2???年 ??月 その6
変更履歴
2012/04/18 小題変更 てんかつ! → てんかつ…
2012/05/30 記述分割 声は聞こえて姿も見えるが → 声は聞こえても理解出来ず、また姿が見えても、意思を通わせる事も出来ず
2012/05/30 記述修正 互いに触れることは出来ない → 更に互いに触れることも出来ない
2014/02/14 誤植修正 永住権を持たない使者の魂には → 永住権を持たない死者の魂には
2014/02/14 句読点調整
2014/02/14 改行調整
2014/02/14 区切り行追加
2014/02/14 記述修正 今は昼間らしくて、机のある壁の窓からは → 今は昼間らしく、机に面した壁にある窓からは
2014/02/14 記述修正 明るい日差しが差し込んでいるみたいで → 明るい日差しが差し込んでいるんだけど
2014/02/14 記述修正 眩しくて外の様子は → それが眩し過ぎるせいか、外の様子は
2014/02/14 記述修正 窓の反対側の壁に、白いドアがあって → 振り返ると窓の反対側の壁に白いドアがあり
2014/02/14 記述修正 出入り口はそこしかありません → 見たところ、出入り口はそこだけのようです
2014/02/14 記述修正 ナースコールとかベッドテーブルとか → ナースコールやベッドテーブルとか
2014/02/14 記述結合 病室っぽいものが何もない。 → そういうものが何もないから、
2014/02/14 記述修正 どっちかって言うと、病室って言うよりは → どっちかって言うと
2014/02/14 記述修正 机の上には → そこにあったのは
2014/02/14 記述修正 講習会会場もそうだけど、この部屋も地下のはずなのに → この部屋や講習会会場は地下のはずなのに
2014/02/14 記述修正 窓から外を見ると真っ白に光ってて → それとこの窓、外を見ると真っ白に光ってて
2014/02/14 記述修正 眩しくて何にも見えないんだよね、この窓 → 眩しくて何にも見えないんだよね
2014/02/14 記述修正 隣の部屋に移動しましたが → 隣の部屋に移動すると
2014/02/14 記述結合 昨日はたくさんあった衣装は、ひとつもありません。 → 昨日はたくさんあった衣装が、全部消えていたんですが、
2014/02/14 記述修正 そして相変わらず、頭の上には光る輪が乗っています → 頭の上には光る輪が相変わらず乗っています
2014/02/14 記述修正 出られなくなってたんだ → 出られなくなってたのかも
2014/02/14 記述修正 エレベーターに乗って → 長い廊下を進んでエレベーターに乗り
2014/02/14 記述修正 みんな → わたしに気づいた人たちが皆
2014/02/14 記述修正 わたし目立ってるんだ…… → わたし目立ってるんだ。
2014/02/14 記述修正 すごくいやだなぁ…… → すごくいやだなぁ。
2014/02/14 記述結合 ここには看板が置いてありました。 → ここには看板が置いてあり、
2014/02/14 記述修正 まるで受験の会場みたいだなぁ → まるで受験の会場みたいです
2014/02/14 記述修正 部屋の中はまるで教室のように → 部屋の中はまるで教室のように、奥の壁には窓があり
2014/02/14 記述修正 ドア側を前にして横長の机が4つ並べられていて → ドア側を前にして横長の机が縦4列に並べられ
2014/02/14 記述修正 奥の壁には窓が並んでいます → 長机の前は教壇のように一段高くなっています
2014/02/14 記述修正 机の列は10列以上もあり → 4つの机の列は10列以上もあり
2014/02/14 記述修正 もう半分以上の席は人が座っています → もう半分以上の席は人が座っていました
2014/02/14 記述修正 頭の上を見ているのが、すぐに判ってしまい → 頭の上を見ていることにすぐ気づいたけど
2014/02/14 記述修正 変わらずちらちらと → ずっとチラチラと
2014/02/14 記述修正 何かを言って来る人はいなかったので → 係員の人もいないし、隠しようもないから諦めて
2014/02/14 記述結合 わたしはとにかく、早く講習が始まるのを待っていました。 → とにかく早く講習が始まらないかと待っていると、
