手酷く振られる少年 一人称ver
手紙の通りに、きちんと屋上にやってきてくれた女の子。
「君のことが好きです!」
思い切り頭を下げて言う。
言った。言ってやった!
顔が熱く火照ってくる。きっと耳まで真っ赤だろうな。
夕焼けで隠れるといいな、なんて思っても、ばれてると思う。だって湯気が出そうなぐらい、顔が熱いんだから。
彼女はどんな表情をしているんだろう。
驚いた顔かな? 嬉しそうな顔かな?
答えてくれるまでのこの時間が待ち遠しい。
数秒、数十秒と沈黙が続く。
さすがにおかしい。どうしたんだろう?
いなくなってないよね。
チラっと視線を上げると、驚いた顔の彼女がいた。
ふぅ~。驚きで固まってるだけか。
安心したら思い切り息を吐き出してしまった。
それで固まっていた彼女が動き出した。
眉を顰めて、僕を見据える。
な、なんでだ? どうしてそんな表情で見るんだ。
「無理。私あなたのこと欠片として好きじゃないわ。じゃあね」
踵を返して屋上への入り口に歩き出す。
そんな馬鹿な……。事前情報は完璧のはず。
僕を好きだと想っていると、又聞きだけど聞いたのに。
そんなとき風のいたずらか、彼女のつぶやきが聞こえてきた。
「まったく、なんでこっちなのよ。私が好きなのは兄の方だっての」
呆然とする僕は、後姿を見送るしかなかった。
扉が閉まり、姿が見えなくなったころ、ようやく動くことができた。
またか、またお前か。いつもお前じゃないか。まったく。くそう。
体が震える。
そのまま衝動的に叫んだ。
「僕の恋心を返せー!! 馬鹿兄がーー!!」
こうしてまたひとつ、僕の恋は散った。