2010年 2月 その1
変更履歴
2011/03/31 記述統一 一週間、二日間、三時間 → 1週間、2日間、3時間
2011/04/03 誤植修正 この人、合うたびに違うメガネしているような気がします。 → この人、会うたびに違うメガネしているような気がします。
2011/05/25 記述統一 一つ、二つ、三つ → 1つ、2つ、3つ
2011/05/25 記述統一 一つ → ひとつ
2011/07/20 記述統一 一人、二人、三人 → 1人、2人、3人
2013/04/04 誤植修正 回りの風景が → 周りの風景が
2013/04/04 誤植修正 誤りました → 謝りました
2013/04/04 誤植修正 との提案を、汐月さんで → との汐月さんからの提案で
2013/04/04 誤植修正 逆 → 逆に
2013/04/04 誤植修正 わたしか榊さんに挨拶してから → わたしが榊さんに挨拶してから
2013/04/04 句読点調整
2013/04/04 改行調整
2013/04/04 区切り行追加
2013/04/04 記述統一 友だち → 友達
2013/04/04 記述統一 居る・居ない → いる・いない
2013/04/04 記述修正 お昼休みに → 今日のお昼休みに
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんの容態と → なつめちゃんの様子と
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんは → あの後なつめちゃんは
2013/04/04 記述修正 ヘリで搬送したんだそうです → ヘリで搬送したんだとか
2013/04/04 記述修正 初めて知りました → 初めて知りましたね
2013/04/04 記述修正 学校生活のストレスと → 学校生活でのストレスと
2013/04/04 記述修正 精密検査中だそうで → 精密検査中で
2013/04/04 記述修正 当分は面会謝絶だと言われました。 → 当分は面会謝絶なので、
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんのそばには → なつめちゃんの近くには
2013/04/04 記述修正 姿を見る事は、出来るそうなので → でも姿を見ることくらいは、出来ると聞いて
2013/04/04 記述結合 近いうちに、お見舞いへ行くことにしました。 → お見舞いへ行こうと思い、
2013/04/04 記述修正 車で送迎してもらって欲しい → 車で送迎してもらって来るように
2013/04/04 記述修正 と言われて → 言われて
2013/04/04 記述分割 携帯番号を教えられて、 → 連絡先の携帯番号を教えてもらいました。
2013/04/04 記述削除 そこに連絡するように、言われました。
2013/04/04 記述修正 1人で都心に出て行くのは → 1人で都会に行くのは
2013/04/04 記述修正 かなり不安だったので、安心しました。 → かなり不安だったから、これなら安心です。
2013/04/04 記述修正 送ってもらってから家に帰ってからも → 送ってもらって家に着いてからも
2013/04/04 記述修正 忍さんへ連絡しました → 忍さんへ連絡したんです
2013/04/04 記述修正 電話に出た、忍さんには → 電話に出た忍さんからは
2013/04/04 記述修正 怒ってたり → 怒られたり
2013/04/04 記述修正 また来てくれればいいから → また来てくれればいいと
2013/04/04 記述修正 と、言ってもらえたので → 言ってもらえたので
2013/04/04 記述修正 わたしは、ずっと謝ってばっかりいました。 → わたしはずっと、忍さんに謝ることしか出来ませんでしたね……
2013/04/04 記述修正 考えていました → ずっと考えていました
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんは普通に生きれないほど → なつめちゃんは普通の人と同じように過ごせないほど
2013/04/04 記述修正 その生活を送るために、努力してた → その生活を送る為、努力していた
2013/04/04 記述修正 もう一度 → ……もう一度
2013/04/04 記述修正 どれだけ考えてみても → でも、どれだけ考えても
2013/04/04 記述修正 小さな女の子に → 同い年くらいの小さな女の子に
2013/04/04 記述修正 外国での治療中に負った → 外国での治療中に受けてしまった
2013/04/04 記述修正 精神的に追い込んでしまうことになる → そのせいで、精神的に追い込んでしまうことになる
2013/04/04 記述修正 わたしはそれに対して → それに対して
2013/04/04 記述修正 一番重要で、大切なことだったと思う → 一番大事だったと思う
2013/04/04 記述修正 これを考えて、ぼんやりしてました。 → これを延々と考えて、ボンヤリしてました……
2013/04/04 記述修正 色々考えてみたけど → そして今日までずっと、色々考えてみたけど
2013/04/04 記述修正 迷ってる時間も、ないかも知れないから…… → わたしが迷っている時間すら、ないのかも知れないから……
2013/04/04 記述修正 散々練習で走って、嫌な思い出しかなくなった → もう散々練習で走って、すっかり嫌な思い出しかなくなった
2013/04/04 記述修正 一番嫌いなものになってます → 一番嫌いなものになっています
2013/04/04 記述修正 サイクリングコースを走ります → サイクリングコースです
2013/04/04 記述修正 練習の時と同じで → 練習の時と同じく
2013/04/04 記述修正 ちなみに二年は、普通に登校して → 二年は、普通に学校に登校して
2013/04/04 記述修正 2時間目まで授業を受けてから → 2時間目まで授業を受けた後
2013/04/04 記述修正 マラソン大会はありません。 → マラソン大会はありません……
2013/04/04 記述削除 周りの人たちも、不満そうにしていましたが、
2013/04/04 記述削除 わたしは誰よりも、嫌な顔をしていた自信があります。
2013/04/04 記述修正 全部マラソンへぶつけて → 全部このマラソンへぶつけて
2013/04/04 記述修正 そんなことして体力がもつはずはなくて → そんなことをして体力がもつはずはなくて
2013/04/04 記述修正 2km地点でわたしは倒れてしまい → 2km地点で倒れてしまい
2013/04/04 記述修正 リタイアになりました。 → そのままリタイアです……
2013/04/04 記述修正 ぐるぐる回る視界と → グルグル回る視界と
2013/04/04 記述結合 ずっと考えていました。 → 考えていたら、
2013/04/04 記述修正 まずやれること、と思ったけど → とりあえず、やれることをって思ったけど
2013/04/04 記述修正 分からないことに気づきました → 分からないことに気づいたんです
2013/04/04 記述修正 マラソン大会が終わって → なので、マラソン大会が終わって
2013/04/04 記述修正 あさってに行く事になりました → 明後日に行くことにしました
2013/04/04 記述修正 それからにします。 → それからにしようと思います……
2013/04/04 記述削除 このあたりは、雨が降っていました。
2013/04/04 記述分割 天気予報で言っていましたが、 → 天気予報で言っていました。
2013/04/04 記述修正 待ち合わせの場所へ行くと → 下校時間になり、待ち合わせの場所へ行くと
2013/04/04 記述修正 警護の人が、わたしを見かけて降りてきて → ダークスーツを着た警護の人が降りてきて
2013/04/04 記述修正 ドアを開けてくれたので、ちょっとびっくりしました → ドアを開けてくれたのには、ちょっとびっくりしましたね
2013/04/04 記述修正 ビルばっかりになっていました。 → ビルばっかりに変わっていきます……
2013/04/04 記述修正 高層ビルに近づいて行きました → 高層ビルに近づいて行きます
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんのいる病院だったんだぁ → なつめちゃんのいる病院だった
2013/04/04 記述修正 びっくりしました → びっくりです
2013/04/04 記述結合 地下駐車場入り口、と書いてあるところから入りました。 → 『地下駐車場入り口』と書いてあるところから入り、
2013/04/04 記述修正 車は、広い地下駐車場の地下4階まで降りて行って → 広い地下駐車場の地下4階まで降りて行って
2013/04/04 記述修正 隣に止まっていました → 隣に止まっているのに気づきました
2013/04/04 記述修正 わたしは → この後
2013/04/04 記述修正 とても、広くて遠かったんです → とても広くて、大変でした……
2013/04/04 記述修正 クアッドタワービル、と呼ばれていて → 『クアッドタワービル』と言う
2013/04/04 記述修正 附属病院の全てが入っていて → 附属病院の全てが入っている建物で
2013/04/04 記述修正 4つのビルがその上に建っているんです → 4つのビルがその上に建っている構造になっています
2013/04/04 記述修正 4つのビルが正方形の四隅に立つ → 4つのビルが正方形の四隅に立っている
2013/04/04 記述修正 柱みたいな形をしているのが → ひっくり返った椅子みたいな形をしているのが
2013/04/04 記述修正 聖アンナ医科大学附属病院です。 → 聖アンナ医科大学附属病院です……
2013/04/04 記述追加 なつめちゃんのところへは、
2013/04/04 記述修正 専用パスがないとボタンが反応しない → ガードマンが立っていて、専用パスがないとボタンが反応しない
2013/04/04 記述修正 わたしについている → わたしと一緒だった