2014/02/14 記述修正 係の人らしい、もう見慣れている → もう昨日で見慣れた
2014/02/14 記述修正 その中のひとりの人が真ん中に立って → その中のひとりの人が教壇の真ん中に立つと
2014/02/14 記述修正 黙っていました → それを聞いても驚きはしませんでしたね
2014/02/14 記述修正 だいたい7割くらいが残りました → 7割くらいが残りました
2014/02/14 記述修正 ここへ来れて良かったみたいな挨拶をしたみたいです → ここへ来れて良かったですねみたいな挨拶をしたみたいです
2014/02/14 記述修正 それらは一言で言うと → これらは一言で言うと
2014/02/14 記述修正 わたしにはその違いがどうもよく判りませんでした → わたしにはその違いがどうもよく判りませんでしたね
2014/02/14 記述修正 大きく分けて2種類の人しかいない → 大きく分けて2種類の者しかいない
2014/02/14 記述修正 正式な呼び名は → わたし達の正式な呼び名は
2014/02/14 記述修正 これは業務改善で変わっていて → これも業務改善で変わっていて
2014/02/14 記述修正 昨日は一生懸命、人込みを避けて歩いていたけど → 死者同士が触れないといっても、すり抜けられる訳ではなくて
2014/02/14 記述修正 それって別に気にしなくても良かったのが → ぶつかるギリギリのところに見えない壁があって
2014/02/14 記述修正 ここで初めて判りました → それに弾かれてしまうんだとか
2014/02/14 記述追加 この現象は天使と死者でも起こるんだそうで、
2014/02/14 記述追加 つまり天界では誰にも触れないってことですね。
2014/02/14 記述修正 白い色以外は普通の人間のような姿に変わった → 服の色以外は普通の人間のような姿に変わった
2014/02/14 記述修正 これじゃぜんぜん雰囲気がありません → これじゃちっとも雰囲気がありません
2014/02/14 記述修正 神の業務に支障を来した問題を解決すべく → 神の未来策定業務に支障を来した問題を解決すべく
2014/02/14 記述修正 黙示録の執筆に取り組んでいる為この地に神は不在 → 黙示録の執筆に専念している為この地には不在
2014/02/14 記述修正 銀行とか役所みたい…… → 銀行や役所みたい……
2014/02/14 記述修正 死んだ人間の魂は → 死んだ者達の魂は
2014/02/14 記述修正 何度も死と転生を繰り返して → 何度も死と転生を繰り返し
2014/02/14 記述修正 どれだけ世界に貢献し → どれだけ前世の世界に貢献し
2014/02/14 記述修正 善行を行なって来たかで、その所持額が変わり → 道徳観念に則した善行を行なって来たかで所持額が変わり
2014/02/14 記述追加 天界は完全電子マネー化されてるなんて、
2014/02/14 記述追加 現世より進んでんだなぁ……
2014/02/14 記述修正 この後に → この説明の後に
2014/02/14 記述修正 わたしは『V22537』と表示されていたから → わたしは『V23537』と表示されていたから
2014/02/14 記述修正 22537円 → 23537円
2014/02/14 記述修正 22537ヴィル持っているみたいです → 23537ヴィル持っているみたいです
2014/02/14 記述修正 2000ヴィルするものだったみたいです → 1000ヴィルするものだったみたいです
2014/02/14 記述追加 あぁ、よかった……
2014/02/14 記述修正 わたしは昨日、適当に書いて出した → 昨日わたしが適当に書いて出してしまった
2014/02/14 記述修正 現在の現世を確認して → 現世の状況を確認して
2014/02/14 記述修正 エレベーターに乗り屋上にある会場へ行き → エレベーターに乗って屋上にある会場へ行き
2014/02/14 記述修正 目的とする窓口へ → 該当窓口へ
2014/02/14 記述修正 転生先が見つからなかった場合 → 転生先が決められない場合
2014/02/14 記述修正 転生する対象を決めるために、今の現世のことを → 転生する対象を決める為に、現世のことを
