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卒業試験で喋る毛玉を作ったら異端認定されました。~毒舌なエリートモフと、癒し系巨大アルパカとのモフふわな日常生活~  作者: 御堂


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2/2

レティシア・レンディは仕事をする。憧れの王弟様のために! ~騎士団長はパカ毛に夢中~

 ラファエルが師匠をお持ちかえりした翌日。

 わたしは工房で仕事を再開していた。


「パカちゃん、一緒にお仕事しましょうねー」


 わたしの呼びかけに、熟睡していたパカちゃんが目を開ける。

 そして香箱座りのままにじり寄ってきて、作業台にあごを乗せた。


 パカちゃんの重量は、鋼鉄50キロ分ある。

 卒業試験の時に何の変哲もない鋼鉄50キロを神器錬成の課題に出され(泣きの二回目の挑戦で)、そこで生まれたのがパカちゃんだった。


 まじめに神器錬成をしたのに、爆誕したのが師匠(しゃべる毛玉スライム)と本体の40キロ分がモフ毛のパカちゃん。

 鋼鉄の硬さを弾力に全振りしたんだから、これはもう神器でいいのでは?

 ある意味、究極の神器なんでは?と思ったのに。

 ビジュアル的に不合格だなんて。

 そのことについては、わたしは未だに納得してない。

 一言もの申したい。


 かわいいは正義っていうじゃない?


 なんにせよ、窮屈な王宮勤めはなくなったんだから、二人のモフたちのおかげなんだけれども!


 パカちゃんを思い切りモフリ倒してから、わたしは腕をまくる。


「えーと、注文書は…」

 

 束になった注文書をめくりながら、納期が近いものを並べる。


 ・王女宮からヒツジの抱き枕、3個

 ・騎士団から遠征先で使う安眠寝袋、100個

 ・子爵家のお嬢様から、おじい様へのプレゼントのホカホカ靴下、一足


「なるほど」


 素材はパカちゃんの毛を拝借するので間に合いそうだ。

 パカちゃんから慎重に毛を少し刈らせてもらう。

 たっぷり刈り取っても、パカちゃんはすぐにまた毛をはやすから問題はなし。

 まずは、抱き枕とホカホカ靴下だ。


天才錬成術(モフ)師、いきます!」

 

 ふぇ!


 パカちゃんも気合い十分だ。



 パカちゃんの毛を《錬成》でさらに細く、空気を含むように仕上げる。ふわっふわである。

 次に作業台の着色料を、毛の細胞一つ一つに《合成》で定着させる。天然色のふわっふわである。

 普通の職人が何日もかける「色止め」の工程も、私なら一瞬だ。

 そして最後に、錬成。

 抱き枕と靴下の完成。


「よし、次!大本命、騎士団長様の依頼!!」


 ふぇっ!


 さっきよりも多めにパカ毛をもらう。

 ここからが真骨頂。


 錬成でさらにふわっふわに仕上げるまでは同じ。

 さらに錬成をかけて強度を出しつつ、合成スキルで既存の布地とパカ毛を一体化!

 左右の脳内で異なる魔法式を同時に走らせる!


 名付けて【レティの錬成合成・二重奏デュアル アンサンブル


 スキル二つを同時に走らせる無謀者はわたしくらいらしい。

 まれに存在する多数スキル持つ人はまずやらないそう。

 魔力が枯渇して倒れるリスクが高いから。

 …って聞いてる。そうなんだ。へぇ…。


 そして、合成した大きなクッションを寝袋のカタチに錬成していく。


「錬成!合成!錬成!」


 ふえ!ふえ!ふえ!


 ボッフン!ボッフン!ボッフン!

 

 豪快な音をたてて、寝袋が工房に積みあがっていく。

 半分作ったあたりで、工房の床が見えなくなった。

 パカちゃんのパカ毛は毛の一本一本に魔力を含んでいるから、一度膨らむと収拾がつかなくなる。


「パカちゃん、ちょっと!うもr…」


 ふぇぇ~!


 天井にまで届く【パカ毛の寝袋】…。

 どんな環境下でも安眠が保証される代物だけど。

 さすがにやりすぎた。


「…このままだとわたしたち寝れないから、納品に行こうか」


 ふぅん…?


「何よその目は!いいでしょっ!ガリウス様に逢えるチャンスがあるなら、死んでも行く」


 ふぅぅん?


 若干ニヤニヤと視線がうるさくなったパカちゃん。

 別にいいでしょ。 

 憧れの王弟様、騎士団長のガリウス様に逢えるなら、錬成も納品も気合いが入る!

 推しがわたしの作った寝袋で寝る、って…ご褒美ですよね?


 ニヤニヤが収まらないわたしは、パカちゃんにリヤカーをくくりつけて、騎士団の詰め所に向かった。

 憧れの人に逢えるなら、わたしはどこまでも行くのだ。

 

 

 王宮が近くなるにつれて、前方に人だかりができている。

 新しい店でもできたのかと思って近づいていくと、それは新装開店のものではなかった。


「…聞いたことのある声がする…」


 ふぅん!