2013/04/04 記述修正 わたしは榊さんと一緒に → ここからは榊さんと一緒に
2013/04/04 記述修正 ゲートを通してもらって → 入り口のゲートを通してもらい
2013/04/04 記述修正 病室へ入る許可が出て → 15分だけ面会の許可が出て
2013/04/04 記述修正 看護師さんに → そこの看護師さんに
2013/04/04 記述修正 開かないようになっていました → 開かないようになっています
2013/04/04 記述修正 一時的に与えているそうで → 一時的に与えているらしく
2013/04/04 記述修正 すごいセキュリティだなぁと驚いていると → すごいセキュリティーだなぁと驚いていると
2013/04/04 記述結合 要人が利用するところだからそうです。 → 要人が利用するところだからそうで、
2013/04/04 記述修正 絶対入れない場所でした → 絶対入れない場所なんです
2013/04/04 記述修正 一番奥の角部屋で → そんな場所の一番奥の角部屋で
2013/04/04 記述修正 看護師さんにドアのロックを解除してもらって、
2013/04/04 記述修正 いくつもモニターが付いていて → 器械に付いているモニターには
2013/04/04 記述修正 数字や波形を表示していて → 数字や波形を表示されていて
2013/04/04 記述修正 心拍数を表示しているのもありました → 心拍数を表示しているのもあります
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんは → そんな中でなつめちゃんは
2013/04/04 記述修正 かすかに聞こえてくるだけでした。 → かすかに聞こえてくるだけです……
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんの専任ではないから、ここには来ないそうで → 色々と忙しくて、付きっ切りではないらしく
2013/04/04 記述修正 わたしはじっと → わたしは
2013/04/04 記述修正 殺風景な部屋の中で → 殺風景な小部屋の中で
2013/04/04 記述修正 身動きひとつしないで → 身動きひとつせずに
2013/04/04 記述修正 見つめていました。 → 黙ってじっと見つめていました……
2013/04/04 記述修正 突然、ドアが開く音が聞こえてきて → すると突然、ドアが開く音が聞こえたので
2013/04/04 記述修正 看護師さんが面会時間の終了を告げに来ました → それは看護師さんで、面会時間が終わるとのお知らせでした
2013/04/04 記述修正 時計を見ると、いつの間にか1時間経っていて → もうそんなに経ったのかと思いながら時計を見ると、いつの間にか15分経っていて
2013/04/04 記述追加 もう時間なのか……
2013/04/04 記述追加 あ、そうだ、せっかくの機会だし、ちょっと気になっていたこと、
2013/04/04 記述追加 質問してみよう……
2013/04/04 記述追加 看護師さんに促がされながら病室を出て、
2013/04/04 記述修正 帰る前に → ナースステーションへと向かう途中で
2013/04/04 記述削除 どうして、襲われた時にわたしたちを助けに来れたのか、
2013/04/04 記述修正 どうして今ここに来ているのかを、尋ねました → を尋ねました
2013/04/04 記述削除 ただの運転手さんなら、
2013/04/04 記述修正 あの日も自分からは、助けには入らないだろうし → あの日、襲われてすぐに現れたことや
2013/04/04 記述修正 この場所には、いる必要はないと思ったからで → この場所にいる必要はないはずだから
2013/04/04 記述修正 本当は、運転手じゃないんじゃないですか → 本当は運転手じゃないんじゃないか
2013/04/04 記述修正 そのまま訊きました → そのまま訊いてみたんです
2013/04/04 記述修正 榊さんは → すると榊さんは
2013/04/04 記述修正 わたしに千円を渡して、壁際の自販機を指さして → わたしに千円を差し出すと、壁際の自販機を指さしながら
2013/04/04 記述修正 待っていろと言う意味かなと理解して → 待っていろと言う意味かと理解して
2013/04/04 記述修正 榊さんは、どう答えようか → この時の榊さんは、いつもの仏頂面をさらに嶮しくして、どう答えようかと
2013/04/04 記述修正 出来るだけ協力するようにと、告げられていたそうで → 協力するように言われているそうで
2013/04/04 記述修正 意外とあっさりと → かなり話し辛そうでしたけど
2013/04/04 記述修正 やっぱり運転手ではなくて → やっぱりただの運転手ではなくて
2013/04/04 記述修正 手違いで誰も付いていない時間が出来てしまい → 手違いで誰もいない時間が出来てしまい
2013/04/04 記述修正 そこを偶然に襲撃されたんだそうです。 → そこを偶然に襲撃されたんだとか……
2013/04/04 記述削除 こちらのミスで、危険な目に遭わせてしまい、
2013/04/04 記述修正 申し訳なかった、と頭を下げられたので → そして榊さんから、申し訳ないと頭を下げられたので
2013/04/04 記述修正 もう気にしてないですから → もう気にしてないって
2013/04/04 記述修正 と答えました → 答えました。
2013/04/04 記述修正 すこし溜めがあって → 溜めがあって
2013/04/04 記述修正 とても話しづらそうでした → とても話しにくそうです
2013/04/04 記述修正 正直 → 正直榊さんが
2013/04/04 記述修正 丁寧語とかだと → 常に丁寧語だったとしたら
2013/04/04 記述修正 この命令口調が → この口調が
2013/04/04 記述修正 榊さんは → 話によると、榊さんは
2013/04/04 記述修正 あわせて7年近く → 合わせて7年近く
2013/04/04 記述修正 榊さんに対して態度が違ったのは → 榊さんに対してだけ態度が違ったのは
2013/04/04 記述修正 知っている人だったからなんだ → 知っている人だったからだと
2013/04/04 記述修正 と、ここで納得出来ました → ようやく納得出来ました
2013/04/04 記述修正 話し始めてくれなかったけど → 話してくれなかったけど
2013/04/04 記述修正 話を聞くと、その理由が判りました → なんとか教えてもらえました
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんの持ってる携帯の → 話を聞く前までは、なつめちゃんの持ってる携帯の
2013/04/04 記述修正 それだけでは → それだと、寄り道をしているのは判っても
2013/04/04 記述修正 常に送信している小さな機械が → 常に送信している小さな器械が
2013/04/04 記述結合 体の中に、埋め込まれているのだそうです。 → 埋め込まれていて、
2013/04/04 記述修正 そして、なつめちゃんの行動範囲には → なつめちゃんの行動範囲には
2013/04/04 記述修正 状況をチェックしていたんだそうです → 常に状況をチェックしているんだそうです
2013/04/04 記述修正 誰かから襲撃されているのも、分かったのだそうです。 → 襲撃されているのも、分かっていたんだ……
2013/04/04 記述修正 この盗聴している機械を → この盗聴している器械を
2013/04/04 記述修正 って言う意味だったんだ。 → って言う意味だったんだ……
2013/04/04 記述修正 行われていたとはいえ → 行われていたとは言っても
2013/04/04 記述修正 プライバシーが無いじゃないですか! → プライバシーがないじゃないかと
2013/04/04 記述修正 と、思わず榊さんに文句を言ってしまい → 思わず榊さんに文句を言ってしまい
2013/04/04 記述修正 鬱陶しそうな顔をしていました → ものすごく鬱陶しそうな顔をしていました
2013/04/04 記述追加 あ、これは榊さんのせいじゃない……
2013/04/04 記述修正 わたしはすぐに、榊さんに → わたしはすぐ榊さんに
2013/04/04 記述結合 謝りました。 → 謝ると、
2013/04/04 記述修正 榊さんは窓に目をやると → そして榊さんは窓に目をやると
2013/04/04 記述結合 まだ小さかったけど、粉雪が舞っていました。 → 粉雪が舞っているのが見えたので、
2013/04/04 記述修正 下へと落ちていくのが見えました → 下へと落ちていくのが見えます
2013/04/04 記述修正 どこかで見た気がする。 → どこかで見た気がする……
2013/04/04 記述分割 夜ではなくて、外は明るかった、 → 夜じゃなくて、外は明るかった……
2013/04/04 記述分割 見てたような、 → 見てたような……
2013/04/04 記述分割 男の子、 → 男の子……
2013/04/04 記述分割 見下ろしてた、 → 見下ろしてた……
2013/04/04 記述分割 座ってた、 → 座ってたんだ。
2013/04/04 記述分割 喋ってない、 → 喋ってない……
2013/04/04 記述分割 聞いてない、 → 聞いてない……
2013/04/04 記述分割 器械につながってた、 → 器械につながってた……
2013/04/04 記述修正 声が出せない男の子だったんだ → そうだ、声が出せない男の子だったんだ
2013/04/04 記述分割 何かしていた気がする、 → 何かしていた気がする……
2013/04/04 記述分割 何かしてたような、 → 何かしてたような……
2013/04/04 記述修正 男の子と手を繋いで → 男の子と手を繋ぎながら
2013/04/04 記述削除 もう、それは忘れちゃってて、思い出せないけど、
2013/04/04 記述修正 この病院だった? → この病院だった……?