2014/02/14 記述修正 生まれ変わるかを検討して、次の生涯を決めていく → 生まれ変わるかを検討し次の生涯を決める
2014/02/14 記述修正 どれだけ未来を知ってても → 今どれだけ未来を調べても
2014/02/14 記述修正 次に → 最後に
2014/02/14 記述修正 最後に各種手続きでかかる費用の一覧と → 各種手続きでかかる費用の一覧と
2014/02/14 記述追加 へぇ、転生で天使にもなれるのかぁ。
2014/02/14 記述追加 でも天使の試験もけっこう高いなぁ、
2014/02/14 記述追加 こんなに払って、スーツ着たOLみたいな天使になれても、
2014/02/14 記述追加 あんまり嬉しくないかも。
2014/02/14 記述追加 虫 2000ヴィル
2014/02/14 記述修正 なんだろう → 何だろう
2014/02/14 記述修正 この機械は → この機械
2014/02/14 記述修正 この中の光輪能力が → この中の天使の輪が
2014/02/14 記述削除 講習は長かったけど、半日かかった気はしなかったな。
2014/02/14 記述修正 でも、丸1日講習を受けてたのか…… → 丸1日講習を受けてたのか……
2014/02/14 記述結合 明日起きてから考えることにして、2日目は終わりました。 → 明日起きてから考えることにして、
2014/02/14 記述修正 ベッドに入って → ベッドに入っったんですが
??月??日 てんかつ…
体を起こして周りを見てみると、
そこは壁も床も真っ白い病院の個室みたいな場所で、
四畳半くらいの部屋に、白いベッドと小さめの机がありました。
今は昼間らしく、机に面した壁にある窓からは、
明るい日差しが差し込んでいるんだけど、
それが眩し過ぎるせいか、外の様子は良く見えません。
振り返ると窓の反対側の壁に白いドアがあり、
見たところ、出入り口はそこだけのようです。
あの時意識を失って、その後どこかの病院に運ばれたのかなぁ。
でもここ病室にしては、ナースコールやベッドテーブルとか、
そういうものが何もないから、どっちかって言うと、
ビジネスホテルっぽいような……
そう思いながら机を見ると、上に何かあるのに気づきました。
そこにあったのは、ネックストラップのついた、
キャッシュカードみたいなグレーのカードと、
クリアファイルに入った紙、
……は、ありません。
ってことは、昨日のは悪夢じゃなかったんだ。
今回は、エントリーシートの代わりに白い封筒が置いてあって、
中には1枚のメッセージカードが入っていました。
そのカードには、
『下記の道順に従って、講習会会場へ移動して下さい』
と書かれていて、
その下には道順が示してある地図が載っています。
それによると、部屋を出て左に進んでエレベーターに乗って、
B5501059Fで下りると目的地らしいです。
そういえば、昨日帰って来た時は、
もう疲れちゃってたから考えもしなかったけど、
この部屋や講習会会場は地下のはずなのに、
どうして窓があるんだろう。
それとこの窓、外を見ると真っ白に光ってて、
昼間だってことは判るけど、眩しくて何にも見えないんだよね。
うーん、考えてもよく判らないな。
まぁいっか。
さて、じゃあ、行ってみようかな。
この後、わたしはグレーのカードを首に提げてから、
隣の部屋に移動すると、
昨日はたくさんあった衣装が全部消えていたんですが、
頭の上には光る輪が相変わらず乗っています。
この部屋は素通りして、ドアを開けようと、
カードを手に持って廊下に出るドアの前に立ったら、
何故かカードを当てなくてもドアは開きました。
前の時はこの部屋の物に触ったから、
出られなくなってたのかも。
そういえば、これの返品がどうのこうのとか言われてたなぁ。
これって有料で、その清算をドアでしてたのか。
でもこれ、いくらなんだろう。
その辺も今日の説明を聞けば判るんでしょう、きっと。
そう思いながら、長い廊下を進んでエレベーターに乗り、
地下5501059階へと向かいました。
・ ・ ・
エレベーターが止まってドアが開くと、
昨日の会場よりは少ないけど、
駅前の通りくらいに人が歩いていて、
わたしに気づいた人たちが皆、こっちを見て変な顔をしています。
え? なに? なに?
何となく、視線が上にあるような……
あ、そうか、光る輪!
