手酷く振られる 三人称ver
屋上に一人の男子生徒がいた。
夕焼けが眩しく、空をオレンジ色に染め上げている。屋上から見下ろせば、部活動の生徒達が後片付けをしている。
男子生徒はそわそわと落ち着きがなく、しきりに屋上に来るための扉と時間を気にしていた。
音を立てて扉が開く。入ってきたのは一人の女子生徒だった。
彼女は屋上に立つと、彼の元へ一直線に進んでいった。
その頬は少し赤みが帯びているが、夕焼けによって隠される。
彼女が前に立つと、そわそわしていた体を伸ばし、勢いよく頭を下げる。
「君のことが好きです」
彼の顔が真っ赤に染まる。耳まで真っ赤で、傍目にもよくわかる。
頭を下げた彼の表情は、緊張とこれからの展開で百面相をしている。
対して彼女は驚きと嬉しさで、満面の笑みを浮かべる。しかし、次第に彼女の表情が変わっていく。
満面の笑みから、不審げに、そして何かに気づいたのか、驚愕に変わった。
ちょうどその時、彼が頭を上げて彼女の顔を見る。安心したような、崩れた笑みだった。
彼女は彼を見ると眉を顰めて、見据える。
「無理。私あなたのこと欠片として好きじゃないわ。じゃあね」
踵を返して、屋上の扉へ向かう彼女を、彼は呆然と見送る。
扉に手をかける寸前、彼女がつぶやいた。
「まったく、なんでこっちなのよ。私が好きな方は兄だっての」
その声は風のいたずらか、彼の元に届いた。そしてそのまま、彼女は扉の向こうへ消えていった。
扉が閉まると彼は体の力が抜けたように、四肢が伸びる。
そのまま数秒もすると彼の体は、プルプルと震えだす。
そして唐突に紅の空に向かって、叫び声をあげた。
「僕の恋心を返せー!! 馬鹿兄がーー!!」
こうして、一人の少年の恋が散った。