足そうにそのまま公園らしき場所の中に入っていく。
施設内は実際公園のようだが……人があまりいなかった。木々が鬱蒼と生い茂っており、森の中を俺と佐田は歩く。
「ここさぁ。人気ないんだよね」
「え……?」
「なんか、気軽に入れる植物園って感じで作りたかったみたいなんだけど……まぁ、特にめぼしいものもなくて、人が来ない……そんな感じらしいよ」
「……お前は、来るのか?」
俺がそう言うと佐田は立ち止まって俺の方を振り向く。
「うん。人と会いたくない時とか、1人になりたい時とか、ここによく来るよ」
「え……あ、ああ……そうか」
そう言う佐田の表情はどこか寂しそうだった。俺は……そういう佐田の問題に対しては何もしてやれない。
そして、心のどこかで、何かしてやる必要はない、という声が囁いてくる。
俺はその声を、なるべく気にしないようにしていた。
「あ。でもさ、この先に休憩所があるよ。ソフトクリームでも食べない?」
「あ、ああ……別にいいけど」
嬉しそうに微笑む佐田。
俺は……一体何をしているんだろう。
そんな疑問を胸に抱きながらも、俺は佐田の後をついて行ったのだった。