これは、この講習に来る人は本当なら知らないはずだから、
わたし目立ってるんだ。
なんかへんに注目されてて、すごくいやだなぁ。
わたしは早足でエレベーターホールを抜けて、
廊下の入り口に移動しました。
そこからは、さっきまでいた階と同じように、
長い廊下がずっと向こうまで続いているけど、
ここには看板が置いてあり、その看板には、
『カードの末尾10桁を参照して、
該当の部屋に入室してお待ち下さい』
と書いてあります。
この階のドアは全部開いていて、
ドアの横に張り紙があったから、一番手前の部屋を見ると、
やたらと長い数字が上下にふたつ書いてありました。
まるで受験の会場みたいです。
わたしは自分のカードの番号を見ながら、
その範囲内の部屋を探して廊下を進んでいくと、
自分の番号の部屋が見つかったので、中へと入りました。
・ ・ ・
部屋の中はまるで教室のように、奥の壁には窓があり、
ドア側を前にして横長の机が縦4列に並べられ、
長机の前は教壇のように一段高くなっています。
ひとつの長机に2人が座れるみたいで、
4つの机の列は10列以上もあり、
もう半分以上の席は人が座っていました。
ここでもやっぱり、わたしの方を見た人たちは、
頭の上を見ていることにすぐ気づいたけど、
とにかく今はどうしようもないので、
急いで自分の番号の席に座りました。
席についても、ずっとチラチラと変な目で見られてはいるけど、
係員の人もいないし、隠しようもないから諦めて、
とにかく早く講習が始まらないかと待っていると、
この後も次々と人は増えて行き、
やがて部屋にある座席の8割が埋まったところで、
もう昨日で見慣れた上下白のスーツの人たちが数人入って来て、
部屋のドアを閉めました。
で、その中のひとりの人が教壇の真ん中に立つと、
こちらへ向かって話し始めたんです。
「本日は誠にご愁傷さまでした、
そしておめでとうございます。
死者の皆さん、ようこそ天国へ。
貴方達は自覚の有無に関わらず、
現世での生涯を終えてその生涯での功績により、
天界へと来る事が出来た素晴らしい方々です。
これより貴方達迷える魂の、
これからの命題となる転生に関するルールを、
我々天使より説明させて頂きます」
そう言うと、天使の人たちはみんな頭を下げて、
それを聞いたこちら側の人たちは騒然となっていました。
わたしはもう、昨日の出来事を考えると、
多分そう言うことなんだろうなと思っていたから、
それを聞いても驚きはしませんでしたね。
そのうちに、納得出来ないという人たちが、
席を立って怒鳴り始めたのを見て、
天使の人はそれを宥めるように、
「私の今の言葉に対して疑問や異議のある方は、
別室でお話を伺いますので一度退室して頂き、
係の者の指示に従って移動をお願い致します。
私の言葉を了承された方は、
そのまま席についてしばらくお待ち下さい」
と言うと、白いスーツの人のひとりが、
部屋のドアを開けて出て行きました。
文句を言っていた人たちは、それに続いて部屋を出て、
7割くらいが残りました。
静かになったところを見計らって、
「そろそろ講習を続行するので締め切りますが、
宜しいでしょうか? もう居られませんね?
ここに残られた方々はご自身が亡くなっているのを理解し、
天に召された事を承諾したとして再開致します。
お待たせ致しました。
ではこれより転生活動初心者講習を始めます」
と天使の人が言ってから、説明が始まりました。
・ ・ ・
まず最初は、この場所についての話で、
この今いる場所の詳しい説明でした。
説明によると……
わたしが目を覚ました部屋や、今わたしがいる場所は、
カタコンベという所で、意味は地下墓所。
つまり、死者は地中に埋葬されているので、
死者たちの宿泊施設は、全てが地下にあり、
昨日行った屋上にあった会場が、地上になっている。
ここの正式な名前は『第一天ヴィロン』と言い、
7つある天界の中でも最も人間界に近い場所で、
人間界で言うと、ヘルモン山の山中と山頂に該当し、
その土地が人間界からの入り口になっている。
でも今はもうその呼び名は使われず、地下墓所は『部屋』、
山頂である地上は『会場』と呼んでいる。
会場には様々な窓口が用意されていて、
各窓口で必要な申請や手続きを行なう。
本来、会場とは審判の場であって、
かつては全ての死者の魂たちが集い裁かれる場所だった。
だが業務の合理化に伴いシステムが変わり、
天国に来れない人間は予め判定されて、
ここに来る前にいくつかある別の場所へ直接送られてしまう。
……とのことでした。
だから、天使の人は最初にあんな、
ここへ来れて良かったですねみたいな挨拶をしたみたいです。
