信じられない話
学食で適当に食事を済ませ、さっさと教室に戻る。
教室では相変わらずチャラいグループが盛り上がっていた。
俺はなるべく気にしないようにしながら席に戻った。
窓の外を見る……孤独だ。
そうだ……そもそも、宮野とはもう違う高校なのだ。アイツはこの高校にはいない。
アイツが何をしてこようが気にする必要はないのだ。だから、心を乱されることもない。
それに、昨日のあの対応……さすがに宮野も、もう俺に関わろうとは思わなくなっただろう。
これで俺はまたいつも通りに孤独な日々を過ごすことができる……俺は一安心した。
そして、午後の授業が再開される。というか、別に宮野のことを考えていてもいなくても、俺はあまり授業に集中していなかった。
そして、放課後、担任の先生の話が終わると同時に俺は席を立つ。
眼鏡の彼が属しているチャラいグループは放課後どうするか、とか、そんなことを話していた。
眼鏡の彼は意見を出さずにリア充っぽいやつの話を聞いている。
……それで楽しいのだろうか。むしろ、苦痛なのではないか。
そんなことをしなければならないのなら、いっそ孤独になった方が良いのではないのか……
と、そんなことを思いながら彼の事を見ていると、ふいに眼鏡の彼がこちらを向いた。
あまりにも不意打ちだったので、俺と彼は一瞬だけ目があってしまった。慌てて俺は目を逸らす。
やめろよ……話しかけたりしれくれるなよ……
その願いが通じたのか、眼鏡の彼は俺に話しかけてこなかった。そのまま俺は教室を無事脱出することができた。
全く……宮野に会ってからどうにも調子が悪い。誰かとかかわらないように生きていくのがモットーだというのに……
こんなときはさっさと家に帰ろう……そう思いながら俺は靴に履き替え、そのまま校門を出ようとした。
「き……岸谷君!」
その瞬間、背後から聞こえるはずのない声が聞こえてきた。
俺は信じられない思いで振り返る。
「あ……ご、ごめん……」
振り返るとそこに立っていたのは――
「み……宮野……」
昨日と同じ、制服姿の宮野知弦なのだった。