2013/04/04 記述修正 思い出せない。 → 思い出せない……
2013/04/04 記述修正 どこだったんだろう → どこだったっけ
2013/04/04 記述修正 頭の隅に引っかかっていたのを、思い出して → 頭の隅に引っかかっていたものが
2013/04/04 記述修正 それが、やっと思い出せて → ようやく思い出せて
2013/04/04 記述修正 思い出せませんでした。 → 思い出せませんでした……
2013/04/04 記述修正 と、榊さんに → 榊さんから
2013/04/04 記述結合 わたしは我に返りました。 → わたしは我に返って、
2013/04/04 記述修正 時間を確認すると → すぐに時間を確認すると
2013/04/04 記述修正 わたしは榊さんに → この後わたしは榊さんに
2013/04/04 記述修正 ここまで車で送ってもらった → わたしの
2013/04/04 記述修正 小さなメモを渡されました → 小さなメモを渡されたんです
2013/04/04 記述修正 わたしは思いました → 思います
2013/04/04 記述修正 わたしはお礼を伝えて、帰って来ました。 → わたしは榊さんにお礼を伝えて、乗ってきた車で病院を後にしました……
2013/04/04 記述修正 もう、アパートの前でした → もうアパートの前に着いていました
2013/04/04 記述結合 家に入りました。 → 家に入り、
2013/04/04 記述修正 時間を見ると、行きよりも早くて → 時間を確認したら、行きよりも早かったらしく
2013/04/04 記述修正 9時半でした → まだ9時半でした
2013/04/04 記述修正 家に着いたら、すぐに母に連絡して → 家に入ったらすぐに母に連絡して
2013/04/04 記述修正 父の入院していた病院を確認してみたら → 父の入院していた病院を確認してみると
2013/04/04 記述修正 聖アンナでした。 → 聖アンナでしたね……
2013/04/04 記述修正 あの病院に通っていたのは間違いありません → あの病院に通っていたのは間違いないです
2013/04/04 記述修正 やっぱりありません。 → やっぱりありません……
2013/04/04 記述分割 話が出来るんだろう、 → 話が出来るんだろう。
2013/04/04 記述分割 あのガラス部屋から出られるんだろう、 → あのガラス部屋から出られるんだろう。
2013/04/04 記述修正 いくつか解けて良かったです。 → いくつか解けてよかった……
2013/04/04 記述修正 まだ → でもまだ
2013/04/04 記述修正 何も出来ないかも知れないなぁ…… → 何も進まないかも知れないなぁ……
2013/04/04 記述追加 今日は日曜なのに、朝からソワソワしてしまって、
2013/04/04 記述追加 ちっとも落ち着きません……
2013/04/04 記述修正 お見舞いの翌日に → それと言うのも、お見舞いの翌日に
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんのことについて → なつめちゃんのことで
2013/04/04 記述結合 会って話がしたい、と言われました。 → 会って話がしたいと言われて、
2013/04/04 記述修正 つまり今日、会う事になりました → つまり今日、会うことになったんです
2013/04/04 記述修正 お昼ごろアパートの前に → お昼ごろになって、アパートの前に
2013/04/04 記述修正 覚えてました → たまたま覚えていたんです
2013/04/04 記述修正 別の人が降りてくるんじゃないかと、思ったけど → 全然関係ない人かもって、ちょっと思ったんですが
2013/04/04 記述修正 ダークスーツ姿の汐月さんでした → ダークスーツ姿の汐月さんでしたね
2013/04/04 記述修正 会うたびに違うメガネしているような気がします → 会うたびに違うメガネをかけているような気がします
2013/04/04 記述修正 こっちに気づいた汐月さんに → 車を降りてすぐこっちに気づいた汐月さんに
2013/04/04 記述修正 ドアを閉めて、下に降りました → そちらへと向かいました
2013/04/04 記述修正 汐月さんに、車かわいいですね、と言うと → 汐月さんに、車のことを尋ねると
2013/04/04 記述修正 ちょっと笑って、これ、結構気に入ってるの → この車が汐月さんの愛車だと教えてくれたんですが
2013/04/04 記述修正 と、まんざらでもない感じの笑顔で、答えてくれました → その時の普段とは違う様子から、かなり気に入っているのが、よく判りましたね
2013/04/04 記述修正 ドライブに出発しました → 早速ドライブに出発しました
2013/04/04 記述修正 本来の目的を忘れて → わたしは本来の目的をすっかり忘れて
2013/04/04 記述修正 一般道で、渋滞に巻き込まれると困るから → 一般道だと、渋滞に巻き込まれて困るから
2013/04/04 記述修正 いつも高速を走るのだそうです → いつも高速を走ることにしている、とのこと
2013/04/04 記述修正 近場のサービスエリアとかは → 近場のサービスエリアに
2013/04/04 記述修正 汐月さん、無駄に頭を使ってる気がします。 → それって何だか、無駄に頭を使ってる気がする……
2013/04/04 記述修正 汐月さんは、高速に入ってすぐに → 車は高速に入ってすぐに
2013/04/04 記述修正 サービスエリアに入りました → 最初に出てきたサービスエリアに入りました
2013/04/04 記述修正 もう着いたのかなと思ったら → もう着いたのかと思ったら
2013/04/04 記述修正 天井を指さしてました。 → 天井を指さしたんです
2013/04/04 記述移動 この車、オープンカーになるんですか!?
2013/04/04 記述修正 オープンカーになるんですか!? → オープンカーになるの!?