ここは第一天だとすると、あといくつあるんだろう……
天界以外の世界もあって、それはリンボ(辺獄)と、
プルガトリウム(煉獄)と、ゲヘナ(地獄)だそうです。
地獄ってのは判るんだけど、他のふたつは初めて聞きました。
これらは一言で言うと、辺獄は収容所で、煉獄が刑務所で、
地獄が処分場だそうですが、
わたしにはその違いがどうもよく判りませんでしたね。
・ ・ ・
この次は、この場所に存在する人たちの説明でした。
その説明によると……
ここには、大きく分けて2種類の者しかいない。
ひとつは裁かれる魂である死者で、もうひとつは裁く側の天使。
わたし達の正式な呼び名は、迷える魂や死者であり、
父なる神や天使に平伏すべき者達と言う考え方だったが、
これも業務改善で変わっていて、
今では極力その様な言葉は使わずに、
ゲストとして接客するように義務づけられている。
死者同士は、声は聞こえても理解出来ず、
また姿が見えても意思を通わせる事も出来ず、
更に互いに触れることも出来ない。
それに肉体がないので、怪我や病気もしないし、
飢える事もなく、眠くもならず、老いる事もない。
……だそうです。
死者同士が触れないといっても、すり抜けられる訳ではなくて、
ぶつかるギリギリのところに見えない壁があって、
それに弾かれてしまうんだとか。
この現象は天使と死者でも起こるんだそうで、
つまり天界では誰にも触れないってことですね。
・ ・ ・
死者の説明はこれで終わって、次は天使の説明になりました。
天使の説明では……
天使にはそれぞれ階級があり、
その階級に応じた業務を行なっている。
今この講習の講師をしているのは、
能天使という階級のエクスシアと言う天使。
白い服を着た天使以外に、黒い服の天使もいて、
それは権天使の階級のアルケーと言う天使。
彼らは夜に部屋に戻らなかったり、
滞在費用が尽きている死者を見つけて、
ここから追放する為に見回りをしている。
昔の天使は光っていたり空を飛んでいたりしていたが、
業務改善で不要とされて、
服の色以外は普通の人間のような姿に変わった。
……のだそうです。
天使って、もっときれいで神々しいイメージだったのに、
これじゃちっとも雰囲気がありません。
能天使とか、権天使とか、初めて聞いた、
他にも種類があるのかな。
ちょっと驚いたのは、この場所には神様はいないことです。
その理由は……
死者の魂を裁く審判業務が増大し、
神の未来策定業務に支障を来した問題を解決すべく、
業務見直しやシステム改善を行ない、神から審判業務を分割した。
故に父なる神は、居城である第七天アラボトにて、
黙示録の執筆に専念している為この地には不在。
……と言うわけだそうです。
神様って、すっごい大きなお爺さんが出て来るのを、
期待していたんだけど、それは見れないようです。
仕事が増えたから業務見直しって、
神様って全知全能じゃなかったっけ?
こうなると天国ってただの、銀行や役所みたい……
・ ・ ・
この次に、わたしたちがここですべきことについて、
説明がありました。
天使の人の説明によれば……
死者は、このヴィロンで裁かれるのだが、
それは転生の為の審査の事を指している。
死んだ者達の魂は、新たな生涯を送る為に、
次は何になるのかを決定するのが、ここにいる目的。
そうして何度も死と転生を繰り返し、
多くの徳を集めて天界での永住権を獲得した時、
本当の意味で天に召される事になる。
……と、言われました。
わたしはてっきり、天国に来たらもう、
あとは幸せに暮らすだけなんだと思っていたのに、
世の中そんなに甘くはなくて、
天界に来れただけではそんな暮らしは出来ず、
徳というものをたくさん集めないと、
永住権は手に入らないのだそうです。
・ ・ ・
この後、徳と業についてと、
ここでの通貨について、説明がありました。
その説明では……
徳とは、善行での得点・蓄財。
業とは、悪行での失点・負債。
過去の生涯で、どれだけ前世の世界に貢献し、
道徳観念に則した善行を行なって来たかで所持額が変わり、
多くの善行を重ねた人間は多くの徳を所持し、
逆に悪行を重ねて来た人間は業を溜めてしまう。
この徳と業は、転生しても継承され続ける、
その個人の器量を示す唯一の尺度。
天界での全てのサービスは、この徳を換金し、
それを消費する事で利用可能となる。
通貨としての単位は『ヴィル』で、
記号は“V”に横棒を2本書き足したようなマーク。
物理的な紙幣や貨幣は存在せず、最初に用意されていたカードに、
データとして所持金が記録されていて、
支払も全てカードで行なう。