 パカちゃんが首を伸ばして前を見ている。

 つられて前を見るとそこには…、

 憧れのガリウス様が両腕を組んで仁王立ちしていて。

 ガリウス様の前で師匠を抱きしめて立っている、ラファエルの姿があった。


「だからこれはレンタルしたと言っている」

「レンタル?審問官殿、その毛の生えた個体はレティシア嬢の工房のケライムだろう?連れ帰り何をするつもりなんだ」

「何って、検分に決まっているでしょう。正式な手続きを経てレンタルしたので、何かを言われる筋合いはない」

「いやいや、異端審問官殿。貴殿は前からアレコレと難癖をつけて、レティシア嬢にダル絡みしていると報告があるんだがな」

「異端能力の疑いがあれば捜査や尋問は職務内容に含まれますが?」


 ガリウス様、顔がいい…。

 サファイアのような瞳、緩くカールする金髪。日に焼けた顔、逞しい体。

 何より、イケメンすぎる。笑った時の顔なんて、爽やかすぎていい匂いがしそう…。

 28歳で婚約者もいないなんて、なんの奇跡なんだろう(泣)

 ああ、神様。

 推しが今日も尊いです。

 眉間にしわ寄せて険しい顔してる。最高すぎます。


 好き!


「好ぅううう--------きいぃいいいいーーーーーーーーーっ!!!」


 パカちゃんのモフモフボディに顔を押し付けて、心のたぎりを叫ぶ。

 パカ毛は防音消臭効果もばっちりです。

 少しばかり迷惑そうな顔をしたパカちゃんだったけど、わたしは身だしなみを整えてから、二人のほうへ向かった。


「ガリウス様、ごきげんよう」


 推しとクールビューティがグルン!とこちらを見る。

 ラファエルの腕の中で、毛玉ボールとなっている師匠がぐったりと伸びている。

 …大方、寝不足なんでしょう…。おそらく全身をモチられたんでしょうねぇ。


 パカちゃんがスンとした顔をしている。

 あふれそうな心の叫びをパカ毛に吸わせたので、わたしは今、世間的に愛想のいい商売人の顔を保てているはずだ。

 ニコ、と笑って見せると、ガリウス様のご尊顔が…ぱあぁっと輝く。

 おっふ…眩しい…っ!

 でもガリウス様が見ているのは、わたしじゃなくて。

 …死んだ目をしているパカちゃんの方だった。


「レティシア嬢、ごきげんよう。パカも来てくれたのか!」

 

 うぅぅ、いいなーパカちゃん…。

 工房にはガリウス様が直々にやって来ることも多く、そのたびにガリウス様はパカちゃんを徹底的にモフッている。

 その触り方が、全身をうずもれさせるようにするものだから、パカちゃんも若干、引いている部分はあるらしい。なんていうか、ふわふわのベットに身を投げ出すような感じだ。


 隙あらば裸になって一緒に寝たい、と言っているくらいガリウス様はパカちゃんを愛している。


 ふん…。(拒絶)


 …我慢しなさいよ…。

 うらやまけしからん…。


「えっと、とりあず注文の半分の寝袋を持ってきました」

「わざわざすまないな。ありがとう」


 リヤカーからせっせと運びおろしている騎士団員のそばで、ガリウス様はパカちゃんの首を抱きしめている。パカちゃんは遠い目をしていた。


「レティ~…」 


 こちらもヘロヘロな師匠がポヨンとやって来る。後ろからラファエルが追いかけてきていた。


「師匠、昨夜はどうだった?よく寝れた?」

「寝れるわけないだろ?ずーっとモチられモフられしてたんだぜ?」 

 

 肩が凝ったようにボディの一部をモコモコと動かす師匠の後ろで、ラファエルが銀縁の眼鏡を指で押し上げている。


「検分だと言っただろう」

「あんなん検分じゃねぇよ!××と変わらねぇじゃねぇか!お前、アレは俺だったからいいようなものの、女相手にはやるなよ?」

「な!?」


 やだ…何があったの…。

 わたしの目つきと顔つきにラファエルが、チガウ!と叫ぶ。


「ランドール様…いかがわしい事はご遠慮願いたいって書類に書いてたのに」

「違う!そういったことはしてない!ただずっと触って寝ただけだ」

「その手つきが××なんだって…」

「うるさい、黙れ!」


 楽しそうにしてるならいいか。

 ガリウス様も幸せそうだし。


 寝袋の納品分の代金をもらったわたしは、パカちゃんと師匠を連れて帰る。

 

「師匠?後で何があったのか詳しく聞かせてね?」

「レティも、納品前にパカの毛の中で何叫んだのか教えろよ?」

 

 ふぇ。


 久しぶりの大仕事だった。

 今夜は良い肉でも食べたい気分だ。

 また明日も頑張ろう。

 そしてまた明日もガリウス様にあいに行こう。





つづく




 

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