2013/04/04 記述削除 と、思わず聞き返してしまいました。
2013/04/04 記述修正 思ってませんでした。 → 思わなかった……
2013/04/04 記述修正 自動で → すぐに自動で
2013/04/04 記述修正 たたまれた幌を見ていました。 → たたまれた幌が入った、後ろのトランクを見ていましたね……
2013/04/04 記述修正 改めて目的地に向けて出発しました。 → 改めて目的地に向けて出発しました!
2013/04/04 記述修正 オープンカーになんて → オープンカーなんて
2013/04/04 記述修正 車なんだから → それは走っている車なんだから
2013/04/04 記述修正 思いませんでした! → 思いませんでしたね。
2013/04/04 記述分割 自分で車買う時は、絶対こういうのにしよう、 → 車を買う時は、絶対こういうのにしよう……
2013/04/04 記述削除 って思いました。
2013/04/04 記述修正 わたしが → そうやってわたしが
2013/04/04 記述修正 汐月さんは、笑っていました。 → 汐月さんは、笑っていた気がします……
2013/04/04 記述修正 結構空いていました → 結構空いていましたね
2013/04/04 記述修正 本題の話に入りました。 → 本題の話に入りました……
2013/04/04 記述修正 実際に見て、判ったとは思うけど → 実際にICUを見て
2013/04/04 記述修正 ICUに、あのガラス張りの部屋のことね → あのガラス張りの部屋の事ね
2013/04/04 記述追加 判ったと思うけど、彼女は今、
2013/04/04 記述修正 棗さんは緊急入院後に → 棗さんは緊急搬送後に
2013/04/04 記述修正 緊急措置を施した後で → 応急措置を施した後で
2013/04/04 記述修正 面会も許可されます → 面会も許可される筈です
2013/04/04 記述修正 前回と同じように → 前回と同じ様に
2013/04/04 記述修正 様子を見ることしか出来ません → 様子を見る事しか出来ません
2013/04/04 記述修正 許可がおりたら → 許可が下りたら
2013/04/04 記述修正 汐月さんは → すると汐月さんは
2013/04/04 記述修正 棗さんの安全は保障出来ない → 棗さんの安全は保障出来ないし
2013/04/04 記述修正 あれでも足りないくらいだ、とわたしに説明しました → あれでも足りないくらいだった、言ったんです
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんのプライバシーは、どうなるんですか → なつめちゃんのプライバシーはどうなるのかと
2013/04/04 記述移動 とちょっと感情的になって聞くと、
2013/04/04 記述修正 とちょっと感情的になって聞くと → それを聞いたわたしは、思わず感情的になってしまい
2013/04/04 記述追加 すぐに言い返しましたが、
2013/04/04 記述修正 彼女は自分のプライバシーよりも → 「彼女は自分のプライバシーよりも
2013/04/04 記述修正 貴方と再会することを取ったのよ → 貴方と再会する方を選んだのよ」
2013/04/04 記述修正 わたしは何も言えなくなりました。 → わたしはもう何も言えませんでした……
2013/04/04 記述修正 そんなに、彼女のことを想っているのなら → そこまで、彼女の事を想っているのなら
2013/04/04 記述追加 え、今日が、なつめちゃんの、誕生日?
2013/04/04 記述修正 今日が、なつめちゃんの誕生日だなんて → そんなの
2013/04/04 記述修正 全然知らなかった。 → ちっとも知らなかった……
2013/04/04 記述修正 わたしはなつめちゃんのいる、あの部屋の中には → わたしはそれを聞いて、なつめちゃんのいるあの部屋の中には
2013/04/04 記述修正 そんなことないけど → そんな事はないのだけど
2013/04/04 記述修正 何もかも終わったというか → 全てが終わったみたいに
2013/04/04 記述修正 諦めたように無気力になっていてね → 諦めた様に無気力になっていてね
2013/04/04 記述修正 体調悪化は、その無気力を改善しないと → 体調の悪化は、その無気力を改善しなければ
2013/04/04 記述修正 良くはならないと見ているわ → 回復しないでしょうね
2013/04/04 記述修正 そういう意味で、貴方のプレゼントは → そう言った意味で、貴方からのプレゼントは
2013/04/04 記述修正 改善効果が見込めると思うのよ → 状況を好転させる効果が見込めると思うのよ
2013/04/04 記述追加 とのこと。
2013/04/04 記述追加 誕生日のプレゼント、か、だったら……
2013/04/04 記述追加 そしたら、
2013/04/04 記述修正 専用の宅配サービスに頼んでいるくらい → 専門の宅配サービスで対応していて
2013/04/04 記述修正 カロリーとか、使える調味料の量とか → カロリーや、使える調味料の量等も
2013/04/04 記述修正 現実的にはかなり難しいと思う → 現実的にはかなり難しいと思うわ
2013/04/04 記述修正 ならないような気がするけど → ならない気がするけど
2013/04/04 記述修正 手配された材料以外は → 用意された材料以外は
2013/04/04 記述修正 絶対に加えないこと → 絶対に加えない事
2013/04/04 記述修正 加えないで → 加えては駄目
2013/04/04 記述修正 勘違いしないで欲しいのは → ひとつ勘違いしないで欲しいのは
2013/04/04 記述修正 私は貴方を棗さんの治療に → 私は貴方が棗さんの治療に
2013/04/04 記述修正 唯一の親友でなくなること → 唯一の親友でなくなる事
2013/04/04 記述修正 特別な人でなくなることを → 特別な人でなくなる事を
2013/04/04 記述修正 今のなつめちゃんには → 今のなつめちゃんから
2013/04/04 記述修正 という本心を聞いたし → と言う本心を聞いたし
2013/04/04 記述結合 わたしもそうしてあげたい。 → わたしもそうしてあげたい、
2013/04/04 記述修正 全然意味が分かりません。 → 全然意味が分かりません……
2013/04/04 記述修正 3月中には → 3月中までに
2013/04/04 記述修正 すぐに高速を降りて → 1つ目の出口で高速を降りると
2013/04/04 記述修正 入り直して → すぐにまた入り直して
2013/04/04 記述結合 大人しくじっとしていました。 → 大人しくじっとしていたんですが、
2013/04/04 記述修正 で、運転している汐月さんを見てた時に → 運転している汐月さんを見てた時に
2013/04/04 記述修正 白い花が差してあるのに気づきました → 白い花が差してあるのに気づいたんです
2013/04/04 記述修正 いつも通りのわたしに戻れました → いつも通りのわたしに戻れましたね
2013/04/04 記述修正 なつめちゃんにしてあげよう、と思いました → なつめちゃんにしてあげるつもりです
2013/04/04 記述修正 探そうと思います。 → 探そうと思います……
2月1日 なつめちゃんの容態
今日のお昼休みに、汐月さんから連絡があって、
なつめちゃんの様子と、今後のことを教えてもらいました。
あの後なつめちゃんは、今までずっと入院生活を送ってきた、
特別病棟にある、なつめちゃん専用の病室に、
搬送されたそうです。
その病院は、汐月さんがいる聖アンナ医科大学附属病院で、
都心にある病院だから、すごく遠いんじゃないかと思ったら、
ヘリで搬送したんだとか。
この大学病院の院長は、なつめちゃんのお父さんで、
なつめちゃんは、院長先生の一人娘だったのも、
この時、初めて知りましたね。
で、肝心の容態については、
学校生活でのストレスと、通院と自宅療養による、
万全とは言えない簡易治療のせいで、
病気は再発の傾向にあって、予断を許さない状況だそうです。
今はICUに入っていて、精密検査中で、
当分は面会謝絶なので、なつめちゃんの近くにはいけないけど、
でも姿を見ることくらいは出来ると聞いて、
お見舞いへ行こうと思い、入院している場所について確認すると、
警護役の人に、車で送迎してもらって来るように言われて、
連絡先の携帯番号を教えてもらいました。
正直、場所を教えてもらっても、
1人で都会に行くのは、すぐに迷子になりそうで、
かなり不安だったから、これなら安心です。
家に帰ってから、これまでの日々について、
改めて思い返していました……
・ ・ ・
あの日、送ってもらって家に着いてからも、
外出する気になれなくて、先週の土日はずっと家にいました。
土曜日は、バイトの日だったけど、
今バイトに行っても、何も出来そうもないから、
そっちの方がもっと迷惑になると思って、
しばらくの間、お休みさせてもらうことにしました。
そんなこと言ったら、クビになっちゃうかも知れない、
ていう不安もあったけど、それはもう仕方ないと諦めて、
忍さんへ連絡したんです。
電話に出た忍さんからは、怒られたり、
もう来なくていい、みたいなことは全く言われなくて、
とにかくすごく心配されてしまい、来れるようになったら、
また来てくれればいいと言ってもらえたので、
なんだかとても申し訳なく感じて、わたしはずっと、
忍さんに謝ることしか出来ませんでしたね……
今週末は、わたしの気持ちとおんなじような、
冷たい雨続きで、わたしは何気なく窓の外の、
雨空の風景を、ぼんやりと眺めながら、
あの2日間で起こったことを、ずっと考えていました。
下校途中で知らない人たちに、襲われそうになったこと。
これが、なつめちゃんの病状を悪化させたのかもって、
最初は思ったけど、汐月さんの話ではそうじゃなかった。
なつめちゃんの、体調悪化の原因は、
無理して退院して過ごしていた、学校生活だったんだ。
なつめちゃんは普通の人と同じように過ごせないほど、
体がボロボロなのに、無理してがんばって、
その生活を送る為、努力していた。
その理由は、わたしだった。
わたしに、本当の自分を知って欲しかったから。
そう思った理由は、前の時に、
それを言わずに過ごして後悔したから。
前の時は、わたしと遊びたくて、
もう一度会いたくて、転校してきたって言ってた。
……もう一度、会いたい?