……だそうです。
天界は完全電子マネー化されてるなんて、
現世より進んでんだなぁ……
・ ・ ・
この説明の後に、現時点での消費額も知らされました。
・転生活動初心者講習 3000ヴィル
・転生ビザ1日分 2000ヴィル
・転生エントリーシート 500ヴィル
転生ビザと言うのは……
滞在許可証と宿泊代が合わさっているもので、
永住権を持たない死者の魂には、ここに滞在する為に必要。
本日の分に関しては、カード配布時に清算済。
翌日分からは、部屋に戻る際に、
ドアを開けた時点で翌日分が清算される。
残高が不足していればドアは開かず宿泊出来なくなり、
同時に転生ビザが失効する。
転生申請済であればその後は転生処理となるが、
そうでない場合、不法滞在者として、
アルケーに捕らえられて追放される。
……とのことでした。
エントリーシートの方は、この講習中に後ほど、
使い方の説明をする時に配布されるそうです。
この後、天使の人たちが回って、
宅配便の人が持っているような機械で、
それぞれの人の残高を確認していました。
わたしは『V23537』と表示されていたから、
多分、23537円、じゃなかった、
23537ヴィル持っているみたいです。
でもこれが多いのか少ないのか、さっぱり判りません。
で、この時に光る輪のことを思い出して、
これを返したいって伝えると、
「判りました、では資産額も修正します」
と言って、天使の人はしばらく機械を触った後に、
もう一度金額を見せてくれました。
今度は、『V24537』に変わっていたから、
あの光る輪は、1000ヴィルするものだったみたいです。
やっぱり、光る輪はお金を払って買ってたのがはっきりしたし、
これで変に注目もされずにすみます。
あぁ、よかった……
・ ・ ・
この次は、具体的な転生の活動についての説明があって、
昨日わたしが適当に書いて出してしまった、
エントリーシートが配られました。
その説明によると……
表の個人の情報欄については、前回の生前の内容を記載する。
裏の転生希望を書く欄は、現世の状況を確認して、
これから先の、いつの、どこの、何の種族になりたいのかを、
具体的に記述する。
書き間違えた場合、記入内容の修正は出来ず、
もう1枚購入しなければならないので注意する。
エントリーシートを記入後、
エレベーターに乗って屋上にある会場へ行き、
会場内にある該当窓口へエントリーシートを提出し、
転生の試験を受ける。
選択した生物に因り、受付の窓口や試験の手順も異なるので、
詳細は情報検索システムや、近くにいる白服の天使に確認する事。
また、転生の活動を行なった結果、
転生先が決められない場合、転生の延期を申請する事も可能。
……なのだそうです。
もしかして、わたしはあんな適当だったから、
ふざけていると思われて、質問攻めにされたのかも……
・ ・ ・
次は転生先についてで、転生する対象を決める為に、
現世のことを色々と調べられるのだそうで……
アポカリプス・システム(黙示録情報検索システム)
・神の記す黙示録をデータベース化した検索システム
・過去から未来に至るまでの現世の様子を調べられる
・端末は会場内の壁面や旗に開いた本の図柄の建物内に設置
・検索速度は現世の現時点から遠ざかる程遅くなる
これを利用して現状を確認し、どの地域の何の種族として、
生まれ変わるかを検討し次の生涯を決める。
……だそうです。
この情報を覚えていれば、
次の人生ですごい得出来るって思ったんですが、
転生すると、今までの記憶はない状態になってしまうから、
今どれだけ未来を調べても、転生後には生かせません。
転生の物件は家や土地と同じで、その価値に比例する、
競争率と難易度に設定されているとか。
そう言われると、昨日の面接のことも思い出して、
天国でも現実は厳しいんだと思い知らされました。
それとこのシステムでは、
その地域にいる種族の数までしか判らなくて、
個人を特定することは出来ません。
だから、わたしの先祖や子孫を調べたりとかは、
無理なのだそうです。
・ ・ ・
最後に、転生や徳に関する色々な講習会やセミナーがあるので、
そこで学習することを勧められてから、
各種手続きでかかる費用の一覧と、
開催中のセミナーの一覧が書いてある紙が配られました。
各種申請費用
・転生申請 1000ヴィル
・転生ビザ申請(1日) 2000ヴィル
・転生延期申請 1000ヴィル
・天使申請 1000000ヴィル
・永住権申請 100000000ヴィル
試験に受かっても、転生申請のお金がなかったら、
転生出来ないんだ。
この、永住権申請の値段って、1億!?
