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12話 浄化3

 数はぱっと見で数十体以上。

 いや百体近くいるかもしれない。


 恐らくすべて薄霧級。

 だけどあんなに出てくるなんて……俺たちだけで勝てるのか?


「鳥村君、大丈夫よ。あんなの一瞬だから。まずは私が行ってくるわ」


 そう言って粟飯原あいはらさんは少し屈み、空高く飛び上がった。

 それから左腕を前にして構えると落下の勢いを利用して、そのまま朧人の集団がいる場所に着弾。


 プールに高速で何かが突っ込んだような、ドォォンという激しい音と共に朧人だった黒い液体が周囲に飛び散る。


 残ったのは黒い液体の中に佇む粟飯原さんのみ。

 それも粟飯原さんが左腕を掲げるとあっという間にすべて吸い込まれ、穢れ一つない白い静寂な空間に戻った。


「粟飯原さんってあんなに凄かったんですか……?」

「あぁ、彼女は俺より経験豊富なベテ――」

「岩藤君?」


 いつの間にか岩藤さんの隣にいた粟飯原さんが微笑み、そっと岩藤さんの肩に左手を置く。


「……け、経験豊富なお姉さんだからな。そんなことよりもだ! 朧人がまた湧いて出た。今度は俺が行ってくる」


 そう言って岩藤さんは、刀から次々と斬撃を飛ばしながら朧人の群れに突っ込んでいった。


「あの……」

「なにかしら?」

「あ、いや。やっぱり何でもないです」


 粟飯原さんの笑顔が何故か不気味に見えてそれ以上言葉が続かなかった。


「そう? ならそろそろ大波が来るから、離れておきなさい」

「え? あっ、はい」


 粟飯原さんが忠告したタイミングで、一筋の黒い模様がまた階段の方から床を伝って流れてくる。


 だがそれで終わりではない。

 その後も漂流物を陸地に押し付ける波のように、階段から床へと黒い汚れが運ばれ、あっという間に純白の床一面を黒に染め上げた。


 い、一体何が起こるんだ?


 そう思った瞬間、床がスライムのように一瞬グニャリと柔らかくなる。

 その後、空間を埋め尽くすほどの大量の朧人が一斉に床から生み出された。


 大半は岩藤さんや粟飯原さんがいる前の方に集中しているが、俺の周囲にも十体近い朧人が湧いている。


 は? なっ……ま、前にも、後ろにも、横にも朧人が!

 ええとまずは前の……いやでも横も。あぁ、くそどうすりゃいいんだ!


 俺が戸惑ってあたふたと色んな方向に武器を向ける間にも、朧人が俺の方に近づいてくる。

 

 だ、駄目だ。

 仮に何体か朧人が倒せたとしても、さすがにこの数全部は……。


 諦めの気持ちが心を包み、棒を持つ手が徐々に下がる。

 そんな時、上から急に何かが落ちてきて周囲の朧人を吹き飛ばした。


「や、お待たせ! 後輩君危ないところだったね。オレが来たからにはもう安心だよ! ちょーっと派手に暴れるから。階段の方に避難しといて!」

「は、はい! お願いします!」


 なんでバスタオル!?

 いや、と、とにかく言われた通り逃げないと!


 まだ水も滴るバスタオル姿で、大斧を使い敵を薙ぎ払い始めた鷹羽さんから慌てて距離を取り、階段の方に急いで避難する。


「鳥村君! そっちは駄目よ! 階段から離れなさい!」

「え?」


 声がした方に振り返ると、必死にこちらに手を伸ばす粟飯原さんの姿があった。

 

 あっ、そういえば階段の方には絶対近づくなって言われたっけ。

 階段の方に反射的に顔を向ける。


 朧人で溢れかえっている空間のはずなのに、階段の前だけは空間を切り取ったみたいに綺麗だった。


 その中心には守り手と呼ばれた女性が、先ほどと変わらない様子で佇んでいる。

 俺が一歩その空間に足を踏み入れると、気づけば女性が俺の方に顔を向けていた。


 遅れて感じる首への鋭い痛み。

 そして視界が斜めに歪む。


 えっ、あれは俺の……身体?


 何故か目の前で倒れこむ頭が無い自分の身体を眺めながら、意識が闇に包まれた。

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