わたしは、なつめちゃんとそれより前に会っている?
でも、どれだけ考えても、わたしには、
なつめちゃんみたいな、同い年くらいの小さな女の子に、
出会っていた記憶がない。
もう1つ、なつめちゃんの心の傷のこと。
外国での治療中に受けてしまった、心の傷が、
名前を呼ばれることに、結びついてしまっている。
わたしは、昔のように仲良くしたいからこそ、
昔の呼び名で、呼び合いたかったけど、
そうすれば、なつめちゃんは、
前の治療の時の、嫌な記憶を思い出してしまい、
そのせいで、精神的に追い込んでしまうことになる。
今のなつめちゃんの、状況を考えると、
これ以上、余計な負荷を与えることは出来ない。
もう、昔のように呼ぶのは無理かも知れない……
そんなことよりも、あの告白の最後の言葉、
あの最後の質問が、なつめちゃんの素直な心からの言葉で、
それに対して答えてあげられたことが、一番大事だったと思う。
わたしは、なつめちゃんと約束したんだ、ずっと親友でいると。
これを守るためには、わたしはなつめちゃんに、
何をしてあげればいい?
なつめちゃんは、わたしに何をしてほしいと望んでいる?
なつめちゃんに、わたしがしてあげるべきことって何?
わたしはずっと、雨音を聞きながら、
これを延々と考えて、ボンヤリしてました……
・ ・ ・
そして今日までずっと、色々考えてみたけど、
思いつくものはどれも、そんなことではないような気がして、
どうも、よく分かりませんでした。
だから、とにかく、出来ることを、
片っ端から、やってみようと思います。
もう、なつめちゃんには、わたしが迷っている時間すら、
ないのかも知れないから……
2月2日 マラソン大会
もう散々練習で走って、すっかり嫌な思い出しかなくなった、
マラソン大会の当日になりました。
この前、襲われた時に逃げられなかったのは、
この練習で足を挫いてたからとも思えて、
今のわたしには、一番嫌いなものになっています。
でもサボる訳にもいかないので、すごく嫌だけど参加しました。
本番のコースは、これまた因縁を感じる、
噴水公園にあるサイクリングコースです。
走る距離は練習の時と同じく、
男子は10km、女子は7kmで、
スタートが、男女でずれていて、
ゴール地点は、同じところにあります。
一年が一番最初で、8時半に公園に直接集合して、
先生からの挨拶とコースの説明の後、
準備運動をして、9時からスタートです。
二年は、普通に学校に登校して、
2時間目まで授業を受けた後、学校からここに移動します。
三年は、マラソン大会はありません……
わたしは最近起きた、いろんな出来事の苛立ちを、
全部このマラソンへぶつけて、最初から全力で走りました。
もちろん、そんなことをして体力がもつはずはなくて、
1kmも持たずに失速して、2km地点で倒れてしまい、
そのままリタイアです……
・ ・ ・
救護テントの下で、ぐるぐる回る視界と、
吐き気を我慢して寝ていた時、
なつめちゃんが受けてきた、治療の苦しみは、
こんな程度じゃなかったんだろうなと思いました。
そして、ここで休んでいる間も、
なつめちゃんのことを、ずっと考えていたら、
とりあえず、やれることをって思ったけど、
その前に、なつめちゃんの様子を見なければ、
何が出来るのかさえ、分からないことに気づいたんです。
なので、マラソン大会が終わって学校に戻ってから、
昼休みに、汐月さんに教えてもらった番号へ連絡して、
お見舞いに行きたいことを伝えて、予定を確認してもらい、
明後日に行くことにしました。
まずは、なつめちゃんに会いに行ってきます。
色々考えるのは、それからにしようと思います……
2月4日 お見舞いと初雪
今日は、おとといから待っていた、
なつめちゃんのところに、お見舞いに行く日なのに、
今年度一番の寒い日で、場所によっては、
初雪が見られるかも知れないと、天気予報で言っていました。
わたしは、少しでも早く行きたかったので、
学校の近くまで、迎えに来てもらいました。
下校時間になり、待ち合わせの場所へ行くと、
黒塗りのハイヤーみたいな車が止まっていて、
ダークスーツを着た警護の人が降りてきて、
ドアを開けてくれたのには、ちょっとびっくりしましたね。
・ ・ ・
車は走り出すと、30分くらいで高速に入りました。
周りの風景が、最初は山ばっかりだったのが、
いつの間にか、ビルばっかりに変わっていきます……
1時間くらい走って、高速を降りたら、
もうそこは、普段の地元とは大違いの大都会でした。
久しぶりの都会で、あちこち眺めていたら、
大きな河沿いにある、高層ビルに近づいて行きます。
もう少しで、そのビルの下というところで、
赤信号になって止まり、その信号の名前を見ると、
『聖アンナ医科大学正門前』と書いてあって、
この高層ビルが、なつめちゃんのいる病院だったと分かって、
びっくりです。
車は、正面入り口を通り越して、
『地下駐車場入り口』と書いてあるところから入り、
広い地下駐車場の地下4階まで降りて行って、
そこにあった、専用の駐車スペースに止まりました。
わたしが車を降りると、何度か乗せてもらった、
なつめちゃんの車が、隣に止まっているのに気づきました。
この後、警護の人に案内されて、
なつめちゃんのところへと、向かったんですが、
とても広くて、大変でした……
この高層ビルは『クアッドタワービル』と言う、
聖アンナ医科大学と、附属病院の全てが入っている建物で、
地下と地上5階までは1つのビルで、そこから上は、
4つのビルがその上に建っている構造になっています。
聖アンナ病院がある、南側の30階建ての病院棟、
医科大学がある、東側の25階建ての大学棟、
研究機関のある、西側の25階建ての研究棟、
あとは、学生や職員の家がある、北側の20階建ての寮棟、
この、4つのビルが正方形の四隅に立っている、
ひっくり返った椅子みたいな形をしているのが、
聖アンナ医科大学附属病院です……
・ ・ ・
なつめちゃんのところへは、
まず、地下4階からエレベーターで、地上1階まで上がって、
それから、1階の総合受付があるロビーを通って、
6階まで上がる長いエスカレーターに乗って上がって、
6階の屋上にある病院棟のビルの入り口に入って、
病院棟受付のあるロビーを通り過ぎて、
ガードマンが立っていて、専用パスがないとボタンが反応しない、
なつめちゃんのいる特別病棟に行く、
特別病棟直通エレベーターの前に来ました。
そこには榊さんが待っていて、
わたしと一緒だった警護の人では、
この上には入れないらしくて、
警護の人はこの階で待っていてもらい、
ここからは榊さんと一緒に、直通エレベーターに乗って、
一気に30階に上がって、
特別病棟受付で、汐月さんが取っておいてくれた、
わたしのアポイントの確認と、
身体チェックと持ち物チェックを受けて、
入り口のゲートを通してもらい、
特別病棟ナースステーションの前に来ました。
このナースステーションでは、
アポイント以外に、会いに来た患者の状況で、
面会を許可するかを、最終的に判断して決めているようで、
榊さんと一緒にしばらく待っていると、
15分だけ面会の許可が出て、そこの看護師さんに、
病室へ案内してもらいました。
病室のドアは、榊さんの専用パスでも開けられず、
看護師さんの持っている、カードキーがないと、
開かないようになっています。
更にそのカードキーは、ナースステーションで、
