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夜の音

山野はいつも突然だ。

人に初めて会うのはいつだって知らない人に会うのだから唐突といった格好になるのはしょうがないにしろ、山野と初めて会ったときは度を越していた。そのころ僕はちょっとした田舎に住んでいて、バス停といったら山の中の神社の前だったのでいつも朝は一人っきりでバス停の前に佇んでいるのが常であったのだが、ちょうどバスが来るというところ山の中でもから自転車に乗って飛び出してきたのが山野であった。斜面を急速度で下って来る山野の形相ときたら、糞を気張ってるようなどこか生真面目で必死な表情だったが、ひどく歪んでいたといえども美男であることはすぐわかるような美男でありちょっとみとれたことをおぼえている。さて、山から出てきたというものそんなに早くブレーキが効くわけもない。バスというのは図体がでかいから止まるのに時間がかかる。バスはブレーキがかかるかかってきてゆっくりになってきているが到底間に合うようなものではない。がちゃんと音を立ててバスにぶつかり自転車が宙返りするのを僕はどこか別世界のもののように見ていて動くことができなかった。山の中だから妙に静かで自転車が地面にぶつかる音もはっきりと響いていた。その後の静寂、自分の息を呑む音だって聞こえた。山野は僕の心配をよそにぶっきらぼうな言い回しで「イテェ」と叫んだ後にムックりと立ち上がり、素知らぬ顔で自転車を検分したあと、自転車をかたに担いで、バスの入り口向かってスタスタ歩いて行った。バスの運転手は飛び出してきてだいじょぶかと聞いたり警察や救急を呼ぼうかといろいろ言ったりするのに、山野ときたら知らぬ顔でいらんといったあと壊れた自転車をバスに乗せれるかと馬鹿みたいな質問をしていた。山野は運転手の話なんてろくに聞かずバスに乗ろうとする。仕方がないので取り敢えず連絡先を渡して親や先生に相談するように言った後にバスに乗るのを許した。当然僕も同じバスに乗るのだが、とんでもない振る舞いに奇異の目で山野を見ていると山野は「なんか俺の顔にくそでもついてんのかと」僕にぞんざいな感じで聞く。少し怖くおもって、いやそんなことはないけどと弱々しく答えると、答えを最後まで聞かないうちに「お前も澪標高校に通ってるのか」と山野は言い、僕は同じ高校の同級生になるのがこんな変な男だと知って驚いて、二の句が告げずにいるともしかして中学生か?子供みたいな顔してと言いながら金たまを握られた。こんなぶしつけな人間がどこにいるだろうか?。あわてて振り払って何を言おうにもこんな人間に何を言えばいい?怒ろうにもなんだか迫力があってどうしようもない。遠くの席に黙って移動してじっとバスが学校に着くのを待った。山野はそのあと何個が馬鹿みたいなことをバスの中で大声で叫んでいたが、怖いやら恥ずかしやらで何も言えなかった。

これが山野に初めて会った時の次第である。

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