表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の楔  作者: 夏路殻巣
1/21

密室

 

 窓から差し込む真夏の光が身体を焼く。

部屋に充満する腐敗臭に、吐き気が込み上げる。

滝の様に流れる汗が、意識を奪ってゆく——。


 何故——あの男は来ないのか。

あの扉が閉ざされてから、もう二日が経ったはずだ。

いつもの様に餌を与えに現れるのではないのか。

鎖に繋いだまま、水を与え、食べ物を与え、欲望を吐き付けに——。


「……はるか……」

隆弘は朦朧とした意識の中、すぐ横で倒れている悠に声を掛けた。

「……悠、悠、——返事しろよ……っ」

隆弘は床に這いつくばったまま、悠の乾いた唇にそっと触れた。

指先に微かな呼級が触れる。

——だが返事はなかった。


 閉め切られた部屋には鍵がかかり、繋がれた足枷はどんなに引っ張ってもドアまでは届かない。

手の届く場所には何もない。

それはあの男が、絶対的に自分が必要だと知らしめる為に創った空間———。

あの男が現れなければ、死ぬ様に計算された部屋。


 太陽が照りつける閉ざされた密室は、信じられない程に熱くなり、そこに本当に酸素があるのかさえ疑う程、二人の呼級を奪っていく。

(——逃げなければ。この足を切り離してでも——外へ)

(……そうしなければ悠が死んでしまう)

隆弘は身体を引きずりながら恨めしく扉を見た。

ああもし自分に超能力でもあれば——そんな事を思ったその時、ふいにその扉が小さく開いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