このドアを開ける許可を、一時的に与えているらしく、
すごいセキュリティーだなぁと驚いていると、
この特別病棟の利用者は、政治家などの、
要人が利用するところだからそうで、
一般市民の、単なる学生でしかないわたしでは、
本来なら絶対入れない場所なんです。
なつめちゃんの病室は、そんな場所の一番奥の角部屋で、
看護師さんにドアのロックを解除してもらって、
わたしと榊さんが中に入りました。
・ ・ ・
病室の中は、広い部屋に空のベッドが1つと、
多分、トイレとかお風呂とかがありそうなドアと、
ガラスで仕切られた小さい部屋の中に、もう1つベッドがあって、
この中に、なつめちゃんはいました。
その小部屋の中には、
マンションで見たより、もっとたくさんの器械が、
ベッドの周りに置いてあって、何本ものチューブや線が、
なつめちゃんと器械を繋いでいました。
器械に付いているモニターには、
何か良く分からない、数字や波形を表示されていて、
その中には前に見た、心拍数を表示しているのもあります。
そんな中でなつめちゃんは、眠っているのか全く動かなくて、
ガラスの向こうで鳴っている器械の音が、
かすかに聞こえてくるだけです……
わたしは榊さんに、なつめちゃんには、
いつ話せるようになるかを尋ねましたが、
それは、榊さんも知らないとのことで、
病状については、やっぱり汐月さんでないと、
判らないようです。
その汐月さんなんですが、この病院内では、
色々と忙しくて、付きっ切りではないらしく、
今日は直接会って、話を聞けそうにないのが判りました。
わたしは、医療機器に囲まれて、
それ以外は何もない、殺風景な小部屋の中で、
身動きひとつせずに眠り続けている、
なつめちゃんを、黙ってじっと見つめていました……
すると突然、ドアが開く音が聞こえたので、
びっくりしてドアの方を見ると、
それは看護師さんで、面会時間が終わるとのお知らせでした。
もうそんなに経ったのかと思いながら時計を見ると、
いつの間にか15分経っていて、もう7時を回っていました。
もう時間なのか……
あ、そうだ、せっかくの機会だし、
ちょっと気になっていたこと、質問してみよう……
・ ・ ・
看護師さんに促がされながら病室を出て、
ナースステーションへと向かう途中で、わたしは榊さんに、
今まで疑問に思っていたことを尋ねました。
あの日、わたし達が襲われてすぐに現れたことや、
今のなつめちゃんは、動けないので、
この場所にいる必要はないはずだから、
本当は運転手じゃないんじゃないかと、
思っていたことを、そのまま訊いてみたんです。
すると榊さんは、
「……話す前に、一服させてくれ」
とわたしに言ってから、談話室に向かって、
わたしに千円を差し出すと、壁際の自販機を指さしながら、
「……ちょっと待ってろ」
と言い残して、喫煙室に入りました。
榊さんが言いたいのは、飲み物をおごるから、
タバコを吸い終わるまで、待っていろと言う意味かと理解して、
自販機でお茶を買って、飲みながら待っていると、
榊さんが、喫煙所から出てきました。
この時の榊さんは、いつもの仏頂面をさらに嶮しくして、
どう答えようかとちょっと困っているようでしたが、
汐月さんからの指示で、
わたしがなつめちゃんのことを尋ねた時には、
カウンセリングの一環として、
協力するように言われているそうで、
かなり話し辛そうでしたけど、話してくれました。
・ ・ ・
榊さんは、やっぱりただの運転手ではなくて、
本当は、なつめちゃんの専属の警護の人で、
基本的に24時間、なつめちゃんを守るのだそうです。
あの日は、別の人間が警護役としてついているはずが、
手違いで誰もいない時間が出来てしまい、
そこを偶然に襲撃されたんだとか……
そして榊さんから、申し訳ないと頭を下げられたので、
わたしは、もう気にしてないって答えました。
榊さんの口調は、想像していた通りで、
無口で、無骨で、言葉数が少なくて、
必ず話し初めに溜めがあって、
話すテンポが、掴みづらい話し方をします。
わたしから見ると、必要最低限の言葉を選びながら、
話をしているみたいです。
多分大人の人とは、普通に会話する事が出来るんだろうけど、
わたしみたいな、子供を相手にして話すのは慣れてなくて、
わたしに分かるように、話そうとしているようで、
とても話しにくそうです。
正直榊さんが、ものすごくおしゃべりな人だったら、
逆にすごくショックを受けていたと思うので、
想像通りでよかったです。
それと榊さんは、常に命令口調で話します。
もし学校の先生がこうだったら、相当イラつきそうだけど、
榊さんだと、ある意味当然と言うか、
常に丁寧語だったとしたら、逆に変にしか見えそうもなくて、
この口調が、一番合っているように思えました。
話によると、榊さんは、
なつめちゃんが5歳の頃から警護をしていて、
海外に治療に行くまでの5年間と、
なつめちゃんが、日本に戻ってからの、
合わせて7年近く、警護をしているのだそうです。
前に、海に行った時に感じた、
なつめちゃんが、榊さんに対してだけ態度が違ったのは、
小さい頃から、知っている人だったからだと
ようやく納得出来ました。
あの襲われた時に、どうして助けに来れたかについては、
なかなか、話してくれなかったけど、
なんとか教えてもらえました。
話を聞く前までは、なつめちゃんの持ってる携帯の、
GPS機能なのかなと、わたしは思っていたのですが、
それだと、寄り道をしているのは判っても、
襲われているのは分からないはずです。
何故そこまで分かるのかは、実はなつめちゃんには、
退院して通学を許可する条件として、
いつでも体調の異変を検知して、即対応出来るように、
体の中に、脈拍、呼吸、血圧、体温と、
なつめちゃんの声を含む、周囲の音声を、
常に送信している小さな器械が、埋め込まれていて、
なつめちゃんの行動範囲には、この情報を受信する担当の人が、
その受信装置を積んだ車で、近くに待機していて、
24時間、常に状況をチェックしているんだそうです。
だから、あの時になつめちゃんが、
ほとんど意識がなくなっていたのも、分かったし、
襲撃されているのも、分かっていたんだ……
なつめちゃんが、告白した時に、
汐月さんにお願いしていた、意味が判らなかった言葉は、
この盗聴している器械を、止めておいて欲しい、
って言う意味だったんだ……
なつめちゃんの同意の上で、行われていたとは言っても、
これじゃ、なつめちゃんには、
プライバシーがないじゃないかと、
思わず榊さんに文句を言ってしまい、
榊さんは、ものすごく鬱陶しそうな顔をしていました。
あ、これは榊さんのせいじゃない……
わたしはすぐ榊さんに、
筋違いの文句を言ってしまったことを謝ると、
榊さんは、気にするなと言うように、
右手を上げて、わたしを制しました。
「……雪が降ってきたな」
そして榊さんは窓に目をやると、そうつぶやきました。
わたしもその言葉につられて、窓を見ると、
粉雪が舞っているのが見えたので、
わたしは窓際へ行って、窓から外を眺めました。
都心のきれいな夜景の中に、
細かい雪の粒が、風に流されながら、
下へと落ちていくのが見えます。
この雪が落ちていく景色、どこかで見た気がする……
それは、夜じゃなくて、外は明るかった……
たしか、だれかと一緒に、見てたような……
青いパジャマを着た、坊主頭の、男の子……
わたしは、その男の子を、見下ろしてた……
わたしより、小さい子だった?