わたしなんて、とても天国には住めないってことだ……
どうやったらそんなに貯まるんだろう。
へぇ、転生で天使にもなれるのかぁ。
でも天使の試験もけっこう高いなぁ、
こんなに払って、スーツ着たOLみたいな天使になれても、
あんまり嬉しくないかも。
各種審査費用
・転生審査(筆記)
人 5000ヴィル
動物 3000ヴィル
虫 2000ヴィル
植物 1000ヴィル
その他 100ヴィル
・転生審査(面接)
人 12000ヴィル
動物 4000ヴィル
虫 2000ヴィル
植物 1000ヴィル
その他 100ヴィル
・天使採用審査 100000ヴィル
・天界永住権取得審査 1000000ヴィル
人だと、転生の試験だけで15000もかかるんだ。
その他って何だろう、カビとか?
安いけどそれになるのはかなりいやだなぁ。
それにしても、永住権は審査を受けるだけでも、
100万もするんだ。
本当に天国に住んでる人っているの?
各種講習・セミナー受講料
・転生活動初心者講習 3000ヴィル
・転生進路相談会 4000ヴィル
・転生適性診断 5000ヴィル
・前歴更生改善セミナー 6000ヴィル
・転生ステップアップセミナー 7000ヴィル
・資産運用セミナー 8000ヴィル
人生死ぬまで勉強だって、誰かが言ってた気がするけど、
まさか死んじゃった後も、勉強しなきゃいけないなんて。
でも、昨日みたいな目に遭いたくないから、
よく考えないといけないかなぁ。
各種購入費用
・エントリーシート購入(1枚) 500ヴィル
・天債購入申請(1口) 10000ヴィル
天債ってのは、天国の国債みたいなものらしくって、
買うと利息がつくのだとか。
そんなのもあるんだなぁ。
各種使用料
・アポカリプス使用料(30分) 100ヴィル
とりあえず現世のことは調べなくちゃいけないよなぁ。
この機械、簡単に使えればいいんだけど、どうなんだろう……
各種衣装料金
・天使の輪 1000ヴィル
・天使の翼 1000ヴィル
・天使の衣 1000ヴィル
・光輪能力 2000ヴィル
・浮遊能力 3000ヴィル
この中の天使の輪が、わたしがつけてたやつだ!
最後の浮遊能力ってのは、空を飛べるんだったら、
ちょっと欲しいかも……
その他購入料金
・生命の樹の果実 1000000ヴィル
・知恵の樹の果実 1000000ヴィル
・マナ 500ヴィル
これに関しては、天使の人から説明があって、
これは全部食べ物ですが、死者は飢えることがないので、
食べなければいけないものではなく、
いわゆる名産品のようなものだそうで……
知恵の樹の果実は、食べると善悪の知識を得られ、
命の樹の果実は、食べれば永遠の命を得る。
マナは、神が飢える人々へと与えた非常食。
2つの果実の効果は死者に関係ないが、
味覚はあるので、これらを味わい堪能することは可能。
……とのことでした。
この果実、エデンの園に生えている、
アダムとイヴが食べたって言う果物だよね。
これって、買えれば食べられるんだ!
どんな味なんだろう、食べてみたいけど。
でも100万って、絶対に買えない値段だ。
マナなら買えるかも知れないから、
お金に余裕があれば、買ってみようかな。
でも、マナって何?
・ ・ ・
こうして、転生活動初心者講習は終わり、
窓の外を見ると、もう夕方になっていました。
丸1日講習を受けてたのか……
この日はそのまま、また目を覚ました部屋へと戻りました。
部屋の窓を見るともう薄暗くなっていて、
もうすぐ夜になろうとしています。
部屋には照明はないから、日が落ちると真っ暗になってしまい、
何も出来ないから、結局眠るしかないみたいです。
とりあえず、これからどうするかは、
明日起きてから考えることにして、
ベッドに入っったんですが、今日のことを思い出しても、
どうしても現実感がないなって、思ってしまいます。
こんなに天国って、夢も希望もない場所なの?
ここまで全部悪い夢でした、なんてオチはないよね、多分。
きっとまた、ここで目が覚めるんだろうなぁ。
などと考えているうちに、いつの間にか眠ってしまい、
そして再びわたしは目覚めました。