これまでのくだらない話
俺は孤独な人間だ。
別に強がっているわけではない。真の意味で俺は孤独なのである。
無論、最初から孤独だったのではない。
小さい頃は別に孤独ではなかった。
孤独になったのは……今いる街に越してきた頃だ。
小学4年生という中途半端な時期に俺は転校してきた。
その時点でわりと孤独になる運命というのは決まっていたのかもしれない。
転校初日からほぼ、誰も俺には話しかけてこなかった。
ただ……1人の女の子だけは俺に話しかけてきた。
その子はやけに明るくて可愛い子で……とても優しかった。
小さい頃の俺はそんな女の子のことをすぐに好きになってしまった。
今でも明確に、あの女の子が初恋の相手だったと理解できる。
ただ……それも長く続かなかった。
俺はそのうち、男子からイジメられるようになった。女の子達からも、避けられるようになっていった。
何が原因かは……今となってはどうでもいい。とにかく、俺は除け者になった。
俺の初恋の女の子だけは、そんな状況になっても、なんとか俺を助けようとしていた。
ただ、それも無駄に終った。すぐに、女の子も、俺をいじめる大勢のウチの1人になってしまった。
本来ならば、それは当たり前で、女の子だって自分のことが可愛いのだから仕方ない。
だけど、未だに俺はあの子のことを許せない。
理由は簡単だ。俺は裏切られたからだ。
裏切るのなら最初から優しくなんてしてほしくなかった……めんどくさい話だが、俺が未だにあの子のことを許せない理由だった。
中学になっても、いじめは続いていた。
ただ、俺をいじめる奴らの数は減っていった。
そりゃあ、小学校から全員俺と同じ中学にあがったわけじゃない。単純に数が減ったのだ。
ただ、あの子は……まだ俺をいじめる大勢の1人だった。
毎日飽きないのかというくらいに、繰り返されるくだらない行為。
だけど、俺は、ある日、ゴミ箱に落書きだらけにされて捨てられたノートの端に、まるで申し訳ないという感じで書かれている「馬鹿」という小さな文字を発見した。
見たことのある筆跡……あの子のものだ。
それを見た瞬間、俺は思った。
あの子……いや、アイツだけは、許せない、と。
アイツは俺に対して負い目を感じているのだ。それは無論、小学校の頃の俺に少しでも優しくしたからだ。
俺は……無性に腹が立った。だったら、なんで俺に優しくしたんだ。中学生になっても未だに後悔しているのか、アイツは。
さすがに俺も呆れてしまった。俺は落書きだらけのノートをゴミ箱に叩きこむ。
それから……段々とイジメは減っていった。
皆、飽きたのだ。反応も薄い、反撃もしてこない……そんな対象をいじめることに。
俺の初恋のアイツも、俺をイジメなくなった。
アイツは相変わらず見た目だけは可愛かったから、クラスの可愛い女の子グループで楽しそうに話していた。
きっと、もう俺のことなど気にしていないだろう。あのノートの端の小さな文字……アイツはあれでもう俺との縁を切ったのだと、俺は理解した。
その瞬間、俺は自分の初恋を嫌悪をした。なんで、そんな女の子を好きになったんだろう。
だって、あまりにもくだらないではないか。俺に優しくしたことも、全部アイツは自己満足のために行ったことなのだ。
そう考えると、俺は明確にアイツのことが嫌いになった。
二度と話したくない。会いたくないと思った。
そして、俺は、自身の初恋そのものを大嫌いになったのだった。