ちがう、その男の子は、座ってたんだ。
ええと、そうだ、車椅子だ、車椅子に座ってて、
足の悪い、歩けない男の子だった。
男の子は、何か言って、ない、喋ってない……
わたしは、その子の声、聞いてない……
男の子は、喉に、チューブがついてて、
車椅子についてる、器械につながってた……
そうだ、声が出せない男の子だったんだ。
わたしは、その男の子と、何度か会ってた、
いつも、わたしが、喋っているだけで、
男の子は、いつも、わたしの話を、聞いていた、だけ?
いや、そうじゃない、いつも、何かしていた気がする……
なんだろう、ええと、男の子は、何かしてたような……
ああ、手だ、自由に動かせたのが、手だけだったから、
いつも、手を繋いでたんだ。
わたしは、男の子と手を繋ぎながら、
いろんな話を、聞かせてたんだ。
その男の子が、わたしを好きだと、思ってたんだっけ?
それとも、わたしが男の子を、好きだったのかな?
それが、この病院だった……?
分からない、それがどこだったのか、思い出せない……
わたしが小さい頃に、病院に行ったのは、
父が入院していた時、幼稚園に入る前の頃だ。
父のお見舞いに、行った時のこと?
父の入院していた病院は、どこだったっけ。
後で母に確認してみよう、だけど、
そんなことをどうして急に思い出したんだろう。
前に何度か、なつめちゃんの様子を見ていて、
頭の隅に引っかかっていたものが、
ようやく思い出せて、すっきりしました。
だけど、その男の子以外には、
仲良くしていた子は、思い出せなくて、
やっぱり、小さい頃のなつめちゃんとは、
いつ会っていたのか、思い出せませんでした……
・ ・ ・
「……おい、もうそろそろ、
帰った方がいいんじゃないのか」
榊さんから声をかけられて、わたしは我に返って、
すぐに時間を確認すると、8時になっていました。
この後わたしは榊さんに、直通エレベーターの下まで、
送ってもらいました。
エレベーターを降りた所には、わたしの警備の人が待っていて、
わたしが榊さんに挨拶してから、行こうとすると、
「……ちょっと待て、渡すものがあった」
と、呼び止められて、小さなメモを渡されたんです。
そこには、携帯の番号が書いてあって、
それは榊さんの携帯の番号でした。
なつめちゃんに関して、聞きたいことがあれば、
連絡しても構わないとのことで、榊さんは言ってなかったけど、
これも汐月さんの指示だろうと思います。
わたしは榊さんにお礼を伝えて、
乗ってきた車で病院を後にしました……
・ ・ ・
車の中では、都心の夜景を見ていたら、
いつの間にか、眠ってしまい、
警備の人に起こされて、目を覚ますと、
もうアパートの前に着いていました。
わたしは、警備の人にお礼を言って家に入り、
時間を確認したら、行きよりも早かったらしく、
まだ9時半でした。
家に入ったらすぐに母に連絡して、
父の入院していた病院を確認してみると、
やっぱり、聖アンナでしたね……
わたしは小さい時、あの病院に通っていたのは間違いないです。
でも小さい女の子と話した記憶は、やっぱりありません……
なつめちゃんの様子を見れたのは、良かったけど、
いつになったら、話が出来るんだろう。
どのくらいしたら、あのガラス部屋から出られるんだろう。
これは、また汐月さんに確認しなくちゃいけない。
それと、今日は榊さんと話が出来て、色々聞けて、
今までの疑問も、いくつか解けてよかった……
でもまだ、なつめちゃんにしてあげられることは、
いまいち見えてません。
汐月さんに、今後の予定を聞いて、
なつめちゃんと、話が出来るまでは、
何も進まないかも知れないなぁ……
2月7日 汐月さんからのアドバイス
今日は日曜なのに、朝からソワソワしてしまって、
ちっとも落ち着きません……
それと言うのも、お見舞いの翌日に汐月さんから連絡があって、
なつめちゃんのことで、会って話がしたいと言われて、
そこで、汐月さんの時間が空いている7日の午後、
つまり今日、会うことになったんです。
お昼ごろになって、アパートの前に車が止まる音がしたので、
外に出て下を見ると、そこには、
ベージュのニュービートルが、止まっていました。
車は、全然詳しくなかったけど、
この車はテレビで見て、形がかわいいなぁと思ったから、
たまたま覚えていたんです。
なんか、この車は汐月さんのイメージと違うから、
全然関係ない人かもって、ちょっと思ったんですが、
降りて来たのは、いつも通りの、
ダークスーツ姿の汐月さんでしたね。
ただ1つだけ、メガネがいつもと違って、
丸い形のレンズの、薄い色のサングラスをしてました。
この人、会うたびに違うメガネをかけているような気がします。
汐月さん、絶対メガネにこだわってるなぁ……
車を降りてすぐこっちに気づいた汐月さんに、
わたしは頭を下げてから、そちらへと向かいました。
汐月さんに、車のことを尋ねると、
この車が汐月さんの愛車だと教えてくれたんですが、
その時の普段とは違う様子から、かなり気に入っているのが、
よく判りましたね。
「夜までには、戻らないといけないから、
軽くドライブして、食事しながらお話ししましょうか」
との汐月さんからの提案で、早速ドライブに出発しました。
・ ・ ・
助手席に乗ってのドライブは、父の命日以来で、
わたしは本来の目的をすっかり忘れて、
外の流れる風景を眺めていました。
高速に入ったので、どこまで行くのかを尋ねると、
サービスエリアにある、レストランだそうで、
限られた時間でドライブする時は、
一般道だと渋滞に巻き込まれて困るから、
いつも高速を走ることにしている、とのこと。
戻る時は、どうするのかを聞くと、
道が繋がっていて回ってくる時間があれば、
降りずに戻ってくるけど、
大体は時間がないから、ちょうど半分くらいの時間で、
近くのインターを降りて、逆のインターから入り直して、
来た道を戻るのだそうです。
だから、近場のサービスエリアに何があるかは、
ほとんど覚えているのだとか。
それって何だか、無駄に頭を使ってる気がする……
車は高速に入ってすぐに、
最初に出てきたサービスエリアに入りました。
もう着いたのかと思ったら、
「今日は天気もいいから、幌開けるけどいい?」
と言って、指さしたんです。
この車、オープンカーになるの!?
なんか屋根が色違うなぁ、とは、乗る前に思ったけど、
オープンカーになるとは、思わなかった……
わたしは頷いて答えると、
汐月さんは、屋根のところを操作して、
すぐに自動で、屋根の幌がたたまれていき、
10秒ちょっとくらいで、オープンカーになりました!
