西暦弐阡拾陸年捌月弐拾弐日大型台風接近時冠水英雄譚
とても短いです。いつも書いてるシリーズとはなんら関係はありません。
水着を穿き、肩にはタオルを掛け、箒を片手に持ち、冷たい雨が降る中、冠水した道路を救い、また、近隣の住民に希望を配るためその男は飛び出した。
男は寒さに耐えながらも1人、見えない排水口を手探りで探していた。
数分間が経過しただろうか。やっとの事で排水口を見つけ出した男は、排水口に詰まっていた木の葉、木の枝、松ぼっくり、どんぐり、飲料缶、ペットボトル、プラスチックビニールその他もろもろを素手で掴み取り去った。
だが一向に水かさが減ろうとしない。怪しげに思った男はその手に持っていた箒であたり一帯の水を追い払い、正体を突き止めたのだ。
そこにはなんかの蓋が引っ付いていたのだ。男は意を決し、その蓋を取り剥がそうと試みた。その瞬間、上流から化学物質を含んだ有害な汚水がなぜか流れてきたのだ。男はガードレールの上にまたがり躊躇いながらも、近隣住民のためだと再び意を決して謎の蓋に挑む。
謎の蓋は想像以上に固く張り付いており、引き剥がすのには時間がかかった。だが、男が力を思いっきり入れると蓋はやっとの事で引っぺがされ、たちまちそこには巨大な渦巻きができた。その途端急激に水かさは下がり、あっという間に湖と化していた自宅の前の道は普段の通りに変貌を遂げたたのである。
男は近隣住民に感謝され、勝利の雄叫びと共に両腕を高く振り上げたのであった。
それが私です。