わたしはびっくりして、たたまれた幌が入った、
後ろのトランクを見ていましたね……
で、改めて目的地に向けて出発しました!
オープンカーなんて、生まれて初めて乗ったけど、
とっても気持ちがよかった!
空はとても広くて、周りを見渡しても、
ほとんど遮るものもなくて、座っていながら、
景色はどんどん流れていきます。
それは走っている車なんだから、
当たり前なんだけど、屋根がないだけの違いで、
こんなに気分が良いなんて、思いませんでしたね。
自分で車買う時は、絶対こういうのにしよう……
そうやってわたしが、まるで小さい子供みたいに、
あちこち見ながら、はしゃいでいるのを見て、
汐月さんは、笑っていた気がします……
・ ・ ・
1時間くらい走ったところで、
目的地のサービスエリアに到着しました。
そこは、とても広いサービスエリアで、
休日だからか、駐車場は結構混んでいましたが、
名物が出るらしい、和食のレストランは、
このサービスエリアの中で、一番高いお店のせいか、
お昼の時間帯を、ちょっと越えていたからか、
結構空いていましたね。
このお店で、遅めのお昼をご馳走になってから、
本題の話に入りました……
「まず、棗さんの容態について、説明します。
実際にICUを見て、あのガラス張りの部屋の事ね、
判ったと思うけど、彼女は今、
あの部屋に隔離されている状態です。
詳しくは説明出来ないけど、
貴方が行った時は、棗さんは緊急搬送後に、
応急措置を施した後で、
まだ、全身麻酔で眠っている状態でした。
今頃は、目を覚ましているとは思いますが、
しばらくはあの部屋で、術後の経過観察が続きます。
何事もなければ、あと10日あれば、
あの部屋から出て、面会も許可される筈です。
それまでは、前回と同じ様に、
窓越しに、様子を見る事しか出来ません。
許可が下りたら、また貴方に連絡します」
とのことで、なつめちゃんと話をするには、
あと2週間は待たないと、いけないようです。
次はわたしから、ずっと気になっていた、
なつめちゃんの、体の中にある器械について、
汐月さんに聞きました。
すると汐月さんは、それを提案したのは自分だと言い、
そこまでしなくては、棗さんの安全は保障出来ないし、
あれでも足りないくらいだって、言ったんです。
それを聞いたわたしは、思わず感情的になってしまい、
なつめちゃんのプライバシーはどうなるのかと、
すぐに言い返しましたが、汐月さんは、
そんなわたしの態度にも全く動じないで、
「彼女は自分のプライバシーよりも、
貴方と再会する方を選んだのよ」
と言われて、わたしはもう何も言えませんでした……
黙ったわたしを慰めるように、
「そこまで、彼女の事を想っているのなら、
誕生日のプレゼントでも、用意してあげたら、
とても喜ぶと思うけど。
ちょうど今日よ、棗さんの誕生日、知らなかった?」
と、意外そうに言われました。
え、今日が、なつめちゃんの、誕生日?
そんなの、ちっとも知らなかった……
わたしはそれを聞いて、
なつめちゃんのいるあの部屋の中には、
私物は持ち込めないのかを、尋ねると、
「そんな事はないのだけど、
棗さんは、何もいらないと言っていて、
何ひとつ、置いていないの。
もうあの部屋、と言うよりも、今回あの病院に戻った段階で、
全てが終わったみたいに、諦めた様に無気力になっていてね、
私の診療した結果としては、体調の悪化は、
その無気力を改善しなければ、回復しないでしょうね。
そう言った意味で、貴方からのプレゼントは、
状況を好転させる効果が見込めると思うのよ」
とのこと。
誕生日のプレゼント、か、だったら……
わたしは、前から考えていた、
なつめちゃんに、してあげたいことの1つだった、
ご飯を食べる楽しさを教える方法として、
わたしの手料理を、なつめちゃんに、
食べさせることは出来ないかを、訊いてみました。
そしたら、
「彼女の食事は、アレルギーの関係で、
かなり制限されているのは、知っているわよね。
だから、専門の宅配サービスで対応していて、
カロリーや、使える調味料の量等も、
とても細かく、管理されているの。
その条件の上で、プロの料理人に作らせているのが、
あの食事だから、現実的にはかなり難しいと思うわ。
仮に出来たとしても、それは単に出来の悪い、
いつもの食事にしか、ならない気がするけど。
どうしてもやってみたいのであれば、材料の手配はします。
ただし、用意された材料以外は、
絶対に加えない事、これを理解しておいて。
油一滴、塩ひとつまみも、加えては駄目、分かった?」
と、とても念を押されましたが、とりあえず許可をもらい、
材料は、自宅に送ってもらえることになりました。
わたしがお礼を言うと、汐月さんは真面目な顔になって、
予想していなかったことを、告げられました。
「三崎さん、ひとつ勘違いしないで欲しいのは、
私は、貴方が棗さんの為に色々してあげて、
棗さんがそれによって、改善していく、
この状態は、決して良いとは思っていない。
私は貴方が棗さんの治療に、
欠かせない存在だと判断しているし、
それには確信も持っている。
でもそれは、途中までの話。
棗さんの、完全な治療には、逆に貴方の存在が、
回復の妨げとなっていくでしょう。
私が望んでいる、貴方の振る舞いはね、三崎さん、
棗さんの、唯一の親友でなくなる事。
棗さんにとって、特別な人でなくなる事を、
私は望んでいます」
この汐月さんの、最後の言葉の意味は、
わたしには、正直良く判りませんでした。
自惚れているわけではないけど、今のなつめちゃんから、
わたしに親友でいて欲しいと言う本心を聞いたし、
わたしもそうしてあげたい、出来ればなつめちゃんが望む限り。
でも汐月さんは、それが良くないと言う。
友達がいない方が良いって、全然意味が分かりません……
そう思っていたら、何も言わなくても、
顔に出てしまったようで、
「やっぱり、私の言った事には納得していないようね。
今はまだ、それでも構わない。
この言葉の意味を、今すぐ理解してとは言わない。
でもあまり時間は残っていないのも事実なの。
3月中までに、理解してもらえれば間に合うから、
それまで、貴方の正しいと思うやり方で、
棗さんを支えてあげて」
と、今までと変わらない、落ち着いた表情で言われました。
・ ・ ・
ここまで話したところで、
戻らなければいけない時刻になってしまい、
サービスエリアを出た後、1つ目の出口で高速を降りると、
すぐにまた入り直して、来た道を戻ってきました。
さっき言われたこともあって、
行きとは違い、はしゃぐようなことはしないで、
大人しくじっとしていたんですが、
運転している汐月さんを見てた時に、
ハンドルの脇に、白い花が差してあるのに気づいたんです。
わたしがそれを見ていると、汐月さんがそれに気づいて、
「この車には、初めから一輪挿しがついてるの。
せっかくだから、ガーベラを差してあるのよ。
もしかして、今まで気づかなかった?」
と言われて、こんなに目立つものに気づかないくらい、
わたしは、はしゃいでいたと思ったら、
ちょっと恥ずかしくなって、笑ってしまいました。
でもこのおかげで、雰囲気が和んで、
いつも通りのわたしに戻れましたね。
夕方には、アパートに着いて、
送ってもらったお礼を伝えて、汐月さんと別れました。
・ ・ ・
汐月さんの最後の言葉には、今でも納得出来ないから、
今のわたしが、正しいと信じることを、
なつめちゃんにしてあげるつもりです。
当面の目標は、次になつめちゃんと話が出来る頃までに、
なつめちゃんに、食べてもらえる手料理を作ることと、
なつめちゃんにあげる誕生日のプレゼントを、
探そうと思います。